【SPECIAL INTERVIEW】
野村萬斎が語る、新作狂言「鮎」の魅力

文 :大石智子 写真:花村謙太郎

今回、メトロミニッツWEBでは2017年12月22日(金)、一夜限りで「野村萬斎新作狂言『鮎』 高級ホテル宿泊付き観劇プラン」をご用意しました。野村萬斎氏が自信を持ってお贈りする狂言の面白さとは? お話をうかがいました。

新作狂言「鮎」は、作家の池澤夏樹氏が自身の短編小説「鮎」を狂言台本に書きなおし、野村萬斎氏が主演・演出を務める意欲作。ものがたりの舞台は手取川のほとり。人の将来を見通せる不思議な力をもつ才助は、ある日、鮎を釣っている最中に小吉(野村萬斎)という青年と出会う。才助は小吉にこの地で住むことを勧めるが、小吉は出世を目指し金沢へと向かっていった。そして数十年後、才助は大出世した小吉と再会することとなる。

12月、国立能楽堂の舞台で 縦横無尽に“鮎”が舞い泳ぐ

国立能楽堂にとって10年ぶりの新作狂言となる「鮎」。作品づくりは、国立能楽堂が池澤夏樹氏に台本を依頼したことから始まった。実は、池澤氏は20代のころに萬斎氏の祖父である6世野村万蔵氏の追っかけだった縁がある。池澤氏が狂言台本を手がけるのは今回が初となるが、萬斎氏には確信めいた想いがあった。
「池澤先生は狂言を愛してくださり、狂言の良さについてのお考えがあり、役者あってこそのものと思ってくださっています。そこが狂言を書いていただけるうえで重要でした。僭越ながらリクエストしたのは、あまり台本を書き込みすぎると先生の本を読んだほうが面白いということになるので、余白を残していただきたいということでした。あとは狂言師が生の声や身体を使って活力を与え、狂言らしくなっていくのです」

池澤氏は台本を書いたあとは稽古を見学しているそうで、萬斎氏について「たくさんのガジェットを声と身体にもち、それを器用に使いわける。めくるめく表現力に感動しています」とコメントを残している。ふたりで意見を交換しながら、台本は少しずつ完成していった。時には鮎をいっしょに食べながら話をしたこともあるとか。
「主人公・小吉の出世が描かれていることもあり、“魚も出世するなあ”という話や、才助の人格を見抜く能力について“ところで鮎は魚偏に占うですね”と、そんな雑談が作品に反映されるかもしれません。また実物を見ることも非常に重要で、串刺しの鮎が炭火の前に立てられ、段々と焼かれていく様子も参考になりました」
ものがたりの鍵となる鮎は、なんと6人の役者によって演じられる。
「普通は動物は出しづらいけれど、鮎に人格を与えて登場させられるのは狂言の特権。鮎が出てくる楽しさがありつつ、根幹である先生の世界観、文明への批評的な部分が織り交じり、かつてない狂言になっていると思います。本当は鮎が焼ける匂いまで演出したかったですね(笑)」

ちなみに萬斎氏はもとより鮎が好物で、最近では焼いた鮎にオリーブオイルをかけてシャンパンを合わせる“鮎シャン”にはまっているそう。劇中で鮎を食べるシーンにも注目だ。
初めて観る狂言、久しぶりの狂言としても「鮎」は最適だろう。誰もが、出世を目指し都会へ出る小吉の姿には感じるものがあるはず。再会した小吉と才助がどのような話をするのかは、実際に能楽堂へ足を運んだ者のみが知る結末である。
「仕事に疲れている人、楽しんでいる人、観る方によって捉え方はさまざまでしょう。自然とともに生きる無理のない生活、都会でどこかに無理をして生きる生活、いずれにしろ、狂言は人間が生きていくことを肯定するもの。我々はみなさんの鏡のようなつもりで舞台に立ちます」

常に狂言の新たな可能性に挑戦する萬斎氏が、最後に、心にとどめている父親からの言葉を教えてくれた。
「狂言を人間賛歌の劇として面白おかしく見せることも重要ですが、父からは“まず美しい狂言であれ”と言われました。そこは肝に命じていますね。人がわざわざ足を運んで見るものは、美しい芸術でなければいけません。面白いものをやるけれど、そこに美しさを出すことで作品に嫌みや臭みがなくなる。それが、江戸前なんだと思います」

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更新: 2017年10月13日

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