日本の中華料理 # 8

私が30年近く通い詰めて味わったものコラム

今 柊二さん と 中華定食

ジャンルにこだわらず様々な定食を食べてきた彼が、中華定食に目覚めたのはおよそ30年も前の学生時代。そこから横浜中華街や神保町に通い続け、お気に入りの定食を追い求めてきました。そして2013年には著書『土曜の昼は中華街』も刊行。ここではそんな今さんの考える、日本特有の進化を遂げた中華定食の楽しみ方と、お気に入りのお店についてお話を聞きました。もちろん、今さんの通うお店で定食をいただきながら。

中華定食を食べ続け 約 30 年の大ベテラン

「今 柊二」1967年、愛媛県今治市生まれ。和洋中を問わず日本の定食文化に魅了され、全国のお店をまわり調査&研究を行う定食評論家。『ニッポン定食紀行』(竹書房)、など著書も多数あり。6月23日発売の『餃子バンザイ!』(本の雑誌社)を皮切りに、今年は計3冊のグルメ本を発売予定。

白いごはんと汁物、おかずを順繰りと〝三角食べ〞する文化は中国どころか世界でも類を見ないと言われています。そんな日本ならではの定食の優れた栄養バランスに着目し、赤貧の学生時代を乗り切ったという今さん。中華好きの友人の誘いもあり、大学3年生から毎週土曜には決まって横浜中華街へと繰り出したそうです。「ちょうど1980年代後半、当時は『美味しんぼ』が流行した影響で段々と週末に中華街へ訪れる人が増えていました。新たなお客さんを取り込もうとしてか、平日限定が多かった格安ランチを土曜にも出すお店が増えていたんですよ」と今さん。運命的に中華料理に引き寄せられたようにも感じます。それから約30年、中華街や神保町を中心に、多くのお店を訪れることになるのです。

半チャンラーメンのセットは 中華定食と呼べるのか?

米と汁とおかず、これが「三位一体となっているのが定食」というのが今さんの考え方。ラーメンは汁物であり、チャーハンの中に細かくおかずが入っていると拡大解釈すれば、これも定食の一つの形だと語ります。「半チャンラーメンの起源は神保町の『さぶちゃん』と言われていますが、ここが登場する以前からラーメンとチャーハンの組み合わせを注文する方は日本中にいたでしょう。やはり日本人にはお米が欠かせません。その昔、日本の海軍がイギリス様式を取り入れ、主食をパンにしたところ〝米を出せ〞と暴動が起きたこともあるほどですから」。主食と主食、2つの炭水化物が織りなす相乗効果を楽しむ、それもまた日本独自の中華なのです。

細部にこそ個性が光る 良い定食屋の条件とは?

当日話を聞いた「天童」は今さんのセレクト。ランチの定食は800円と恵比寿駅周辺では破格で、安い美味い多いと三拍子揃う。写真は新鮮な素材を使用したレバニラとライス、焼き餃子を注文したもの。

今さんが定食を食べる際の作法としているのが、1口目に汁物をいただくこと。この味で大抵はお店の良し悪しが判断できるとか。「他には肉団子もバロメーターになります。手を抜きやすい料理だからこそお店の誠実さが一番に出るのです。そして贅沢を言えば、付け合せのザーサイが自家製だと嬉しい。また杏仁豆腐は昔ながらのタイプの方が、食後の口をさっぱりとしてくれるから好きですね」。本日訪れた『天童』のように、定食の内容だけでなく店内の清潔さや店員の接客、さらに価格設定も良い中華定食屋の重要な要素と情熱的に語る今さん。そんな彼が声を大にして言うのが「中華定食は奥が深く、有名店の人気メニューを食べるだけではもったいない」ということ。「名店の傍には必ず別の名店があるものです。話題の人気店を目指している道中にこそ、良い店がないか目を光らせた方が良いでしょう。また、横浜中華街でラーメンと餃子だけを食べて帰る方や、店頭での食べ歩きだけでお腹いっぱいにする方がいますが、あそこは例えば肉団子が美味しい店が多く、牛バラや豚バラの料理が都内と比べると安いし、他にも良いものが盛りだくさんです。ぜひ色々な定食を楽しんでいただきたいと思います」。

