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|WASHOKU GOOD NEWS[6]|
近い将来、和食が日本から消えてなくなる!?
【和食クライシス】02

今、世界中で和食が楽しめるようになった一方で、「このままでは日本に本物の和食はなくなる。和食は特別化し、日本人から遠く離れた存在のものになるでしょう」と警鐘を鳴らすのは、日本料理「銀座 小十」の奥田透さんです。一体どういうこと?その原因は、実は私たち自身にもあるんです。

初ガツオ、戻りガツオ、それぞれいつが美味?

和食では旬が大切にされるというのは、誰もが知るところ。ではどれだけの人が、食材の旬を答えられるでしょうか。

ちなみに初ガツオは4~5月頃、戻りガツオは9~10月頃が一番美味しい時期とされています。初夏に黒潮の流れに乗って九州から太平洋を北上する初ガツオは、やがて北の海にたどり着き、たっぷりと餌を食べて脂を蓄えて初秋に南下し、戻りガツオとなります。もし日本がこれだけ広い海に囲まれておらず、小さな湾しか有さない国であれば、初ガツオ、戻りガツオといった美味しさの概念もないでしょう。旬があるのは、ひとえに日本の豊かな自然環境のおかげなのです。

さて、カツオにおいしい時期が2度あるように、旬にもバリエーションがあります。旬をさらに細かくとらえた「走り」「旬」「名残り」という3つの段階をご存知でしょうか。走りはいわゆる出始め。名残りは、そろそろ終わりに近づく頃。栄養たっぷりの旬のものをいただきながら、季節の移ろいを感じ楽しむのが和食の文化です。現在は、スーパーに行けば一年中同じ食材が手に入り、輸入食材が増えれば増えるほど、日本の四季を映し出す食材は姿を消し、旬そのもた人への感謝の心も込められています。

ユネスコの無形文化遺産に和食を登録することを提案、推進した組織である「和食文化国民会議」の会長の熊倉功夫さんは「箸を始めとした日本人の”仕草”には、無意識のうちに脈々と続く民族性が現れています。道具を使わなくなることは、そうした民族のアイデンティティを失うことです」と語ります。和食と聞くとまず献立を思い浮かべがちで、こうした食の道具のことを思い浮かべることは少ないですが、実はこれらも和食の一部。むしろ道具があるからこそ、感謝の心が根底に根付いた和食文化が成り立っているのです。

大人が子どもに正しい作法を伝えられなければ、その子どもたちももちろん、下へ継承していくことはできません。和食を語るには、何を食べるかより前に、どう食べているかも考えることが不可欠です。のが感じづらい環境にあると言えます。「秋は脂の乗った魚やカロリーの高い穀物をたくさん食べ、食物が減る冬場に向けて蓄える。人は本来そのように、自然に即したリズムで生きてきました。現代のように生産性を重視し、1年を通して同じリズムで生きることに、違和感を感じるべきではないでしょうか」と語ってくれたのは奥田さん。便利に、楽に生きようとして、旬から離れてきたのが現代の日本なので

|日本のものを食べなくなった日本人

左の図は「日本の食料自給率の変化」(農林水産省「食料需給表」より作成)。国内で自給可能な米、魚、野菜などの消費が減り、輸入ものの小麦や冷凍・加工食品の消費が増えたことで、下がる一方の自給率。下記のような食材の“旬”も感じづらくなっている。

|「嫌い箸(きらいばし)の作法を子供に教えられる?

「嫌い箸」とは、箸でご飯を食べる際にマナー違反とされる箸使いのこと。さまざまな嫌い箸がありますが、箸先で人やものを指し示す「指し箸」やご飯に箸を突き刺す「立て箸(仏箸)」がNGなのは、知っている人も多いはず。では「移り箸(または渡り箸)」は?これは1つの器からおかずを取って食べた後、ご飯を食べずに、続けて違うおかずを取って食べること。おかずを食べようとして急にやめたり、少し触れた後、そのまま違うおかずを食べた時も同様に「移り箸」であるとされます。

基本的に和食では、おかずを食べたらご飯を、汁物を飲んだらまたご飯をと、間々にご飯を挟んで食べ進めるのがマナー。口中調味と呼ばれるこの食べ方は、ひとつひとつの食材を大切に、丁寧に食べるという精神性の表われ。神さまや自然への感謝に加え、作ってくれた人への感謝の心も込められています。ユネスコの無形文化遺産に和食を登録することを提案、推進した組織である「和食文化国民会議」の会長の熊倉功夫さんは「箸を始めとした日本人の”仕草”には、無意識のうちに脈々と続く民族性が現れています。

道具を使わなくなることは、そうした民族のアイデンティティを失うことです」と語ります。和食と聞くとまず献立を思い浮かべがちで、こうした食の道具のことを思い浮かべることは少ないですが、実はこれらも和食の一部。むしろ道具があるからこそ、感謝の心が根底に根付いた和食文化が成り立っているのです。大人が子どもに正しい作法を伝えられなければ、その子どもたちももちろん、下へ継承していくことはできません。和食を語るには、何を食べるかより前に、どう食べているかも考えることが不可欠です。

Text:唐澤理恵
Illustration:八重樫王明
グラフ:groovisions

※こちらの記事は2016年2月20日発行『メトロミニッツ』No.160掲載された情報です。

更新: 2016年10月30日

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