日本の中華料理 # 10

東京の中華料理店

雲を起こし、雨を操る水の神・龍。風を司る、平和の象徴・鳳凰。気高く縁起の良いこの神獣たちは、日本では、お皿に、店内の装飾に目にする〞中華料理店の象徴〞…というイメージもあるのではないでしょうか。今、東京の中華料理店は、昔ながらの名店、本場さながらの店、洗練されたカウンター中華など、多様化しているのが面白い。ここでは2人の敏腕ライターが龍、鳳凰に扮し、それぞれのテーマの下で、今、最も足を運ぶべき東京の中華料理店をナビゲートします。

NAVIGATOR

『風の中華』~東京に新しい風を吹かせる、精鋭揃いの個性派~
NAVIGATOR 小松めぐみ/MEGUMI KOMATSU
東京都出身。フードライター、エディター。10代で料理に目覚め、様々なジャンルを食べ歩く。現在は主に雑誌で飲食関連の記事を執筆、編集。「週刊新潮」と「CREAWEB」で連載中。和洋の甘味からお酒、お茶まで、あらゆる嗜好品をこよなく愛好。

『水の中華』~水のように心を落ち着かせる、揺るぎない実力派~
NAVIGATOR 永浜敬子/KEIKO NAGAHAMA
京都府出身。料理、食文化の執筆多数。 全国の郷土料理&ソウルフードを紹介した47都道府県のお国自慢グルメ「食わせろ!県民メシ」(講談社)、「東京出張」(京阪神エルマガジン社)

風・〇一. [四谷三丁目] の弥七

三段重の前菜。手前は「よだれ鶏」、左は「煮穴子の握り」、奥は9種の盛り合わせ。揚げ皮蛋の甘酢がけ、中国風出汁巻き玉子、さつまいもの甘露煮、黄ニラともやしの湯葉巻き、車海老の生揚げ、叉焼と腸詰めなど。12,000円のコースの一部。

和食の流れで楽しむ 穏やかな中華料理

荒木町の杉大門通りと外苑東通りの角に面した入口の佇まいも、テーブルに半月盆が置かれた店内の様子も、まるで和食店のよう。シェフの山本眞也さんが修業したのは本場上海のレストランや「白金亭」「桃の木」といった東京の本格中華料理店ですが、現在、ご自身の店で目指しているのは“日本人が美味しいと思う中国料理”です。先付から始まるコースは約8品。まず驚くのは、「美桜鶏のよだれ鶏」や「ごま豆腐」をはじめ、さまざまな前菜が詰められた三段重の豪華さでしょう。中身はどれもお酒と合うものばかりで、荒木町の呑んべえには嬉しい限り。そして再び驚くのは、中華料理には珍しくお刺身が登場すること。
「魚には季節感があるし、生魚を取り入れることでコースの流れに緩急をつけられますから」と山本さん。しかし山葵ではなく“食べる辣油”を添えて中華料理らしさを残します。コースはさらにお椀または鍋、蒸し物、揚げ物、肉料理と続き、口直しを挟んで、メインと釜炊きご飯で完結。メインの赤こんにゃく入り麻婆豆腐や蒸し魚は、炊きたてのご飯と抜群の相性です。

写真左 千鳥酢とライムを使った京都風酢豚は今年の新作メニュー。/写真右 店主の山本眞也シェフ。
「のやしち」Tel 03・3226・7055 東京都新宿区荒木町8番地木村ビル1F 11:30~13:30LO、17:30~21:00LO 日定休 コース9,720円~

水・〇一.  [中野] 蔡菜食堂

完熟の甘くて濃厚なトマトがたっぷり入った「トマトの卵炒め」1,000円

中国と日本の友好料理 幸せの上海家常菜

中野駅南口のレンガ坂の裏通り。「家常菜」(ジャーチャンツァイ)と呼ばれる上海の家庭料理が味わえる小さなお店です。ご主人の蔡才生さんは上海生まれですが、来日した時は料理人ではありませんでした。研究所の職員だった蔡さんは日本で仕事を探している時に、偶然採用されたのが焼き鳥の人気店「バードランド」。17年間、バードランドで料理を学んだ蔡さんは独立の際に焼き鳥店ではなく、自分が子どもの頃から慣れ親しんだ上海料理の店を選びました。「鶏のレバーパテ」や「ナンプラーとアンチョビの焼きそば」といったバードランド発のメニューや日本で培った技や素材を用いた料理を多く作る一方で、トマトと卵を炒めて塩で味付けした「トマトの卵炒め」など、上海の素朴な家庭料理も充実。上海で生まれ育って、調理人としてのスタートを焼き鳥から歩み始めた蔡さんだからこそ、上海と日本の両軸が揃った日中友好の魅力あふれるお店になったのです。「日本に来てよかったよ。日本のお客さんいい人ばかり。日本で料理店を開けて幸せです」と蔡さんは満ち足りた笑顔で語ってくれました。

写真左 黒酢とたまり醤油をベースにほんのり甘くコクのあるソースで一番人気の「スペアリブの黒酢ソース炒め」1,200円。/写真右 奥様の王梅玉さんと蔡才生さん。こぢんまりとしたスペースながら、テーブルがゆったりとしているのでくつろげる。「さいさいしょくどう」Tel 03・5385・6558 東京都中野区中野3・35・2 17:00~23:00 日定休。

Text:小松めぐみ(風の中華)、永浜敬子(水の中華)
Photo:よねくらりょう、佐古裕久
Illustration :八重樫王明
※こちらの記事は2016年6月20日発行『メトロミニッツ』No.164に掲載された情報です。

更新: 2017年6月20日

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