TOKYO BEERNISTA 2017 # 2

飲みながら考えた、おいしいもの

Text:浅井直子 Photo:大谷次郎

「食」に精通し、ビールとともに日々を楽しんでいるビアニスタの皆さんは、今日もお気に入りの1杯を飲みながら、何を“食べたい”と思うのでしょう。6名のビアニスタに、まずはイチオシのビールとおいしいもの、おいしい話をアレコレ伺いました。

橋本一彦×La Sirène ファームハウスレッド

ビールの魅力の1つ、「自由」というキーワードを軸に、その可能性や表現をフードとのマリアージュやアレンジビールなど、様々な切り口から探求する橋本一彦さん。そんな橋本さんが今回選んだ組み合わせは、なんと、一般的にタブーとされるビール×生魚。通常、生魚の生臭さとビールの苦味が衝突する、大胆なマリアージュです。その真意を伺いました。

{BEERNISTA PROFILE} 
KAZUHIKO HASHIMOTO
「sansa」オーナー。「えぞ麦酒」直営のビアバー「麦酒停」を経て、都内のイタリア料理店やフランス料理店にて、料理とサービスを経験。2012年、料理とクラフトビールのマリアージュをコースで提供する「sansa」を開店。

{BEER PROFILE}
La Sirène ファームハウスレッド
生産地:オーストラリア
スタイル:セゾン
アルコール度数:6.5%
酵母にこだわりのあるLa Sirèneのセゾン。華やかな花の香りは、副原料のバラに由来。フルーティな酸味とキレが料理を誘います。

Menu
ビールを飲むことで料理の味わいがまとまる、計算された組み合わせ。鯖とネビオーロ、ブラッドオレンジ(ハーフサイズ)1,080円。鯖をイタリアの黒ブドウ、ネビオーロのビネガーで軽く締めて、国産のブラッドオレンジと和え、最後に晩白柚を散らした一品。穏やかな酸味の料理に、バラの香りや複雑なニュアンスの酸を持つ、ファームハウスレッド2,592円が、ピタリとはまります。

大胆な組み合わせに宿る、
冷静なビールと料理の分析

都内でいち早く、ビールとコース料理の組み合わせを提案した橋本さん。その相性を、アルコール度数、料理のオイルのバランス、火入れの有無など多角的な観点で捉えています。今回選んだビールはファームハウスレッド。バラの香りと、フルーティな酸が特徴です。「セゾンスタイルがベースで、ビールの基本である酵母に注力している姿勢に共感し、醸造所も訪ねました」。
さて、そんな思い入れのあるビールに合わせたのは、生の鯖。「ビネガーで軽く締めた後に、ビールと好相性な柑橘として、ブラッドオレンジや軽やかな晩白柚をプラスしてバランスを取っています」。
一般的に、生魚にビールは、生臭さが強調される組み合わせとされますが、こちらは、鯖のマリネの穏やかな酸味に、ビールの複雑な酸が重なることで、1皿として完結する設計なのです。「他の食中酒に比べて、ビールはアルコール度数が低いため、料理に負けてしまいがち。そんな時は、今回のようにフルーツを添えるとか、オイルを控えてナッツで油分を感じさせるとか」。でも、一般的に唐揚げとビールなど、油っこい料理との相性は抜群なイメージがありますが…。「単純に食を楽しむことと、酒と料理のマリアージュを楽しむことは、方向性が違うような気がします。そこに嗜好性を見出すかどうかですよね」。マリアージュの本質から考える橋本さんの合わせ技、百聞は一見に如かず、です。

「sansa」 赤坂 ビアバー

ビールも料理も、より深く楽しむために
「プランク」(ドイツ)や「スマッティノーズ」(アメリカ)など、国内外の様々な醸造所のクラフトビールを最適なグラスで飲めるビアバー。季節によって、常時6~9種類をタップで提供。瓶では100~150種類を用意しています。本格的な7皿のコース4,860円に、4種のビールをマリアージュさせるデギュスタシオンのセット3,456円がある、東京でも数少ないお店です。

あくまでもビールを主役として引き立てるため、“廃墟”がテーマの無機質な空間。他にはないスタイリッシュな雰囲気に期待が高まります。
Tel 03・3583・4200 東京都港区赤坂2・20・19 赤坂菅井ビル1F
ランチ 月~金11:30~14:00、ディナー 月~土18:00~翌1:00、日・祝 18:00~24:00
不定休

