CRAFT BEER IMPACT[1]|
「クラフトビール」の定義とは?

「クラフトビール(地ビール)」の定義って、きっちりとは決まっていないそうです。だから、人によって考え方に若干の違いがあるのも事実なようで。今回、日本地ビール協会会長の小田良司さんにお聞きした話をベースに展開したいと思います。…で、改めまして。クラフトビールって何?

そもそもビールとは?

ビールとは、麦芽、ポップ、水、酵母から造られる醸造酒です。
麦は、小麦より大麦が主流。麦を発芽させ、温風で乾燥させたものが麦芽(モルト)で、味のベースとなります。ホップとは、アサ科の植物・鞠花のこと。ビールに苦味、香りを加えます。さらに泡持ちを良くし、殺菌作用を与えてくれます。酵母は、パンを焼く時にも欠かせないあの菌種。ビール酵母は大別して、エール酵母とラガー酵母に分かれます。
それらが主な原材料ですが、さらに複雑なことに、例えば1種類のビールにつき、麦芽もホップも複数種類を使用します。麦にもいろんな種類があり、同じ種類の麦でも産地が違えば味も変わってきます。ホップも酵母も、種類が山ほど。水も硬度によって味が変わってくる。何をどう選び、どうブレンドするのか。どれをどのタイミングで入れるか、どのくらいの苦さにするか、発酵温度はどうするのか。製造工程の至る所を自由自在に決められるのが、ビール醸造の最大の魅力です。しかも、造ってから結果が出る(出来上がる)までに2週間?1ヵ月程度。ワインみたいに1年も待たないといけないこともなく、職人たちはどんどん醸造経験が重ねられます。

いよいよ本題。 クラフトビールとは?

あくまでも、伝説のイギリス人ビール評論家、マイケル・ジャクソン氏(※)の定義ですが、ブルワリー(ビールの醸造所)は大きく分けて3タイプがあります。「ナショナル・ブルワリー」、「オリジナル・ブルワリー」、「ニュージェネレーション・ブルワリー」です。ナショナル・ブルワリーは、メジャー選手。安定供給ができ、世界中で同じ味を提供することができる大企業です。オリジナル・ブルワリーは、ベルギーやイギリス、ドイツなど、ビールの歴史ある国で伝統的な製法を守る中小醸造所。土地の自然を活かし、1つの味を磨き続けるメーカーです。
そして、ニュージェネレーション・ブルワリーはと言えば…。始まりは80年代初頭、アメリカ各地に次々とマイクロブルワリー(小さな醸造所)が発生します。この現象が起こった要因のひとつが〝輸送技術の発達?です。それまではビールの原材料である、ホップや酵母は遠くまで旅をさせるとすぐに劣化してしまうため、近くで手に入るものしか使えませんでした。しかし、クール便のような技術が発達し、原材料の世界移動が可能に。好きな素材で、好きな醸造様式をいくつも試せる、クリエイティブにビールが造れる時代になったのです。そんなブルワリーから生まれるビールを「クラフトビール」と呼びます。これまでライトラガーというスタイルのビールしかなかったアメリカが、今や世界有数の〝ビールの種類がある国?まで発展させた立役者です。

〝地ビール?から 〝クラフトビール?へ

日本の地ビール産業は、94年、細川内閣の規制緩和により始まります。ビールの酒造免許の取得条件が年間2000klから60klまで引き下げられ、大企業じゃなくてもビールが造れる時代になったのです。そして、98年までの間に、全国に約220カ所ものブルワリーが誕生しました。しかし、あっという間に高まった日本の地ビールブームはすぐに下降し始めてしまいます。その理由の1つには、当時の地ビールには「観光地のお土産物」のようなものが多く、美味しいものが少なかったから。また、ターゲットをお父さん世代に据えていたこともあります。お父さん世代はやっぱり大手のビールが大好きなのです。そんな風に日本が停滞している間に、クラフトビールブームはアメリカから世界に飛び火します。日本では遅ればせながら、およそ03年頃になって、段々と志ある醸造家たちが急成長。そして、世界に追いつけとばかりに勤勉に取り組み始め、現在では約260社の実力を蓄えたブルワリーが存在しています。そして日本の大手ビール会社がピルスナーというスタイルのビールばかり造っているのに対し、様々な種類の国産クラフトビールも造られるようになりました。かつての「地ビール」から、今や「クラフトビール」に呼び名を変えて、ビールの新世紀がようやく日本にも訪れたようなのです。

本特集をご覧いただく前の注意事項 !!

1「発泡酒」もビールです。

実は、スパイスを入れることが多いベルギービールのほとんどや、果物や果汁を入れたフルーツビールは「発泡酒」です。日本の酒税法では、麦芽、ポップ、水、酵母という原材料に加え、米、コーン、馬鈴薯など7種類の副原材料、それ以外の物を入れたらビールではなくなります。しかし、クラフトビールと呼ばれるものの中には発泡酒も非常に多く。でも世界的な基準ではそれらも〝ビール?となりますので、ご安心を。

2「ブルワリー」って言葉が多発して使われます。

「ブルワリー」はビールの醸造所。「ブルワー」は、造り手、ビール職人。「ブルーパブ」は、自家製ビールを造って提供する飲食店のことです。

3「タップ」も意味のある言葉です。

「タップ」とは、ビールサーバーの注ぎ口のこと。サーバーを使うということは、「樽生で提供する」ということを指します。つまり「10タップある店」は「10種の樽生ビールが飲める店」の意。なお、今月号の表紙は「Goodbeer FAUCETS」という店のサーバーですが、FAUCETS も「蛇口」のことで、タップと同義。

(※)マイケル・ジャクソン :1942?2007年。世界的なビール評論家。アメリカ人ミュージシャンと同姓同名で、向こうが〝ポップの帝王?に対して〝ホップの帝王?と呼ばれた。ここでの話は、著書『ビア・コンパニオン』に詳しく書かれている

※こちらの記事は2012年7月20日発行『メトロミニッツ』No.137に掲載された情報です

更新: 2016年9月16日

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