本場の味とはどうやら少し違うらしい

|東京ハイカジ中華[6]|
日本の中華料理

CHINESE IN JAPAN
本場の味とはどうやら少し違うらしい日本の中華料理
中華料理と中国料理は違いをご存知ですか?日本式にアレンジされたのが中華料理。本国の味をそのままというのが中国料理という定義付けが一般的。では、本場との違いはどこにあるのでしょう?

CHINESE IN JAPAN 日本の中華料理

「中国三千年の歴史!」と言いますが、私たちが慣れ親しんでいる料理の多くはここ400年くらいにできたもの。唐辛子の中国伝来やフカヒレ料理が広まったのは18世紀頃、北京ダックも100年くらいの歴史と言われています。食に関する逸話の多い中国人ですが、それは美味しいものに対して素直であるということ。西域との交流や、他民族の支配など社会の変化に連なって食の変化が起きましたが、単純に美味しい物が残り、そうでないものが淘汰され、中国食文化が作り上げられてきたのです。移民たちが他国に広めた先でも美味しいもの至上主義は変わらず。日本でも本場の味は大幅にアレンジされました。そこで活躍したのが陳建民氏。四川料理を普及させるため、辛さをおさえたり、手に入りやすい調味料を使うなど台所事情にも配慮。結果、中華料理が日本の家庭にここまで普及するに至ったのです。

★餃子

日本読み:ギョウザ/中国読み:チャオズ
郷土:満州

日本の人気おかずは中国では主食の花形

日本でもお馴染みの餃子は中国では主食扱い。日本人がご飯を食べ続けるように、中国では餃子を何十個も食べるのです。もともと、はじまりは中国東北部の満州等で水餃子がよく食べられていたこと。その後、華北一帯で食べられるようになり、中国を代表する料理となりました。中国の餃子は茹で(水餃子)が主流。皮は厚めで、モチモチ食感が特徴です。代表的な具は豚肉や白菜、キャベツなど。日本ではニンニクやニラを入れるのが一般的ですが、中国ではNO。日本で一般的に広まったのは第二次世界大戦後。満州からの引揚げ者によって広く普及していきました。こちらでは焼き餃子が主流になっています。

★乾焼蝦仁

日本読み:エビのチリソース/中国読み:ガンシャオターシャー
郷土:四川省

辛さ際立つ本場の味。真っ赤な見た目は日本人仕様

エビチリの原型とも言われている四川料理。「乾焼蝦仁」の場合、殻付きのエビを使い、生姜、ニンニク、白ネギなどの薬味と四川省のピーシェン豆板醤で炒めます。花椒もたっぷり。汁気はあまりなく、トロミもほとんどありません。日本の「エビチリ」はこれを日本人向けにアレンジしたもの。考案したのは、かの有名な陳建民氏。辛さに慣れていない日本人向けにケチャップやスープ、卵黄を使って辛みを抑えた味を作りました。親しみやすい味で、中華料理を代表するメニューになっています。現在、昔ながらの「乾焼蝦仁」を出す店は少なく、本場中国でも日本式のエビチリが主流になっているそうです。

★回鍋肉

日本読み:ホイコーロー/中国読み:フイ・グゥオ・ロー
郷土:成都

いったん茹でたものを再度炒めるのが語源

四川料理の代表的な一品。回鍋肉の回鍋(ホイコー)とは、いったん茹でたものを再び炒める調理法の事です。肉(ロー)は、中国では豚肉。牛肉を使った料理なら、特別に牛肉(ニューロー)となります。本来はいったん茹でた豚肉を再び調味料で炒める料理を回鍋肉と呼びます。薬味は生姜、ネギなど。具は蒜苗や葉ニンニクを使います。味付けは中国では豆板醤を使った辛みの強いもの。日本では、甜麺醤を多めに使い、甘辛い味に仕上げています。こちらも、四川省出身の料理人・陳建民氏が日本に紹介。その際、日本では手に入れにくい蒜苗に代わり、キャベツを加え、今の日本のカタチになりました。

★酢豚

日本読み:すぶた/中国読み:咕老肉=グーラォロゥ、糖醋肉=タンツーロゥ
郷土:広東省

栄養素たっぷりの優良健康食

その名の通り、下味を付けた豚肉やピーマン、人参、玉ねぎに甘酢あんを絡ませた日本でもお馴染みの料理。片栗粉を使い、トロミを付けるのが一般的。中国では2000年もの歴史があり、豚のビタミンB1や酢の有機酸なども手伝って、疲労回復に効く料理としても知られています。「酢豚」というのは日本の名称で、中国では「咕老肉(パイナップル入り)」「糖醋肉(なし)」と呼ばれるのが一般的。よく話題に上がるパイナップル問題ですが、甘みを加えるため、酸味を中和するため、欧米人向けにパイナップルを入れたなど、諸説あります。パイナップルの分解酵素によって肉質がやわらかくなる作用もあります。

