|オリーブオイルと一緒に暮らそう[3]|
オリーブオイルテイスターに学ぶ!
今、世界中に広がっている「良質なオリーブオイル」とは、何?

日本では縄文時代真っ只中の頃、地球の裏側、クレタ、キプロス、シリアの辺りではすでにオリーブオイルが盛んに生産されていたという記録が残っています。それから、およそ6000年を経て、今、世界中でオリーブオイルの品質が史上最高…らしい。長友姫世さんに話をお聞きしました。

長友姫世さんのお仕事「オリーブオイルテイスターとは?」

オリーブオイルの鑑定士。各国ごとに政府が認定した鑑定士がいますが、トレーニングプログラムも検査項目もIOC加盟国であれば共通。政府機関やオイル製造会社からオファーを受け、オリーブオイルの官能検査をします。また、生産者やオイル業者に対して、良質なオリーブオイルを造るためのコンサルティング業務を行うことも。鑑定の際には、主に「香り」「苦み」「辛み」を確認。特に、「何の香りか?」から「何が原因で悪くなったのか?」までを嗅ぎ分ける、嗅覚がカギを握ります。

=長友姫世さん=
イタリア政府公認オリーブオイルテイスター。日 本オリーブオイルテイスター協会会長、世界で オリーブオイルコンテストの審査員も務める。ま た、世界最古のオリーブオイル教育機関 「ONAOO」を召還して、講義も実施[日本オリーブオイルテイスター協会] http://www.oliveoiltaster.org/
https://www.facebook.com/oliveoiltaster

国際的に認められたオリーブオイルテイスター

話をお聞きしたのは、長友姫世さん。日本人では珍しい、イタリア政府公認のオリーブオイルテイスターとしてお仕事をされているのだと言います。「残念ながら日本は加盟していませんが、国連の後援の下で設立された『国際オリーブ理事会』(IOC)がオリーブオイルの品質の等級について定めています。

いわゆる、エクストラヴァージンオイル、ヴァージンオイルなどという格付けです。そして各国には、その規定に従って自国生産のオイルの品質を正しく評価する、オリーブオイルテイスターという専門職があるのです」。IOCの加盟国は、オリーブとオリーブオイルを生産する44カ国。

地中海諸国をはじめとする加盟国だけで、世界のオリーブオイル生産量の98%を占めるという巨大組織で、ここでの決め事がグローバルスタンダードです。オリーブオイルテイスターが生まれた背景は、化学分析の限界。これまで、オリーブオイルの品質は化学分析によって判断していましたが、数値的に良い結果のオイルでも、口にし、香りを嗅いでみると「なんだか油っぽい…」「なんか変なニオイがする…」といったことがしばしばあったそう。

そこで化学分析に加え、人による官能検査も導入されることが国際的に決められたのです。とはいえ、官能検査は人の感覚。分析結果は個人差のないよう、できるだけ統一されていなければなりません。よって、オリーブオイルテイスターになるには世界共通の育成プログラムに従って、嗅覚と味覚を研ぎ澄ますための厳しいトレーニングを積む必要があります。

「実は、人と、オリーブオイルの長い歴史の中で、『品質』についての取り組みが本格的に始まったのはここ20年ほどのこと。搾油方法も、伝統的な石臼から機械化されてきたのが80年代半ば頃で、今では、生産工程でオリーブに欠陥を極力生じさせないよう、最新鋭の機械を積極的に使おうという潮流があります。

オリーブオイルテイスターという人材の育成が始まったのも91年。しかし、それ以降は、研究と開発がどんどん進み、オリーブオイルの品質は世界全体で底上げされ、美味しく進化を遂げました」。ここ20年ほどの間で、国際的に「良質なオリーブオイルとは?」の規定が定められたのです

「良質なオリーブオイル」とは?

「例えば、鼻からはさわやかな草の香りを、口の中からは辛みや苦みをしっかりと感じられるものは良いオイルだと思います。こういった風味があるということは、ポリフェノールなどの身体に嬉しい微量成分が豊富に含まれているという証拠です」。

辛さや苦さは一見、良くない要素と思われがちですが、それらがしっかりあってこそ、本物のオリーブオイル。辛み、苦みは新鮮なオリーブらしい味わいと言え、時間が経つと少なくなってきてしまいます。

また、抗酸化作用のあるビタミンAとEを含むオリーブオイルは、レモンなどビタミンCを多く含む食品とともに摂れば、「ビタミンACE」という相乗効果を生み出し、免疫力がアップ。がん、老化の抑制に一役買ってくれる可能性があります。

「しかし、いかに良質なオイルでも、時間が経つにつれ劣化します。例えば太陽の光を常に浴びているオイルは劣化も早まりがち。お店に行った際は、そちらにも注目すると良いですね」。他にも買う時に比較的に確認しやすいことは、そのオイルが〝単一品種?か〝ブレンド?なのかということ。

