一気飲み?今やエレガントに味わうスピリッツ

|メキシコの風、吹く[7]|
第二章 テキーラの風、吹く。
アメリカに風を吹かせた、レジェンドテキーラブームの起源を語る 前編

メキシコの食文化を語る上で、無視できないのが“ テキーラ”。ただ、そのイメージは、一気飲みをして、悪酔いをするお酒、というところで止まっているように思います。しかし今、欧米を中心に、丁寧なつくりと豊かな味わいを愉しむ、極めて質の高い“プレミアムテキーラ”がブームとなり、広く親しまれているのです。そこでまずは、アメリカと日本でテキーラの風を吹かせるべく邁進するお2人に、その深い愛について語っていただきます。前編はアメリカ編。

アメリカに風を吹かせた、レジェンドテキーラブームの起源を語る

父の代からメキシカンレストランバー「トミーズ」を営み、今年で丁度50年を迎えるけど、実は正直言って、実家のトミーズで働くのは全く好きじゃなかったんだ。典型的なアメリカの移民家族のビジネスで、若いころはたくさん手伝わなきゃならなかったよ。でも、カリフォルニア大学バークレー校の政治経済学部まで進学できたんだ。卒業したら同級生たちはみな弁護士や教授になってパリッとスーツを着ていたけど、自分は実家で皿を洗っていたからね。本当に嫌だった。でも数年後に自分の気持ちを大きく変えてくれたのがテキーラ。こんなに面白くて深いお酒があるならバーを拡げて続けていこうって。

きっかけは、忘れもしない1989年、バーテンダーの友人がとにかく来いというので行ってみると、そこに「エル・テソロ」と「パトロン」があったんだ。飲んだら心が吹っ飛んだよ! その日のうちにこの2つのテキーラの大量発注をかけた位だからね。「エル・テソロ」には本当にはまってしまって、ボトルには「”ドン・フェリペ“という人物が毎日アガベを仕入れて丁寧に造っている」と書いてある。彼に会いたくなって輸入社にお願いしてみたんだ。2年後にようやく彼の蒸留所で会うことができて、極めて高い品質のテキーラができる理由がよくわかったよ。とにかく丁寧なんだ。その18年後には、ぼくは彼の愛娘と結婚することになるんだけどね(笑)

 

T photography / Shutterstock.com

ドン・フェリペに会った1991年は、アメリカでもまだほとんどのテキーラがミクスト・テキーラで、100%アガベは数えるほどだったね。でもこの時決めたんだ。トミーズでは100%アガベテキーラしか売らないって。そして1994年にはアガベ・ネクターを使った”トミーズ・マルガリータ“を考え出した。どっちもアメリカのバー業界では革命的なことだったと思うよ。でも今では多くの国で100%アガベが主流だし、トミーズ・マルガリータもクラシックカクテルになりつつあるよ。

また、私は旅行が好きなので世界中を旅して、いろいろなものを食べて、世界各国のシーンでテキーラが飲まれているのを見てきたんだ。今、世界がテキーラに何を求めているのかを知ってしまったら、どうしてもそれに応えるテキーラが作りたくなった。それで自分で納得いくまで試行錯誤して作ったのが「L&J」というテキーラなんだ。このテキーラが好かれるかどうかは気にしないよ。テキーラはブランド毎の個性が本当に豊かだから、誰かの好みに合えば嬉しいっていうだけ。造りに自信はあるけどね。

日本は伝統と品質を重んじる国だから、今後100%アガベテキーラがどんどん伸びていくと思うよ。世界中でそうなってきているんだから、日本ではさらに顕著かもしれない。だって日本人はあれだけ素晴らしいウイスキーを造るんだからね!

フリオさんのお店「トミーズ」

伝統的なメキシコ料理が楽しめる、サンフランシスコの人気レストラン。今年で開業50周年を迎える。テキーラのラインナップは全て100%アガベのもの。フリオさんが考案した、アガベシロップで作る「トミーズマルガリータ」は今や世界中のバーリストに載るカクテル。
http://www.tommysmexican.com/

Text:林生馬
Photo:今井広一

※こちらの記事は2015年6月20日発行『メトロミニッツ』No.152に掲載された情報です。

フリオ・ベルメホさん

政府公認テキーラ・アンバサダー、「トミーズ」オーナーバーテンダー フリオ・ベルメホさん

サンフランシスコのメキシカンレストランバー「トミーズ」のオーナーであり、世界に2人しかいないメキシコ政府公認テキーラ・アンバサダーの1人。100%アガベ・テキーラをアメリカに広めた第一人者と言われる。この日はイベントの出演のため来日。手に持っているのは、彼のオリジナルテキーラ「L&J」

更新: 2016年11月18日

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