★麻婆豆腐

日本読み:マーボードウフ/中国読み:マーポードウフ
郷土:成都

四川風と日本アレンジでは辛さの質が異なる

四川料理を代表するメニュー。挽肉と赤唐辛子、花椒、豆板醤などを炒め、鶏がらスープで豆腐を煮込んだ料理。日本の麻婆豆腐は醤油と味噌が味付けのポイントになっていますが、中国はラー油と山椒。唐辛子の辛さである「辣味」と花椒の痺れるような「麻味」を合わせた、辛旨さが特徴です。本場の麻婆豆腐は仕上げにこれでもかと山椒を振りかけるので表面が黒め。日本では、このような本場に近いものを「四川麻婆豆腐」とし、花椒を抜くなどして、マイルドに調整しているためものと区別を付けています。ご飯の上にかけて麻婆丼にして食べたり、具材にナスを加えたりと、アレンジが多いのも日本ならでは。

★炒飯

日本読み:チャーハン/中国読み:チャオ・ファン
郷土:揚州

各国に根付く炒飯。アレンジしやすさも魅力

発祥は6世紀末から7世紀はじめの隋朝。政治家の楊素が卵で炒めた碎金飯を好んでいた記録があります。基本は白飯と卵、様々な食材を油で炒めたもの。世界各国に同様の料理があり、日本ではラーメン店から高級中華料理店、冷凍食品でもお馴染み。炒飯は最初に卵に火を入れて、その後にご飯を投入します。ちなみに卵とご飯を一緒に炒めると"焼き飯"になります。日本では塩、胡椒、醤油で味を整えるのが一般的。カレー粉を入れてドライカレー風にしたり、ニョクマムなどを加え、東南アジア風にするなどアレンジも自由。ちなみに、あんかけ炒飯は福建炒飯と呼ばれていますが、福建省の料理ではなく、香港発祥。

★油淋鶏

日本読み:ユーリンチー/中国読み:ユーリンジー
郷土:?

中国では衣なしが主流。鶏に油をかける料理

パリっとした鶏肉と香しいソースが食欲をそそる一品。日本でも中華料理店や定食で人気の料理です。「かける」という意味の「淋」が表すように、鶏に油をかけるというのが本来の意味。日本では片栗粉を使った衣を付けて揚げて仕上げますが、本来は油をかけながら鶏肉を仕上げるため、衣は付きません。そこに、生姜、にんにくと甘い酢醤油、刻んだ長ネギを合わせたタレを載せます。日本では、油淋鶏ではなく、「鶏の唐揚げ香味ソース」などと表示されることも多いようです。日本では衣付きの油淋鶏が主流ですが、衣なしの油淋鶏もあり、かなり味も食感も異なります。ご飯との相性も抜群な親しみやすい料理です。

★青椒肉絲

日本読み:チンジャオロース/中国読み:チンジャオロース
郷土:北京

ピーマン、ししとうと豚肉の細切りが条件

使用するのはピーマンやししとうなどの青椒(チンジャオ)と豚肉のみ。日本ではたけのこなどを入れることがありますが、本場では「青椒」という言葉が表す、辛くない青唐辛子=ピーマン、ししとうのみを使います。また、「絲(スー)」は細切りを指すため、細くなくては「青椒肉絲」とは言えません。本来、中国の素朴な作り方では老酒と塩のみを使いますが、日本では、醤油、生姜、ニンニクやオイスターソースで甘辛めに味付けをします。また、片栗粉で、トロミを付けるのも特徴。日本では牛肉を使われることも多いですが、これは本来のカタチではありません。世界各国で愛されている中華料理です。

棒棒鶏

日本読み:バンバンジー/中国読み:バンバンジー
郷土:四川省

中国では唐辛子主体。日本ではごまベース

さっぱりとした味わいが人気の四川を代表する料理。街場の中華料理店から高級店まで、幅広い店舗で見られるメニューです。焼いた鶏肉を棒で叩いてやわらかくしたことから、「棒」という漢字が使われています。日本では鶏肉ときゅうりにごまベースのソースが一般的ですが、中国では鶏肉のみを唐辛子の辛みを利かせたソースで食べるのが主流。他の四川料理同様、陳建民氏によって日本人向けにアレンジされたものが、現在のスタンダードになっています。本来の調理法では鶏肉は手で割くものと言われています。味の決め手であるごまのソースは店舗によって独自の製法があり、その違いを知るのも楽しみの一つ。

★担々麺

日本読み:タンタンメン/中国読み:タンタンミエン
郷土:四川省

担いで売られていた庶民のファーストフード

四川省成都市発祥の辛みを効かせたひき肉やザーサイの細切りなどを載せた麺料理。料理名の担という文字が示す通り、起源は桶を"担いで"売り歩いていたました。そのため、現在見られるようなスープありのものではなく、挽肉と麺のみの汁無しが主流でした。味付けは、ラー油や花椒などの香辛料、ナッツの醤、醤油、酢など。そこに甜麺醤で味付けした挽肉を乗せます。この料理も陳建民氏によって日本向けに改良されています。そばやうどんなどの汁ありの麺文化に親しんでいた日本人に合わせて、汁有りにして売り出したことで広く普及しました。スープありの担々麺は日本発祥という説もあるようです。

Text:船山壮太(uerb)
Illustration:村林タカノブ

※こちらの記事は2014年7月20日発行『メトロミニッツ』No.141に掲載された情報です。

更新: 2016年11月7日

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