単一品種とは1つのオリーブ品種のみで造られているオイルのことで、それぞれの個性が明確。一方、品種をブレンドすることで新たに生み出される〝全体のバランスが優れたオイル?は生産者の腕の見せ所です。どちらが良いということはありませんが、最近では単一でもブレンドでも、バランスのとれたオイルの評価が上がってきています。

オリーブオイルは、オイルとは言え、造り方は果実を絞るだけ。だからこそ、欠陥がなく、素材本来の香り高さが純粋に抽出されていて、瓶詰めしてもその味わいをきちんと保持できているものが、「良質なオリーブオイル」と呼ばれるのです。

これがプロのテイスティング表

上のシートが、オリーブオイルテイスターが官能検査を行う際に記入する、テイスティング表(通称:プロフィールシート)。世界44カ国が加盟している“国際オリーブ理事会(IOC)”が作っているもので、この内容も世界共通。大きく分けて、“ネガティブな項目”と“ポジティブな項目”とに分かれ、最初にネガティブ、次にポジティブという順で評価をしていきます。1種類のオリーブオイルに対して、8~12人のテイスターが評価します。各項目に対して0~10の段階があり、各々が感じた度合いを記入。最終的にそれらの中央値を算出し、その値でオイルの品質を判断します。

?<主なネガティブ項目>

ここではオリーブの質を下げる主な要因をチェックします。例えば 「Fusty/muddy sediment」は「嫌気性発酵/泥状沈殿物」と言い、様々な要因 によって嫌気性発酵が進んで質が悪くなってしまったオイルのこと。また 「Rancid」は「酸敗」を意味し、酸化が進んでしまったオイルを意味します。 「Frostbitten olives(wet wood)」とは「凍害果(湿った木)」という意味で、霜に よる損傷を受けたオリーブの実から造られたオイルのこと。オリーブを凍ら せることはあまり良いことではないことがわかります。そして驚くべきは、オ リーブオイルテイスターはこれらの要因を全て臭いだけで判断するというこ と。ネガティブ要因を持つにおいのデータが全て脳に入っているのです。

?<その他のネガティブ項目>

ここには、他にチェックすべきネガティブ項目が挙げられています。例えば「Metallic」とは「金属」、つまり製造や貯蔵の工程で長時間金属と接触したオイルが持つ風味で、これもネガティブな要因として考えられています。「Hay」は「乾燥果実」という意味で、乾き切ったオリーブから造られたオイルが持つ風味です。他には、オリーブオイルの生産者にとっての大敵「オリーブミバエ」を意味する「Grubby」など。オリーブの実に卵を産みつけ、幼虫は実を食べて育つのですが、この食べられた実や幼虫がいるオイルが持つ臭いです。長友さん曰く、このオイルに出合った時は、虫の姿をイメージしてしまい、非常に気持ち悪くなるとのこと。

?<ポジティブ項目>

こちらが、オリーブオイルのポジティブな部分を評価する項目となります。上記までのネガティブ項目に比べて要素が3つと、非常にシンプル。「Fruity」は新鮮なオリーブから造られたオイルが持つ、爽やかな緑を感じさせるような香り高さかを判断します。「Bitter」「Pungent」はそれぞれ「苦み」「辛み」の意味。どちらも良いオイルには必須な要素。なお、テイスターはこの「辛み」と「苦み」の項目だけで判断します。



【POINT!!】
良質なオリーブオイルに必要なのは、

さわやかな緑の香りと、確かな辛みと苦み

【長友さんセレクト】絶対に味わってほしいオリーブオイル!

【チェトローネ・インテンソ】
原産国:イタリア
品種:イトラーナ
香り:中程度に熟したトマトの香りを豊富に持ち、青リンゴやバジル、ミント、ほのかにアー ティチョークも感じさせる

辛みがしっかりとあり、野菜のスープ、魚のカルパッ チョ、赤身肉のソテーなどとの相性が良い
[問]サンヨーエンタープライズ
電話:078・302・5641

【ツイ】
原産国:クロアチア
品種:チュルナ
香り:アーティチョークや爽やかな草の香りに加えて、ミントやセージといったハーブ類など、様々な香りを合わせ持つ

しっかりとした苦み辛みで肉料理との相性も抜群。グリルした野菜や豆類のスープともよく合う
[問]おいしいクロアチア
電話:080・9660・0167

【イリニ・プロマリウ】
原産国:ギリシャ
品種:コロヴィ
香り:刈りたての草や、青リンゴ、青いバナナといったフルーツ系の香り。そしてユーカリや爽やかなハーブの清涼感を感じさせる

香り、辛み、苦みのバランスが絶妙。サラダや魚料理に合わせると、その持ち味を楽しめる
[問]エスティア日本
電話:0724249166

Text 和泉真(remix-inc.)

※こちらの記事は2014年6月20日発行『メトロミニッツ』No.140掲載された情報です。

更新: 2016年11月10日

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