おいしい匂い漂う

|メキシコの風、吹く[6]|
すべての起源は7000年前にあり
メキシコ料理の歴史ー現代編ー

【現代】 現代20世紀?現在

メキシコの一般的なタケリア(タコス屋台)。奥に見えるのが豚肉の塊で、東京でもよく見るドネルケバブのようなスタイル。鉄板でトルティージャを温めて提供されます

庶民の味方、スナックを見ればトレンドがわかる!?

各地からの移民も多いメキシコ。レバノン系移民が経営する大手スーパーもあり、最近では移民文化にインスパイアされた料理も誕生しています。例えば、今メキシコの屋台で人気のタコスが「アル・パストール」。豚の肩ロースをチリやパイナップルジュースで甘辛くマリネし、串で刺した肉を回転させながら焼き、できあがりの肉をナイフで削いで、トルティーヤに載せて食べるというもの。メキシコの街中では、火柱を上げてアル・パストールを焼くシーンも見られます。ところで、メキシコで屋台のスナックと言えば、タコスと人気を二分するのが「トルタ」。こちらはフランスパンのサンドイッチのようなもの。パンを使うことからもわかるように、先住民たちが親しんでいたタコスとは違い、スペイン征服後、スペイン人が作ったスナックです。具は、豚のカツや、ハム、マグロの缶詰などなんでもあり。メキシコは異文化を飲みこんで消化するパワーに満ち溢れています。

ソフトフランスパンで様々な具材をはさむ「トルタ」。こちらもメキシコの代表的ファーストフード

無形文化遺産登録以降、メキシコ食文化を見直す傾向が

以前は、繊細な盛り付けや、フランス料理のテクニックでメキシコの食材と向き合うレストランが流行っていたメキシコ。しかし、2010年、世界遺産に登録されて以降、海外経験のあるシェフを中心に、メキシコの伝統料理を再評価する動きが出てきています。メキシコ原産の食材をふんだんに取り入れたり、モルカヘルテという昔ながらの石臼といった調理道具を使ったり、メキシコの各州に根付いている伝統料理を再構築したり。例えば、2015年6月に発表されたイギリス『レストランマガジン』誌による世界のベストレストラン50の35位にランクインしたメキシコシティのレストラン「Quintonil」では、料理に使う食材にメキシコの季節性を尊重し、現代では忘れ去られていた伝統的なハーブ、など“おばあちゃんが使っていた”メキシコ産の食材を使用。自家菜園でとれるそれらの食材は、比類なき香りと栄養価を持つと評価されています。メキシコのガストロノミーが、世界の新たなる潮流が生まれる日も、そう遠くないかもしれません。

コーラ消費量世界No.1!

メキシコ人はとにかくコーラ好き。食事中に、ご先祖様へのお供え物に、さらに客人をもてなす際にもコーラは欠かせない存在。アメリカのコーラはトウモロコシ由来の糖分で甘みをつけているが、メキシコはサトウキビから作る純粋な砂糖を使っているため、美味しいという噂も。

2010年無形文化遺産に登録された理由

「フランス人の美食術」「地中海の食事」と共に、2010年、「伝統的メキシコ料理~先祖代々受け継がれ、現在も進行中の社会文化、ミチョアカンのパラダイム~」として、メキシコ料理が、ユネスコの無形文化遺産に登録されました。トウモロコシ、トウガラシ、インゲンマメの3つの食材を土台にし、7000年前より受け継がれてきた伝統の料理は、地域との繋がりや伝統的な祭礼にも関わる重要な役目を担っています。先住民独自の文化を維持するミチョアカン州をひとつのモデルとし、伝統を次世代へ渡そうとする意志や取組が登録の理由になったそう。歴史や伝統文化、そして複雑な風土に育まれたメキシコ料理の行方から目が離せません。

【近代~現代】メキシコ年表

1776年
アメリカが独立。さらにフランス革命やナポレオン戦争に影響されたクリオージョ(メキシコ生まれの白人)たちに独立機運が高まる。

1810年
メキシコ中部のグアナフアト州で司祭をしていたミゲル・イダルゴ・イ・コスティーリャを中心にメキシコ独立革命が起こる。先住民、メスティーソ(混血民)たちもこれに賛同する。

1821年
イダルゴの処刑による指導者不在で独立運動が下火になるも、スペイン本国での革命による影響で形勢逆転。メキシコがスペインからの独立を勝ち取る。この時は暫定的に皇帝を置き、帝政を採った。

1824年
連邦共和制に移行。各州に国土を分け、自治権を認める憲法を採択する。メキシコ合衆国の成立。この時のメキシコの国土はカリフォルニアやテキサスも含む広大なものだった。

1835年
先住民の反乱をはじめ国内が混乱。憲法が廃止され、連邦共和制から単一共和制のメキシコ共和国へ。

1846年
憲法が復活し、再び合衆国に。

1848年
テキサスの独立運動が過熱し、独立を支援するアメリカと米墨戦争が1846年勃発。これに負けてテキサス、カリフォルニア、ニューメキシコ、アリゾナを含む領土をアメリカに割譲。メキシコは国土の1/3を失った。

1861年
フランス第二帝国のナポレオン3世がメキシコに出兵。1863年にはメキシコシティが陥落し一時崩壊。フランスの傀儡政権である第二次メキシコ帝国が建国された。

1867年
第二次メキシコ帝政を打倒し、メキシコ合衆国が三度復活。ベニート・フアレスが先住民から初めて大統領に選出される。教育の振興や、産業の発展に務め、現代メキシコの礎を作る。

1876年
ポルフィリオ・ディアス独裁政権時代のはじまり。経済発展を遂げるも、農民や労働者を酷使。エミリアーノ・サパタが農民闘争を開始した革命運動は1917年に現行の憲法を制定するに至る。

1968年
メキシコシティオリンピック開催。高度経済成長期を迎え、1994年NAFTAの締結により事実上先進国の仲間入りを果たすも、自由貿易により経済格差は広がり、政情は不安定

2005年
21世紀に有数の経済大国に成長すると予想される「ネクスト11」に選出される。石油産業、農作物や工業製品の輸出が盛んになり、カンクンなどのリゾート地や、数々の世界遺産を保持し観光国としても注目されている。

編集協力/ロドルフォ・ゴンザレスさん(日本でグローバル・パシフィコ・コンサルタンツを立ち上げ、対メキシコを中心とした国際ビジネスのコンサルティングを行う。元メキシコ農業省日本支部代表であり在日メキシコ大使館文化担当参事官)

Text:浅井直子

※こちらの記事は2015年6月20日発行『メトロミニッツ』No.152に掲載された情報です。

更新: 2016年11月11日

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