呑んで食べて1人1万円以下

|嗜む日本酒[11]|最終章
エレガントに日本酒を嗜む和の店|お燗が美味しいお店

優雅な設えの中、しっかりした日本料理が食べられてかつ日本酒には一家言あり。程よく2、3杯日本酒をいただき、お腹も満たして1人1万円以下に収まる気前の良いお店をご紹介します!料理とお酒の美味しさに、ついつい杯と皿を重ねて、1万円オーバーしてしまってもあしからず…。

お燗が美味しいお店

様々な温度帯を楽しめるのが日本酒の魅力。温めれば、冷やでは感じられない香りや味わいが顔を出し、これがまた料理を引き立ててくれるのです。ここでは燗付けに自信ありな2つのお店から、お燗と和食の楽しみ方を教えてもらいましょう。

「お燗」とは何℃からのこと?

日本酒は温度帯によって呼び名が替わります。現在、一般的には冷蔵庫で冷やした冷たい日本酒は「冷酒」(もっと細かく分類できますが)、「冷や」は20℃前後の常温のお酒のこと。では「お燗」はというと、30℃前後のお酒を指す「日向燗」より高い温度帯。ちなみによく聞く「熱燗」は50℃前後のお酒を指す名前です。

新ばし?[ 新橋 ]

酒と料理のスペシャリストが自在なマリアージュを提案

日本酒好きには既におなじみ、2カ月先まで予約で埋まるほど人気店のこちら。10席という小さい店ながら、定番から季節もの、マニアックな銘柄まで40種ほどが揃う守備範囲の広さが自慢です。「まだ燗酒にマイナスイメージを持たれている方も多いと思いますが、そんな方には、香りが穏やかで口当たりも丸みのある柔らかなものをおすすめします」と話すのは店主の鈴木さん。同じ温度でも、ゆっくり温めたり、かき混ぜながら温めたりと、さまざまな技を駆使して燗を付ける名手です。生の原酒を火入れする感覚で燗を付けることも。そんな鈴木さんと二人三脚で店を切り盛りする上野さんは、和食の基礎は押さえつつ、ジビエやフルーツを使うなど、意外性のある組み合わせにも積極的に挑戦する若き料理人。お酒に合わせて、逆に料理に合わせてと、ふたりの自在な提案が燗酒の世界を広げてくれます。「一緒だと、ひとりでは思いもつかないマリアージュが生まれることもあるんですよ」。

【BEST MARIAGE】ぐじの栗蒸し×奥羽自慢 純米吟醸ひやおろし原酒

米の旨みが前面に出る“ぬる熱”から、徐々に冷まして30℃前後で飲んでも美味しい。「穏やかな香りが料理をぐっと持ち上げ、引き立てる、縁の下の力持ちのような日本酒です」

【BEST MARIAGE】
ぐじの栗蒸し(コースの中の1品)×奥羽自慢 純米吟醸ひやおろし原酒(山形県・奥羽自慢株式会社)

香ばしく皮に焼き目を付けたぐじの下に、栗や銀杏、きのこといった旬の味覚が詰まる季節感あふれる1品。秋らしい芳醇な香りに優しく寄り添ってくれるのが、「奥羽自慢」のこっくりしたうまみと重すぎない飲み口

【BEST MARIAGE】熟成鹿のグリル×分福 純米吟醸生原酒 氷温3年貯蔵

「生酒を火入れする感覚」と鈴木さん。気泡を含ませ、ガスを外に出すように撹拌しながら一気に55℃まで上げ、その後氷で急冷して45℃で提供することで、一段とコクが増す

【BEST MARIAGE】
熟成鹿のグリル(コースの中の1品)×分福 純米吟醸生原酒 氷温3年貯蔵(群馬県・分福酒造)

力強いうまみに合わせて、熟成させて深みを増した鹿肉の野性的な味わいと相性抜群。お酒の酸みに合うよう、肉にはしょうゆベースのベリーのソースをかけて。「和食で多用される砂糖の代わりにフルーツを使うと、優しい甘さに」

【BEST MARIAGE】さんまの松茸包み焼き×川鶴 純米無濾過

地元で7割近く消費されるという「川鶴」は、備前雄町らしい米の旨み、香ばしさがたっぷり溶け込んだお酒。ぬるめの燗にすると、穀物由来の優しい甘みがぐんと引き立つ

【BEST MARIAGE】
さんまの松茸包み焼き(コースの中の1品)×川鶴 純米無濾過(香川県・川鶴酒造)

