【INTERVIEW】
GMに訊く、ホテル最高の過ごし方

帝国ホテル 東京 総支配人
金尾幸生さんの場合

文 :大石智子 写真:花村謙太郎

ラグジュアリー・ホテルは、ひとときの贅沢な体験が商品である。では、どこで何をすればホテルを堪能できるのか? トップであるGMこそ知る、とっておきの瞬間を訊いた。

PROFILE

金尾幸生(かなお・ゆきお)

1984年、筑波大学社会工学類経営工学専攻卒業後、帝国ホテルへ入社。20代はウィーンのホテルへ出向し、国際的な視点でサービスを学ぶ。帰国後は営業マンとして大使館を担当。その後、「帝国ホテル 大阪」宿泊料飲部長、帝国ホテル執行役員 宿泊部長を経て、2014年より「帝国ホテル 東京」副総支配人に就任。2017年4月より同ホテル総支配人となる。趣味は話題のバーやブラッスリーを巡り。ホテル内でおすすめの手土産はブルーベリーパイ。

帝国ホテルで感じる、ふたつの特別な夕暮れどき

総支配人にとってロビーは “感動と思い出が交差する空間”

東京・日比谷に「帝国ホテル」が開業したのは、いまから127年前の明治23年のこと。名物やエピソードが尽きない、言わずとしれた老舗ホテルである。おすすめする選択肢が多いにも関わらず、総支配人・金尾幸生氏の“とっておき”を聞くと、あるふたつの情景をすんなり口にした。それは、夕暮れどきのロビーと最上階のラウンジ。まずは惹かれてやまないロビーについて語ってくれた。

「夕方のロビーでは、次のステージが始まる流れを感じることができます。お仕事が終わり帰ってこられたお客様、ディナーの待ち合わせのためにいらっしゃる方、チェックインされる方、多くの方が集まり活気づく時間帯です。久しぶりの再会の握手や、“じゃあ、またね”といった帰り際の挨拶も目にします。さまざまなシーンに溢れ、その時がとてもホテルらしい時間だなと思いますね」

それは他のホテルよりも圧倒的に広いロビーをもつ「帝国ホテル 東京」ならではの光景だろう。このロビーには、1日でおよそ1万人が行き来するとか。ゆったり座れるソファもあり、まるで小さな街のようだ。それも、ほっと落ち着けて優雅な気持ちにもなれる。

そうさせるのは、中央の装花、その上で煌めくシャンデリア、シンメトリーの建築、ピアノの生演奏(日時による)など、いずれも洗練されたディテールのおかげ。特に季節を表す大きな装花はロビーのシンボル。毎年11月末からは1000本もの真紅のバラが活けられ、人気の撮影スポットとなる。

目に見える演出はもちろん、金尾氏はスタッフの存在が空気を左右すると話す。

「通称・ロビーマネージャーや、スタッフたちの心配りがほっとする雰囲気に役立っていると思います。ロビーマネージャーとは経験を積んだスタッフが担う役割で、3〜4人ほどロビーに常駐しています。お客さまの目の動きをみて何か探しているようであればお声がけをし、状況に応じてお手伝いが必要であればベルマンにもドアマンにもなります。ロビーの360度に注意を払うのが仕事なので、柱の前に立っているのではなく、回遊しているんですよ」

館内にあまり看板を設けていないのも、“人がお客さまにご案内する”というホテルの思想が反映されていると言う。ロビーマネージャーは、そんなコミュニケーションのリーダーである。ここのロビーで多くの人が経験するのが、尋ねごとをしようとした瞬間にスタッフの方から声をかけられること。それもまた、「帝国ホテル 東京」の名物なのだ。

長い年月、多くの人が行き交うロビーには数々のエピソードもある。これまででもっとも印象に残った日を聞くと、2011年3月11日のことを教えてくれた。

「震災の時に、家に帰れなくなってしまった方たちがロビーに避難されました。当日はご宿泊のお客様以外に2000名程の方がホテルで一夜を過ごされました。ロビーと中二階、宴会場を開放してお休みいただいたのです。非常食用の乾パンとお水をお配りして、朝は野菜スープをお出ししました」

困っている人がいたら声をかけるという、スタッフの信条を象徴する一日だった。後日、避難した人たちからたくさんの感謝の手紙がホテルに届いた。

“誰とも連絡がとれず、ひとりでいるのは不安で怖かったのですが、みなさんの心温まる対応に助けられました”

“私と友人に真っ白なテーブルクロスが配られ、その一枚でどれほど温かったことか。感謝の気落ちでいっぱいです”

手紙の言葉は社内で共有され、スタッフたちの励みになっている。日頃から「さまざまなお客さまに、ぜひ入ってきてくださいという想いでいます」とは金尾氏。その気持ちの原点は創業時に遡る。

「ホテルができた127年前は、日本が外国との不平等条約の改正に成功したころ。クルマもウイスキーも国産のものを作るんだという燃えるような情熱があった時代で、ホテルも同じ。以来、数えきれないお客さまのサポートがあって今があります。だからこそ、誰もが入りやすいホテル、つまりはロビーに入りやすいホテルでいたいのです」

東京に慣れない郷里の両親でも、バギーを押した方でも入りやすいのもありがたい。友人と待ち合わせをするもよし、併設する「ランデブーラウンジ・バー」でコーヒーを一杯飲むもよし。ロビーはいつでも穏やかに来客を迎え入れる。そして、ほどよい人々のざわめきは、訪れた者に心地よい刺激を与えてくれるのだ。

最上階ラウンジから眺める 薄暮の空は必見!

もうひとつのとっておきの瞬間は、17階の「インペリアルラウンジ アクア」で過ごす夕暮れどき。理由は、好立地こその美しい眺めにあった。

「窓が西側を向いていまして、ちょうど夕陽が沈んでいく様子を見ることができます。オレンジ、浅紫、青、藍と、夜になっていくまでの空の色の変化がとてもきれいです。日比谷通りを走る車の光の流れも臨めて、特別な眺めですね」

冬なら17時から18時の間ころ。ラウンジにはスクリーンのように大きな窓が並び、日比谷公園に面しているため高い建物に視界を遮られることもなく空が広がっている。そしてその空は金尾氏の話すとおり、刻々と表情を変えていく。暗く落ちていく公園の緑と丸の内の夜景のコントラストも新鮮だ。6車線を流れるテールランプには、旅情すらそそられる。

この絶景を前に何をオーダーすればよいか聞くと、「冬場はアフタヌーンティー、夏場はシャンパンのフリーフローが時間的にちょうどいいですよ」とのこと。どちらも友人や恋人とゆったりした時間を過ごすのにぴったりのメニューだ。

ロビーで待ち合わせをして、17Fに上がり紅茶片手に夜がくるのを眺める。「帝国ホテル 東京」でのそんな体験は、心を潤す、本当の贅沢に違いない。

→さらに金尾幸生総支配人の横顔に迫るエピソードはこちらから

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更新: 2017年10月13日

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