さしつさされつ、 今宵はエレガントに

|嗜む日本酒[4]|
嗜む程度に知っておきたい
【飲む前の予備知識】

酸みがキレイなお酒とか、キレと程よい苦みがあるお酒とか、昔に比べて今どきの日本酒は、味も香りも表現力が豊か。種類も豊富で、飲み方も多様化。だから、お店に行って、慌てないための予備知識をもう少しだけ、どうぞ。

[予備1]はじめての“大吟醸”。日本酒の8 つのタイプを知る

日本酒は、大きく「特定名称酒」と「普通酒」に分かれます。「特定名称酒」とは、下の表にある全8タイプ。「普通酒」は、米、米麹、醸造アルコールの他に、糖類、酸味料などの調味料を含むお酒や、米麹歩合が15%以下のお酒などで、現在、こちらの方が世の中に出回っているお酒の主流派です。さて原材料については、「米」は磨いてから使用します。なぜなら米の表層部にはたんぱく質や脂肪が付いていて、お酒の雑味となるから。食べるお米が約90%なのに対し、お酒の場合は60%以下、50%以下などのサイズになるまで磨き上げられます。また「醸造アルコール」とは、戦後の米不足の頃、お酒の増量目的で造られたもの。加えすぎれば辛く、薄くなります。しかし、少量ならスッキリとした風味やキレ味を生むと、最近では風味調整のために使用している場合も。

平成2年、特定名称は酒税法「清酒の製法品質表示基準」という法令で定められたもの。表の8タイプは、「農産物検査法で3等以上に格付けされるか、それに相当する品質の米を使用していること」、「米麹の使用割合は15%以上」と定められている ※例えば「精米歩合60%以下だが、吟醸酒に値するまでの製造方法をしていない」など、製造上で何らかの理由がある場合。しかし、これらは酒税法で定められた基準ではなく、各蔵の醸造基準によることになっている。

[予備2]なぜ温めたくなるのか、 冷やしたくなるのか?

自宅で燗酒を飲み始めると、いずれ欲しくなるのが燗付けの道具。イラストの「ちろり」(江戸の場合。京阪ではこの蓋なしで「たんぽ」という)があれば、自宅もおでん屋さん風に

燗酒のすすめ

温めることでより美味しくなるお酒を「燗上がりする酒」と言いますが、温めると味が開き、甘み、うまみなど、お酒の隠れた味や表情が表れてくるようになります。また、アルコールの吸収が早くなり、胃腸に優しいとも言われています。燗に向くとされるお酒の一例は、常温で飲んだ時に「酸味が利いた、ふくよかな味わいのお酒」。例えば「山廃」、「生?」(P23参照)などは冷やすと酸みが立ってきてしまうため、温めた方がうまみのボリュームが増し、酸味ともバランスが良くなります。

最近、ワイングラスで日本酒を飲むスタイルがすっかり定着。お酒の特徴に合わせてグラスの形が様々選べ、お猪口では伝えきれなかった繊細な香りを広げてくれるそう

冷酒のすすめ

「冷や」は常温で、「冷酒」は冷蔵庫などで冷やして飲むこと。冷酒の歴史はそれほど古くはありませんが、今のように広まった理由は、精米機の進歩で吟醸酒・大吟醸酒など質の高い酒の醸造が可能になったことや冷蔵庫の普及。お酒は冷やすことで、引き締まった口当たりが楽しめますが、冷やして飲むならフレッシュな生酒や華やかな香りがある吟醸酒・大吟醸酒などがおすすめです。燗酒はちょっと上級者向けなので、日本酒初心者は質の良いお酒を冷やで飲むことから始めると良いようです。

[予備3]はじめの1 杯から締めの1 杯まで千差万別、和食と日本酒の美味しい関係値

ここでは、お酒がより美味しく飲める料理とのペアリングについて考えたいと思います。ひとつの指標として、コースの流れに添って、最初はすっきり、だんだんとフルボディのしっかり系に、という飲み方があります。では「山灯」の店主、渡邊雅之さんの考えはどうでしょう?いわく「食中酒に一番なのは燗酒だと思っています。余韻が目立たず、かつ酸が立つので、それぞれの料理の味わいを程よく切り、それによりまた料理を口に運びたくなる」。燗酒をメインで勧めるお店故に、温度と味と香りでお酒を料理に合わせていく。山灯の提案をご覧ください。

