|地中海料理という、暮らし方。[4]|

オリーブ、小麦、ワインを育む大地
=地中海料理の国々の地理=

「地中海料理」で世界遺産に登録された7つの国々には、共通点があります。同じ海から恩恵を受け、温暖な気候、そして食文化も。似ているけれど、個性が違う、そんな各国のデータをご覧いただきながら、地中海沿岸地域がどんなところか、ぜひイメージを膨らませてみてください。

「地中海式農業」による収穫

例えば、ギリシャ・サントリーニ島をご覧いただくとわかりますが、地中海の海沿いの土地は急峻で山がちで、風化した石灰岩が地表を覆う痩せた土地である場合が多い。そこは農耕には適さず、豚や羊などの牧畜、耐干性の樹木性作物(オリーブやブドウなど)などを行うため、どうしても作物の種類は少なくなります。しかし、日照時間が長い乾燥気候と石灰分を含む通気性のある土壌を好むオリーブには打ってつけで、現在も世界のオリーブオイル生産量の約90%を地中海沿岸国が占めています。

「地中海性気候」という地域

地中海性気候はケッペンの気候区分の中の、温帯気候の1つ。ほとんどの地中海沿岸地域がこの気候となりますが、アメリカの西海岸、南アフリカの南端部、オーストラリアの南西部など世界各地にも分布しています。特徴は日本と真逆で、冬に雨が多く、夏には降水量が少なく乾燥すること。そこで、夏には高温乾燥に強い果樹栽培を中心にし、冬の雨季には麦類を育てるという「地中海式農業」が行われています。灌漑設備(給排水)が充実した農家が多い。

地中海を“海”として見たら?

地中海はアジア、アフリカ、ヨーロッパの3大陸に取り囲まれた世界最大の内海で、大小の無数の島々が浮かんでいます。大西洋への出口はスペインとモロッコの間にあるジブラルタル海峡のみ。海流の循環は弱く、最深部は4,000mにも及びます。温暖な気候が海水を蒸発させるため塩分濃度が高めで、波は穏やか。航海に最適な環境が整っていると言えます。そして地中海では早い時期から交通・交易が発達し、時には激しい紛争の舞台となりました。

地中海の漁業にまつわる文化

ニシン、タラ、イワシなど、水産資源の種類は多い地中海。漁業の歴史も古く、古代ギリシャの頃にマグロの生態と漁労にまつわる記録が残っていたり、ローマ人の食卓には必ずガルム(魚醤)があったと言います。しかし、世界的には漁獲高はそれほど多くはなく、また沿岸部の山がちな地形によって町がそれぞれ孤立して点在するため、なかなか流通しにくいことも。なお、現在、日本国内で消費されているクロマグロ(本マグロ)の約4割が地中海で養畜されたもの。

[クロアチア]

【国土】国土面積は九州の約1.5倍。1991年ユーゴスラビアから独立、2013年EU加盟【地中海地域】地中海全域でもギリシャ群島に次いで2番目に大きな群島を成しており、領海には718の島(うち有人島は48)と389の小島、78の礁がある【農漁業】主要な産物は、トウモロコシ、小麦、てんさい、ブドウ、タバコなど。クロマグロの畜養漁業が盛んで、その大半が日本へ輸出されている。(日本にとって輸入先第3位、2011年現在)

[ギリシャ]

アクロポロス

【国土】国土の8割が山や丘陵。バルカン半島南端に位置し、本土の他に、ペロポネソス半島(南西部)、約6,000の群島から成る。面積は日本の約3割【地中海地域】ほとんどの地域が地中海性気候、北部地域には温暖湿潤気候【農漁業】オリーブ生産量は世界第3位(2012年)、オリーブオイルの輸出額も世界第3位(2011年)、欧州で有数の綿花の生産国。牧畜が盛んで、国民は毎日ギリシャヨーグルト(水切りヨーグルト)を食べる。

[キプロス]

ファマグスタ

【国土】国土の約4割を森林が占め、中央にそびえるオリンポス山を中心に山岳地帯が広がっている。面積は四国の約半分【地中海地域】地中海で3番目に大きな島。島の北側36%はトルコ軍実効支配地域の北キプロス・トルコ共和国で(トルコ系住民)、いわゆる「キプロス」は南側のキプロス共和国(ギリシア系住民)【農漁業】北部は柑橘類、ジャガイモ、タバコなど、南部はブドウ、オリーブ、アーモンドなどを育てている。

[イタリア]

シチリア島

【国土】イタリア半島の他、地中海第1位と第2位の大きさを誇るシチリア島、サルデーニャ島を擁す。面積は日本の約8割【地中海地域】主に半島の南部とシチリア島、サルデーニャ島【農漁業】農業生産額はフランス、ドイツに次ぐEU第3位。国土に占める平地の割合は小さいが、丘陵地や山岳地も利用しているため、国土面積に占める農用地の割合は46%に上る。オリーブオイル輸出量は世界第2位、ワインの輸出量は世界第2位、チーズ輸出量は世界第4位(いずれも2011年現在)

[ポルトガル]

【国土】狭いながらも南北で地域差が顕著。北部は山脈の地形で、リスボンを流れるテージョ川以南の南部地域はスペイン同様メセタの台地によるなだらかな地形。面積は日本の約2割5分【地中海地域】主に南部【農漁業】欧州随一の魚の消費国。よく食べるのは、タラ、イワシ。コルクの生産量が世界第1位で世界生産量全体の5割を占める。森林面積の約23%がコルク樫。

[スペイン]

【国土】中央の大部分はメセタ(高原台地)、フランスとの国境地帯にはピレネー山脈がある。面積は日本の約1.3倍【地中海地域】主に東部(カタルーニャ州、バレンシア州など)と南部(アンダルシア州、ムルシア州など)【農漁業】農用地面積はフランスに次ぐEU第2位(日本の6倍)。オリーブオイルの輸出額は世界第1位(世界生産量の約4割を占める)、オレンジの輸出額も世界第1位(2011年現在)。EU最大の漁業国でもあり、地中海沿岸ではクロマグロの畜養が盛ん(日本にとって輸入先第2位、2011年現在)

[モロッコ]

【国土】変化に富んだ地形により、地中海沿岸部、大西洋沿岸部、内陸高原部、山脈地帯、砂漠地帯と5つの気候に分けられる。面積は日本の約1.2倍(西サハラ除く)【地中海地域】海岸地域の約25%が地中海沿岸(他は北大西洋沿岸)【農漁業】農漁業は基幹産業だが、食糧自給率は年々低下している。小麦72%、砂糖52%、食用油25%、牛乳87%、肉・野菜・果物100%(2012年4月、農業・漁業大臣による発表値)。また、タコ漁が盛んで、日本にとっては輸入先第1位

※各国のデータ類は、主に農林水産省のHPを参考にしています。


Text:メトロミニッツ編集部


※こちらの記事は2015年5月20日発行『メトロミニッツ』No.151に掲載された情報です。

更新: 2016年11月2日

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