日本の中華料理 # 11

東京の中華料理店

雲を起こし、雨を操る水の神・龍。風を司る、平和の象徴・鳳凰。気高く縁起の良いこの神獣たちは、日本では、お皿に、店内の装飾に目にする〞中華料理店の象徴〞…というイメージもあるのではないでしょうか。今、東京の中華料理店は、昔ながらの名店、本場さながらの店、洗練されたカウンター中華など、多様化しているのが面白い。ここでは2人の敏腕ライターが龍、鳳凰に扮し、それぞれのテーマの下で、今、最も足を運ぶべき東京の中華料理店をナビゲートします。

NAVIGATOR

『風の中華』~東京に新しい風を吹かせる、精鋭揃いの個性派~
NAVIGATOR 小松めぐみ/MEGUMI KOMATSU
東京都出身。フードライター、エディター。10代で料理に目覚め、様々なジャンルを食べ歩く。現在は主に雑誌で飲食関連の記事を執筆、編集。「週刊新潮」と「CREAWEB」で連載中。和洋の甘味からお酒、お茶まで、あらゆる嗜好品をこよなく愛好。

『水の中華』~水のように心を落ち着かせる、揺るぎない実力派~
NAVIGATOR 永浜敬子/KEIKO NAGAHAMA
京都府出身。料理、食文化の執筆多数。 全国の郷土料理&ソウルフードを紹介した47都道府県のお国自慢グルメ「食わせろ!県民メシ」(講談社)、「東京出張」(京阪神エルマガジン社)

風・〇二 [六本木] 虎峰

「こほう」Tel 03・3478・7441(完全予約制)東京都港区六本木3・8・7PALビル1F 17:00~22:00(最終入店) 日定休コース12,960円(サ別)のみ、ウォーターチャージ1,080円。

フカヒレの煮込みに合わせるワインはムルソー。お酒のペアリングコースは6,480円。

美食家が注目する 約25品の贅沢

六本木の路地に4月1日にオープンした話題の中華料理店は、12,960円のおまかせコース1種類のみ。会席料理のような少量多皿のコースには、約20品もの小皿料理とおつまみ5種、フカヒレのステーキと煮込み、リゾット、デザートが登場します。
カウンターの中で炎を操る山本雅料理長は、大阪で四川料理や広東料理の経験を積んだ後、恵比寿の名店「MASA'SKITCHEN」で活躍した気鋭の若手。「料理人を志望した原点は、料理を作って友だちや親が喜んでくれた時の嬉しさ。とにかくお客さまに喜んでいただきたい」と語り、毎日膨大な仕込みを行う傍ら、新しいメニューを開発する熱血シェフです。

食材の持ち味を生かしたコース料理

コースは和食のように食材の持ち味を生かしたものから始まり、徐々に中華の要素が濃くなっていくのが特徴。最初は「柚子風味の冷たいワンタン」「1秒だけ素揚げした白海老」など、塩味の料理が登場します。1皿の量は少量ですが、たとえば「ピータン」ならば、ピータンの黄身で作ったソースの上に刻んだ卵白を載せるなど、手間をかけたものばかり。おなじみの「よだれ鶏」も、山本シェフは鶏肉の繊維が固くなる60℃より1℃だけ低い59℃で加熱することで鶏の旨みを引き出し、しっとりとした食感に仕上げています。
コースの中盤では、フレンチのように口直しのアイスクリームが登場。そして食材の良さを生かした様々な料理を堪能すると、定番料理が始まります。土鍋でグツグツと温められながら登場する「フカヒレの煮込み」の白湯スープは、うっとりするほどまろやかな味わい。余ったスープにはご飯を入れて、お鍋の雑炊感覚でリゾットに。
お酒はソムリエの選ぶワインを中心に、日本酒や紹興酒など、料理に合わせて10種類以上が登場するペアリング(6,480円)が好評。和洋のお酒と中華のマリアージュは、東京ならではの美食の醍醐味です。15席のカウンターは、既に食通たちで賑わっています。