菅原亮平さん×初陣柚子ブロンド

ファントムブルワリーとは特定の醸造所を持たずに、様々な醸造所でビールを製造するブルワーのこと。菅原さんもその1人で、ベルギーの醸造所に委託してビールを造っています。そして昨年、初のオリジナルビール「初陣」「初陣柚子ブロンド」を発表。今回合わせた和牛の料理は、このビールが生まれた背景と深い繋がりがありました。

{BEERNISTA PROFILE}
RYOHEI SUGAWARA
リオ・ブルーイング・コー創業者。その親会社で、ビールの輸入や飲食店経営をするEVER BREW株式会社の代表も務める。2004年六本木にベルギービール専門店「ベル・オーブ」1号店をオープン。現在は「デリリウムカフェ」など都内12店舗を経営。

{BEER PROFILE}
RIO BREWING&CO.
初陣柚子ブロンド
生産地:ベルギー
スタイル:ブロンドエール
アルコール度数:6.5%
柚子のアロマが漂うブロンドエール。高知県産の柚子の皮をホップに漬けて発酵させている。苦味は控えめで、和の食材との相性が非常に良い。

Menu
初陣柚子ブロンド750円のために生まれたメニュー、黒毛和牛の熟成ブランド肉として名高い、「門崎熟成肉」を使った、岩手県産黒毛和牛、門崎熟成肉の石窯グリル焼き3,500円。1カ月かけてエイジングした熟成肉をしっとり焼き上げ、鶏の出汁と仔牛の出汁のソースを添える。牛肉の脂をホップの苦味で切るのではなく、ほのかな柚子の酸味で寄り添う、洗練されたマリアージュ。

ベルギービールを
「ファントムブルワリー」として造る

「和食に合うビールを造りたくて。ベルギービールは、酸味や苦味など特徴がはっきりしていて、ビールが主役です。そこが魅力でもありますが、繊細な味わいの和の食材に合わせるには、主張し過ぎない新しいタイプのビールが必要」と、初陣柚子ブロンドが誕生したきっかけを語る菅原さん。口に含むとほんのり漂う上品な柚子の香りは、発酵の際に、ホップと同時に高知県産柚子の皮も漬ける特別な醸造法によるものです。
その繊細なビールに合わせたのは、黒毛和牛の「門崎熟成肉」のグリル。石窯でしっとり焼き上げた和牛の赤身は、ナッティな熟成香と口いっぱいに広がる旨みが特徴です。そこへ、初陣柚子ブロンドをゴクリと飲めば、軽やかな柚子の風味が、和牛の脂にすっと寄り添い、和の食材に欠かせない、まるで「薬味」のような存在感を放ちます。国内外でビールを飲み、様々な料理を食べてきた菅原さんが、「やっぱりビールに合うのは最終的に肉」と結論を出した、究極のマリアージュです。
では、シメイとヒューガルデンでビールに目覚めた学生時代以来、この道ひと筋の菅原さんにとって、その魅力とは一体何でしょう?「ビールは、世界中でコラボレーションできる自由な酒。中でもベルギーは、醸造所ごとに個性的な酵母があり魅力的なんです。そんな酵母をいろいろ使えるのは、ファントムブルワリーならではの醍醐味ですね」。

クラフトビールの新たな発信地が誕生

4 月28日(金)、リオ・ブルーイングのレストランが東京ミッドタウンにオープンします。キッチンには、塊肉の水分をキープし、柔らかく焼ける藤村製作所の石窯を導入。熟成肉を中心としたビストロ料理がいただけます。ビールは今回紹介した「初陣」を始め、リオ・ブルーイングを中心に、ベルギーや日本など約30種類以上のビールを樽生で用意。店内100席、テラス70席とクラフトビールの一大拠点になる予感!?

六本木ビストロ
RIO BREWING&CO.
BISTRO AND GARDEN

東京都港区赤坂9・7・1 東京ミッドタウン1F 11:00~24:00 無休

現在醸造中の新作、ベルギーチョコレートを使ったチョコレートスタウトがいち早く登場するなど、 今後この新店を拠点に新作ビールを発信予定。

※こちらの記事は、
2017年3月20日発行『メトロミニッツ』No.173に掲載された情報です。

更新: 2017年3月20日

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