教えてくれたお店:旬菜料理 山灯(やまびこ)

【前菜】

季節の前菜5 種盛り合わせ
コースの始まりからお酒をたくさん飲んでほしいという店主の思いがこもった盛り合わせは、しっかりめの味付けで日本酒がぐいぐい進みます。

日置桜 純米ひやおろし 「山装う」/鳥取県山根酒造場

たっぷりの旨みとフレッシュ感、しっかりした辛さがあり、冷温どちらでも美味しくいただけますが、燗にするとより若々しい印象が強くなる一本。
甘み★★
酸み★★★
香り★★★

【椀】

雲丹豆腐の清澄仕立て

かつお節にメジマグロから作るめじ節をブレンドし、コクと酸味が主張する濃厚な出汁を取っています。前菜の後、ほっと一息つくようなイメージで。

玉櫻 生  純米/島根県・玉櫻酒造

塩ではなく醤油を使った椀の味わいに、一段と丸さをプラス。燗にすると、かつおの香りがぐっと立ち、料理とお酒がお互いを高め合う相乗効果が。
甘み★★
酸み★★★★
香り★★

【お造り】

ひらめと戻りがつおのお造り

それぞれ秋らしい脂の乗った味わいが楽しめる2種。麹の仕込み時に食塩水ではなく醤油を入れ、旨みも濃度もより豊かな再仕込み醤油を合わせて。

睡龍 純米吟醸/奈良県・久保本家

燗につけても軽快な香りと柔らかさがあり、お造りなど魚料理とよく合う一本。少しずつ温度が下がるとともに、味わいの繊細な変化も楽しめます。
甘み★★★
酸み★★★
香り★★★

【焼物代わり】

子持ち鮎の有馬煮

この時期だけのお楽しみ、脂のたっぷり乗った卵付きの鮎に、生山椒をびしっと効かせて。前菜同様日本酒が進む、店主曰く「酒好きのためのひと皿」。

小笹屋 竹鶴 生  純米原酒/広島県・竹鶴酒造

力強い旨みで知られる「竹鶴」の原酒に加水し高めの燗に付けることで、よりパワフルさを引き出し提供。こってりした味わいが山椒の痺れとマッチ。
甘み★★★★★
酸み★★★★★
香り★★★★

【蒸物】

かます舞茸包み蒸し 菊花あんかけ

ふっくら蒸し上げたかますに、かます出汁がベースの餡をふんだんに載せて。味付けは餡のみ。すだちを効かせ、心地よい酸味に食欲も上がります。

日置桜 純米無濾過生原酒 山根醸/鳥取県・山根酒造場

「異端中の異端」と店主が語るほど、店の個性が表れた料理と酒と温度の組み合わせ。柑橘を使った餡に合わせて酸味を前面に出すため、高めの燗で。
甘み★★★
酸み★★★★
香り★★★★★

【煮物】

賀茂茄子と海老芋の炊き合わせ

長く煮込んで味を含ませるより、それぞれの具材を個別に炊いて最後に合わせることで、きちんと素材感を残しています。味付けは優しい醤油ベース。

神亀 真穂人 純米/埼玉県・神亀酒造

燗向き酒が揃う「神亀」らしい旨みはそのままに、シャープな雰囲気もある「真穂人」。重めが続いた流れを一度落ち着かせる、適度にライトな一本。
甘み★★★★
酸み★★
香り★★

【食事】

秋刀魚と大葉の土鍋炊き込みご飯

季節により水加減まで微調整するという店の看板メニュー。こちらも味付けはしっかりめで、秋刀魚の香ばしさと相まって、さらにお酒が進みます。

扶桑鶴 純米にごり/島根県・桑原酒造場

秋刀魚の脂を包み、青魚の独特な匂いを緩和。燗にするとキレは増しますが、柔らかさはそのまま。「にごり酒もまたよしと再確認できます」と店主。
甘み★★★
酸み★★
香り★★★

この日いただいたのは、「山灯コース」4,320円。やはり、最低限の知識を持って、お店とのコミュニケーションを取り、料理や好みに合わせた一本を提案してもらうことが日本酒を嗜むには重要だ。

Text:唐澤理恵
Illustration:三宅瑠人

※こちらの記事は2014年11月20日発行『メトロミニッツ』No.144掲載された情報です。

更新: 2016年11月14日

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