写真左 お水のペアリングはチャージに含まれており、軟水、硬水、ガス入りなど4種を用意。シリカという成分を含む「deep」はコラーゲンの吸収を助けるのだとか。/写真右 「よだれ鶏」59℃で1時間加熱した鶏むね肉は、しっとり柔らか。2種の辣油とごま油、山椒油を使ったスパイシーな味付けで。 

写真左 「鱚」あっさりした鱚の身に山椒の風味をま とわせ、カラッと焼いて。腐乳と白味噌 を合わせたクリームチーズと共に./写真右 「酢豚と大根餅」カリッと焼いた豚バラ肉に黒酢のあんを絡めた「酢豚」は定番の一品。おろした大根の食感を生かした「大根餅」と。

水・〇二 [赤羽] Nomka

写真右 ボトルで 4,800円。ワインは赤、白、ロゼ合わせて約20種類。グラス 700円~。

香港生まれ日暮里育ち 赤羽で花開く日式香港料理

「聘珍樓 吉祥寺新館」、香港に本店を置く広東料理の「鴻星海鮮酒家」で長年修業を重ねた五十嵐祐二さんは、独立した後、日暮里で「艇家大牌當」という、香港料理の店を開きました。水槽で泳ぐ魚を使った清蒸が評判で、なかなか予約が取れない店としても知られていました。ところが、あまりの人気で、1人で厨房を預かっていた五十嵐さんは体調を崩し、人気の絶頂の頃に閉店を余儀なくされてしまったのでした。

写真左 ムリニエ ヴィオニエ。まろやかでバランスの良い自然派ワ イン。柑橘系果実のようなフレッシュな香りはセンマイと香 菜の和えものに効いたレモンと相性が良い。/写真右 「牛もつのピリ辛煮」(980円)腸や肺など、様々な部位を煮込んだコ クのあるスープに香菜をトッピング。

2015 年、満を持して赤羽で「Nomka」として再スタート

以前は蒸し魚がメインで肉メニューがないのが大きな特徴でしたが「もともと肉料理は得意」と言う五十嵐さんは、カウンターだけの店なので、キッチンに篭もりきりにならず、お客様との会話を大切にし、仕上げはカウンター前できるメニューを工夫しました。たとえば「ヤングコーンのあひる塩卵ソース焼き」。あひるの塩卵のソースは、香港では海老に絡めて炒めるのが一般的ですが、「オーブンでできる料理を考えた時、日本の焼きトウモロコシが浮かんできたんです」と五十嵐さん。ソースに少量のバターを加えることで、コクのある塩卵のソースがさらに濃厚になり、チーズを焼いたような香ばしい風味が食欲をそそります。また、「センマイと香菜の和えものレモン風味」のごま油とレモンを合わせたタレは、潮州の船上屋台では干し豆腐の和え物の定番ですが、ここではセンマイとたっぷりの香菜にオリーブオイルをプラス。ごま油とオリーブオイルの組み合わせが新鮮なおいしさを生み出しています。「日本人の私が香港で学んだ技法と味、それを礎に新しい可能性を追求していきたい。おいしいつまみをワインといっしょに気軽に楽しんでいただければ」と語る五十嵐さん。ワインをセレクトするのは奥様の麻里さん。二人三脚の新しいNomkaの歩みがスタートしました。

写真左 「ホタテと豆腐のわけぎソース」(980円)絹ごし豆腐の上にホタテの刺身がたっぷ り載ったロングセラー人気の一品。/写真右 「ヤングコーン」(980円)塩漬けのあひるの卵を蒸してソースに し、それをかけて焼いたヤングコーン。

Text: Text 小松めぐみ(風の中華)、永浜敬子(水の中華)
Photo:松園多聞、牧田健太郎
※こちらの記事は2016年6月20日発行『メトロミニッツ』No.164に掲載された情報です。

更新: 2017年6月20日

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