今、全力でおすすめしたい作品集

|“食べる”を見つめる映画|
“食べる”を見つめる映画ガイド①

日々の食べることが楽しくなったり、食べることへの意識が変わったり、誰かと食べる時間が幸せに思えてきたり…。観ればそんなふうに暮らしに良い影響を与えてくれる映画を、食に携わる人、映画に携わる人、それぞれの目線から選んでいただきました。

シェフ 三ツ星フードトラック始めました(2014年/アメリカ)

c 2014 Sous Chef, LLC. All Rights Reserved.

『アイアンマン』シリーズの監督としても知られる主演のジョン・ファヴローが人生と料理をテーマに描いた、作り上げた笑いあり、涙ありの心温まるロードムービー。ロサンゼルスにある一流レストランの総料理長カール・キャスパーは、華々しい活躍で富と名声を得ていた。しかしある料理批評ブロガーとの対立で、長年守ってきた店を去ることに…。失意のなかにいたカールは、元妻のイネズと10歳になるひとり息子のパーシーとのマイアミ旅行に出かける。そこで出合った絶品のキューバサンドイッチに感動したカールは、心機一転、フードトラックでサンドイッチの移動販売を決意する!こうして父と息子の2人でマイアミからロサンゼルスまで、フードトラック一台で横断する生活が始まるのだが… ※ソニーピクチャーズからDVD(3,800円)、Blu-ray(4,743円)発売中。

1979年に公開され大ヒットした映画『クレイマー、クレイマー』のような父子の愛の物語です。国や性別は違えども、同じ料理人として共感できることも多く、仕事面においても、子育て面においても頑張ろう、と改めて感じることができました。この映画の主人公のように美味しいものを作るための創意工夫の気持ちや情熱を絶やさずにずっと持ち続けていきたいです。

★野村友里さんもオススメ!
料理とは、なんて人間臭くてそして愛情表現のコミュニケーションツールになるのだろう、と改めて感じます。複雑になっていく世の中も、ややこしい人間関係も、一気に拡散する情報システムも、結局は人の胃袋と心を掴む美味しい料理が解決し、シンプルな喜びをもたらしてくれる。それが事実なんだと思わせてくれます。

★阿部柚さんもオススメ!
自分の情熱を貫いたゆえ職を失った主人公。ここまで自分の思いを社会にぶつける勇気を持つ人がいるだろうかと考えさせられました。自分が美味しいと思った土地のものを、その土地で移動販売する。そのスピリットに、私たちが運営するファーマーズマーケットに出店しているフードカートの方たちと似たものを感じました。

 

料理人ガストン・アクリオ美食を超えたおいしい革命(2014年/ペルー、アメリカ)

c2014 Chiwake Films, All Rights Reserved.

「料理で国を変えた」とまで言われるペルーのカリスマシェフ、ガストン・アクリオの素顔に迫るドキュメンタリー。彼は料理人として成功を収めただけでなく、貧しい子どもでも学ぶことができる料理学校を設立し、食材生産者を救済するなど「母国の食文化を世界に発信する」という夢に向けて今も活動している。彼と親交のある世界の一流シェフや食材生産者、彼が設立した料理学校の生徒らが登場し、アクリオの情熱を紐解いていく。

過去でも、誰かの希望的憶測の中でもなく、今現在、南米という地で活動し続けている料理人であり、国民的ヒーローでもあるガストンのドキュメントということにとても意味を感じます。私自身、微力ながらも考えていること、思っていることを形にしようと行動していることについて勇気をもらいました。

ディナーラッシュ(2000年/アメリカ)

舞台はニューヨークの人気イタリアンレストラン。オーナーの息子であるシェフが奇抜なメニューを提供しはじめてから、父子はいつもケンカばかりだ。ある夜、目が回るほど忙しい“ ディナーラッシュ”に、店の利権を狙うマフィアがやってくる。さらに、金銭トラブルを抱える副料理長、シェフに気のある辛口料理評論家、クイズ王のバーテンダー、騒ぐクレーマー…と一癖ある面々のドラマが交錯して、事態は思わぬ方向に転がっていく。

厨房の中のスピード感と高揚感がリアルに映し出され、壁を挟んだ客席の別世界の様子との対比が見事に表現されています。美味しい食は欲を刺激し、そして一つのテーブルを囲む人には様々な人間ドラマがある。伝統を重んじ守る味を大事にする料理人と、新しい進化を遂げていきたい料理人との対比。そして生と性を感じる食と死。全て一夜のレストランで繰り広げられる、何度みても飽きのこない名作。

オススメ人:料理家・フードスタイリストtottoさん

2007年にメイクアップアーティストから料理家へ転身。イベント企画・運営、料理講師、フードコーディネイター、スタイリスト、食育インストラクターとして活動。tottorante名義でイベントへの出店やケータリングも行う。子どもたちによる一日限定レストラン「こどもレストラン」のワークショップなど食育活動にも力を注いでいる。

オススメ人:フードディレクター野村友里さん

フードクリエイティヴ・チーム「eatrip」を主宰。2012年には原宿に「restaurant eatrip」をオープン。第33回モントリオール世界映画祭に正式出品された映画『eatrip』(2009年)で初監督を経験し、美味しそうな料理が出てくると「どんなふうに撮ったんだろう?」という視点が生まれたとか。

