食べ手を思ったアイデア光る

|日本の家庭料理[6]|
行きつけにしたい!家庭料理の名店
「創作家庭料理の店」 ことこと[中目黒]

家庭料理とひとくちに言っても、その形は様々。最初にご紹介する「創作家庭料理の店」の店主のみなさんは、料理を食べてくれる人の「美味しい!」はもちろん、その先のことにも向き合って料理や、お店作りをしているようなのです。まずは「ことこと」の店主・佐藤さんにその想いを聞きました。

現代人が求めているのは毎日食べたい〝普通さ?なのかも

佐藤ひろみさん

製菓学校で菓子作りを学んだのち独立、 カフェを運営。その後、2002年に中目黒 「ことこと」をオープンし、今年で12年目。 著書に「ことこと」の定番メニューやまかな いを中心に56のレシピをまとめた『ことこと のごはん ~まいにち食べたいおかずとお つまみ~』(毎日コミュニケーションズ)。

まるで自宅のダイニングに招かれたみたい!なキッチンカウンターがインパクト大の「ことこと」。おかずのレシピ本も出版している店主の佐藤ひろみさんがテキパキと無駄のない動きで次々と料理を仕上げていきます。以前は製菓学校を卒業後、カフェを営んでいたそうなのですが、ケーキや〝カフェめし?を提供していた人が、なぜ家庭料理の道へ?「たまたま、まかない用の和食メニューをお客様にお出ししたらとても喜んでもらえたんです。ケーキって美味しいけれど、どちらかというと特別な時間に食べるもの。もっと人に寄り添う食べ物をと思ったとき、毎日食べたいのは普通の家庭料理だと気付いたんです」。現在メニューに並ぶのは、ごく家庭的なおかずや味噌汁、ご飯に漬け物。でも、確かにどれも食べたくて悩んでしまう、まさに〝お家ご飯?なラインナップです。

さて、近年は自宅でも外でも食事の西欧化が進み、日本人の体質が変化してきていることは広く知られていますが、発酵食品や野菜をたくさん使う日本の家庭料理は、「毎日食べれば、病気に強い身体を作ってくれるから、医者にかからず済みますよね。健康的なのはもちろん、すごく経済的」と佐藤さん。なんでも、今の世の中、買ってきたお惣菜で済ませる人が多いことを危惧しているそう。「素材を触って切って、焼いて…、料理は五感を育てるのに本当に効果的。子どもたちが、豊かな感覚を受け継いでいくためにも、家庭料理を作り、食べてほしいと思っているんです。例えば、出汁は多めに取って冷凍したり、忙しくてもできる環境は昔と違って整っていますしね」。自身が店を持ちながら、もっとみんなが家でご飯を食べることを願う佐藤さん。その姿は、「ちゃんとご飯食べてるの?家で作らないなら、ここで食べていきなさい」と諭すお母さんのごとし。「なんだかほっとするのが、家庭料理の醍醐味じゃないかな」。安心、安全という言葉が使い捨てのように多用される現代ですが、目の前できちんと作られた、しみじみ美味しい家庭料理にこそ、真の安心や安全を感じ、人は回帰していくのではないでしょうか。ふわり漂う味噌汁とご飯の香りに、不思議と元気をもらえる現代人のパワースポット、それが家庭料理店なのかもしれません。

ことこと[中目黒]

2014年12年目を迎える店は、細い路地裏のマンションの1階。知らなければ通り過ぎてしまう控えめな佇まいにも関わらず、毎晩たくさんの人で賑わいます。店名は、まな板や煮込み中の鍋の音から命名。実際に、音だけでなく香りや佐藤さんの手の動きまで、ライヴ感たっぷりに調理過程が見えるキッチンカウンターが特徴で、「お客さんが『あ、次うちの作ってる』なんて話すのが聞こえます」と佐藤さん。自分のオーダーが丁寧に作られているありがたみや安心感、そしてなにより美味しさが倍増する心憎い演出です。切る、焼く、煮るなど、驚くほどシンプルな作業から生まれる料理の決め手は、食材と下ごしらえ。特に食材に関しては、できるだけ生産者の顔が見える、信頼できるものを使っているのだそう。店の料理は特別なものではなく、普段自宅で作るものと同じなのだとか。料理は母親から教わったり独学で学んだという佐藤さんが作る、正真正銘の家庭料理が味わえます。

写真左)干物ご飯。ご飯に混ぜた刻みミョウガとクレソン、少量の梅が夏らしく香ります。貸切時のコース用に大皿で提供。家で作りたいと思わせるシンプルさに加え、プロらしい工夫が随所に光るさすがな一品。見た目も迫力!中右・右)なすと身欠きにしんの冷たい炊き合わせ1,000円。にしんは提供する直前にさっと軽く焼き、香ばしさを引き出して。味が染みるよう施されたなすの細かな切り込みに、丁寧な下ごしらえがうかがえます。キッチンは全部大公開!の様相で、流れるような佐藤さんの動きは、料理好きなら見とれてしまうはず。「最初は、見られる緊張で手が震えていた」のだとか。今ではすべてのオーダーをほぼひとりでこなします

TEL:03・3464・3532
住所:東京都目黒区上目黒1・7・5
営業時間:18:00 ~ 22:30LO 日祝、第一・第三月定休

Text:メトロミニッツ編集部

※こちらの記事は2014年5月20日発行『メトロミニッツ』No.139に掲載された情報です

更新: 2016年11月6日

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