「天童」Tel 03・3464・0410 東京都渋谷区恵比寿西1・3・9 田中ビル1F 11:30~15:00/17:30~22:30 日曜定休。

通いたい中華定食屋の 見分け方

● 暖簾が綺麗であること。これが店内の清潔さの証です。
● 店頭の情報は重要。外から店内が見渡せればさらに信用度がアップします。
● 地元風の人やサラリーマンが半数以上のお店は間違いありません。

今柊二さんが通う、中華定食店

[神保町] 謝謝 

日常使いに良い、これぞ日本の中華定食

テレサ・テンの名曲が流れる店内にて、チャイナドレス姿の美人店主がお出迎え。5年ほど前、中華料理の激戦区とは知らずに神保町にオープンしたお店です。苦労を重ねながら有名店と競い合い、今では密かな癒やしランチスポットとして評判に。料理は国産醤油を多用して合わせ調味料を作るなど、中国全土ものを日本向けにアレンジ。特に白飯にはこだわり、厳選したコシヒカリをふっくら炊き上げています。こちらランチの定食では食べ放題というのも魅力。夜のメニューは平均500円前後と格安で、食べ飲み放題も人気です。

通いたいポイント

すごく普通なところが最高!
安定感あり。白いごはんも美味しいです。

[横浜中華街] 大三元酒屋

中華街の老舗は女将もおひつも温かい!

1961年、元々船のコックだった創業者が、横浜マリンタワー誕生と同じ年にオープン。隣には海の女神を祀る横濱媽祖廟がある、実に横浜らしいお店です。中華街のなかでもランチの定食をいち早く取り入れたと言われ、親子3代に渡って訪れているファンもいるそう。定食のご飯はおひつに入っており、さらにおかわりも自由。ランチタイムが16時までというのも良心的です。店頭にはお持ち帰り用の中華饅頭、小包子、餃子、焼売などがずらり。すべて手間ひまかけた自家製でお土産としても喜ばれています。


通いたいポイント


女将さんが優しくて温かい、良いお店です。大学時代から通っています。

「だいさんげんしゅか」Tel 045・641・4402 神奈川県横浜市中区山下町136
11:00~22:00 (21:30LO)不定休 ※週替りの定食は月~土のみ(祝日は除く)/写真右 4種類の週替りの定食は、おひつのライスが食べ放題なうえ、スープとお新香がついて648円。1080円の定食も2種類あり。プラス216円でシュウマイ2個と杏仁豆腐を追加できるところもオススメ。

[蒲田] 金春新館

ランチに羽根つき餃子を食べるならここ

羽つき餃子の考案者である『你好』八木功さんの甥っ子、八木誠さんのお店がこちら。餃子四天王と呼ばれる『歓迎』や『春香園』も含め、蒲田の餃子文化は八木一族が盛り上げてきました。『金春新館』の餃子の魅力はパリッと香ばしい皮だけではありません。火入れ後に一晩寝かせて肉汁と中華スープを染み込ませた挽き肉、食感豊かな白菜やキャベツなど、具材もこだわりたっぷり。ニンニクを使用していないので、食後の臭いも気になりません。テーブル同士の間隔が広く、ゆったりランチを楽しめるのもサービス精神の現れ。

通いたいポイント

餃子四天王すべてに通いましたが、私はここの餃子が一番好きでした。

「こんぱるしんかん」Tel 03・3733・8798 東京都大田区西蒲田 7・63・2 11:30~14:00、17:00~ 23:00(22:30LO)無休。
写真右 700円のサービス定食ならば餃子3個付き。ご飯の大盛り無料で油淋鶏など山盛りのおかずに小皿料理も付く。杏仁豆腐とコーヒーまでサービスと、まさに至れり尽くせり。

Text:佐藤潮(effect)
Photo:山本尚明、岡田孝雄
※こちらの記事は2016年6月20日発行『メトロミニッツ』No.164に掲載された情報です。

更新: 2017年6月20日

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