「焼きさんまを食べると、ご飯が欲しくなるもの。そこから炊き立てのお米を連想し、米本来の味わいが強い『川鶴』を選びました」。こんな風に普段の生活の中から合わせるお酒のヒントを探してみるのも面白い

しんばしもと
TEL:03・6459・0467
住所:東京都港区新橋3・16・22池野6号ビル 2F
営業時間:15:00~22:30LO、土12:00~20:00LO 日・祝日定休

オープンは2010年。新宿にある「日本酒スタンド?」の姉妹店。平日は15:00、土曜日は12:00というオープン時間で、優雅に昼酒を嗜むこともできます。日本酒は大(約130ml)と小(約65ml)の2サイズでオーダー

山灯[ 四谷三丁目 ]

揃うのはほとんど燗向きの酒若き店主の個性が光る注目店

2011年、29歳でこの店をオープンした店主の渡邊雅之さんは、築地の料亭で修業後、コンサルタントやサービスの勉強や、出張料理教室をしていたというユニークな経歴の持ち主です。「自分が行きたい店にしたいと思って」と、目指すは会席料理屋での最安値。「料理は方程式。ゴールの味がブレたり、和食の文化的側面を無視しなければ、方法は色々あっていいんじゃないかと思うんです」と話す通り、魚を低温調理するなど独自のアプローチで全8品のコースを提供しています。もちろん日本酒も独自路線。「僕は、お酒自体の後味が残るようなものは、日本酒ではなくビールでいいんじゃないかと思うんですよ。適度な酸が立ち、料理をもっと食べたくなるのは絶対に燗酒。うちはほとんどが燗向きのお酒です」。デザートにはほんのりぬるめの味醂を合わせるなど、変化球の使い方も心憎いかぎり。本人も料理も酒も、型にはまらないところが魅力の店なのです。

【BEST MARIAGE】季節の前菜5種盛り合わせ×扶桑鶴 純米吟醸

常温で飲むとあっさり、さらりとした味わいの「扶桑鶴」だが、燗にすると隠れていた丸さが際立ってくる。断然飲みやすく、渡邊さん曰く「最初の一杯にはもってこいの銘柄」

【BEST MARIAGE】
季節の前菜5種盛り合わせ(コース内の1品)×扶桑鶴 純米吟醸(島根県・桑原酒場)

「見た目の美しさを追求する八寸よりも、もっと食べている感じが欲しいから」と、前菜では季節の素材をバリエーション豊富に盛り合わせて提供。しっかりめの味付けでお酒が進む。オールマイティな「扶桑鶴」はどれとも合う

【BEST MARIAGE】雲丹豆腐の清澄仕立て×辨天娘 純米強力

鳥取県の酒造好適米・強力を使った1本は多少硬いイメージ。「熱すぎると思われるかもしれませんが、この位温度を上げると、味わいがほぐれて色々な表情が見えてきます」

【BEST MARIAGE】
雲丹豆腐の清澄仕立て(コース内の1品)×辨天娘 純米強力(鳥取県・太田酒造場)

出汁は、めじ節(めじまぐろ)とかつお節を合わせて強めに。「前菜でしっかり日本酒を楽しんだら、椀物でほっと一息してほしい。『辨天娘』の持つ力強さで、かつおの風味がぐっと立ってきます。燗冷ましもおすすめ」

【BEST MARIAGE】子持ち鮎の有馬煮×竹鶴 生もと 純米

その力強い旨みでつとに知られる「竹鶴」は、「絶対に燗で飲んでほしい」と言い切る渡邊さん。しかも温度はぐっと高めにして、その唯一無二な味わいを十分に引き出します

【BEST MARIAGE】
子持ち鮎の有馬煮(コース内の1品)×竹鶴 生もと 純米(広島県・竹鶴酒造)

鮎をさっと煮、ふっくら仕上げた有馬煮には、生の山椒をびしっと効かせて。山椒の“痺れ”と、この時期の子持ち鮎が持つこってり濃厚な脂の味わいを、熱めの『竹鶴』ががっしりと支えてくれる。後味の酸が脂を流す効果も

やまびこ
TEL:03・3354・1550
住所:東京都新宿区舟町3・6石山ビル1F
営業時間:18:00~翌3:00 不定休

コースは軽めの酒肴コース2700円、ご飯までついた8品の山灯コース4320円、季節の高級食材を取り入れたコース6480円の3本。献立は基本月ごとに替わりますが、その日の食材によって特別メニューが出ることも。

Text:唐澤理恵
Photo:宮崎純一(eat photo)

※こちらの記事は2014年11月20日発行『メトロミニッツ』No.144掲載された情報です。

更新: 2017年1月9日

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