マーサの幸せレシピ(2001年/ドイツ)

cPandora Film Produktion GmbH/Prisma Film/T&C Film/Palomar/DVD発売元:ショウゲート/販売元:アミューズソフト

マーサは天才的な味覚を持つ一流シェフ。けれど、完璧なのは仕事だけ。プライベートでは食事を共にする相手さえいない寂しい毎日だ。そんな彼女に2つの転機が訪れる。1つめは、シングルマザーの姉が事故で亡くなり、その娘を引き取ることになったこと。2つめは、陽気なイタリア人シェフ・マリオが店にやってきたこと。2人とのふれあいを通して、マーサは自分の人生に足りなかった“愛情”という大切なスパイスに気づいていく。

イタリア人シェフのマリオがマーサの家のキッチンを使って豪快に料理して、リビングの床に座って食べるというシーンがあります。マーサと一緒に住んでいる姪はそれまで母親を失ったショックで食事をしたがらなかったのですが、マリオから食の楽しさを教わり、自分から食べるようになります。何をどう食べるかに神経質にこだわるより、誰かと笑いながら食べることが心身の栄養になるんじゃないかという気持ちにさせられる映画です。

ターシャからの贈りもの 魔法の時間のつくり方(2006年/日本)

アメリカでもっとも愛される絵本作家であり、園芸家でもあるターシャ・テューダーは、1950年代なかばにバーモント州の小さな町はずれで自給自足の一人暮らしをはじめた。絵本のモデルでもある美しい庭や、孫夫婦の手を借りながら庭の世話をする91歳の彼女の暮らし、家族と過ごす誕生パーティやクリスマスなど。アーリーアメリカの「古き良き伝統」の中に生きる彼女を見つめることで、待つこと、準備することの大切さが見えてくる。

クリスマスや家族の誕生日をあらゆる手づくりアイデアで演出する様子に感動しながら何度も見返しています。子どもにとっては、母や祖母が自分だけのために手づくりしてくれた食事やお菓子が一番のごちそうで、それが幸せな思い出として記憶に刻まれていくことが、この作品を見ているとよくわかります。

ホノカアボーイ(2009年/日本)

c2009 FUJITELEVISIONDENTSU/ROBOT

主演の岡田将生が扮するのは恋人にフラれ、大学を休学したレオ。ひょんなことからハワイ島(ビッグ・アイランド)の小さな町ホノカアの映画技師として働くことになり、そこで出会った人たちとの交流や人間模様が描かれる。倍賞千恵子が扮する偏屈なおばさん・ビーさんが、レオに振る舞うハワイの家庭料理も大きな見どころ。マラサダと呼ばれる揚げドーナツをレオが頬張るシーンはちょっとした話題にもなりました。※ポニーキャニオンよりDVD(5,076円)発売中。

個人的にとても大好きな作品。ビーさんが作るご飯のシーンを観てからというもの「食事をするときは作ってくれた人のことを必ず頭に浮かべよう」と思うようになり、今ではどこで食事をしていても「この野菜はどこの産地のものだろう、誰が作ったのだろう」という疑問が自然と頭に浮かぶようになりました。

コクリコ坂から(2011年/日本)

c2011 高橋千鶴・佐山哲郎GNDHDDT

2011年公開のスタジオジブリ作品。企画と脚本は宮崎駿が担当。昭和38年、東京オリンピックの開催を目前に控える日本を舞台に、長澤まさみが声を担当した16歳の少女・海と、岡田准一が声を担当した17歳の少年・俊の愛と友情のドラマを描いている。横浜で由緒ある建物“カルチェラタン”を取り壊すべきか、保存すべきかの学園闘争が巻き起こる最中に出会い、心を通わせるようになる。古き良き時代の日本の姿を描いた名作。※ウォルト・ディズニー・スタジオ・ジャパンよりDVD(4,700円)発売中

この映画で描かれる食卓シーンを観ると、自分の幼少時代を思い出します。手を合わせて「いただきます」「ごちそうさま」を言うことうやお箸の持ち方やお茶碗の持ち方を教わったのは、間違いなく自分の家族のいる食卓でした。それこそがまぎれもなく私の「食べる」行為の原点だったと思えます。アニメの世界だからこそ、余計に料理の音や食事の音が印象的で、自炊をしたくなる映画でもあります。

オススメ人:NORAH編集部 阿部柚さん

国連大学前で毎週土日開催している青山ファーマーズマーケットでは、運営事務局に立つ傍ら、世界中のミネラルウォーターを集めたWATERBARに立っている。農業を中心に、様々な視点で都市での野良仕事にフォーカスしたFarmer's Marketの雑誌『NORAH』は、季節に一度発行している。

オススメ人:編集者小川奈緒さん

フリーの編集者として多くの雑誌やカタログ、書籍の制作に携わる。2010年、初のエッセイ集『Table Talk』を出版。以降、書籍の編集と執筆を手がけ、最新刊『おしゃれと人生。』(筑摩書房)を今冬発売。ホームページ「Table Talk(www.tabletalk.cc)」上で、日々綴っているブログにも熱心なファンが多い。

Text:大高志帆、冨手公嘉、松元典子、メトロミニッツ編集部

※こちらの記事は2015年10月20日発行『メトロミニッツ』No.156掲載された情報です

更新: 2016年10月23日

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