エレガントでロマンのあるラム料理

|羊肉の饗宴 Banquet of Sheep’s Meat[1]|

食べる人の好みに応じて焼き加減を変える牛肉とは違い、仔羊を最も美味しく食べるには何と言ってもロゼ色です。美しいロゼ色のためには、焼きの技術がカギを握ります。肉質は至って柔らかく、上品な甘み、繊細な香りを持つ仔羊は、表現力が豊かなお肉。だからこそ、比較的どんな料理にも合いやすい牛肉よりも、料理人の発想力やセンスが問われるのではないでしょうか。フランス料理では、最も格式の高い食材の1つにアニョー(仔羊)があるそうですが、何だかわかる気がしませんか?さて、未年に入って1号めのメトロミニッツは、尊くも魅惑的な羊肉料理の特集です。

Photo:松園多聞/Chef:二戸浩二(FUORICLASSE)

世界の国々とヒツジ

世界的に見れば、牛や豚よりも広範囲で食されている、羊肉。またイースター他、様々な祝祭や謝肉祭で供され、宗教上のシンボルとしても貢献してきてくれました。家畜としての付き合いもどの動物よりも長く、まずは簡単に、世界の国々とヒトとヒツジの関係を振り返ってみましょう。

[Guide01]:家畜としてのヒツジ概要

品種

ヒツジは家畜の中でもひときわ環境適応能力が高いとされ、標高のある山岳地帯や高原、海岸、草原、そして砂漠地帯まで、様々な風土で飼育することができます。そして、各地で、それぞれの地域に適した品種が発達。今、世界には1000余りの品種のヒツジが存在しています(野生など、家畜とされていないものも含む)。また、品種ごとに、毛の量が多い・毛質が良いなどの理由で毛用として、体が大きくて肉がたくさん得られるために肉用としてなど、ヒトの用途による分類分けをされることも。現在、日本で飼育している8割は肉用のサフォーク種。早熟早肥で産肉性に富み、脂肪が少なく良質の赤身肉が得ることができる品種です。肉質が良く"肉用羊の王"との異名を持つのは、サウスダウン種。イギリス原産で、丘陵地帯で育つため、強健な体つきです。"メリノウール"でお馴染みの毛用品種のメリノ種はスペイン原産で、その後、世界各地に渡って様々な改良されています。中でもフランスのランブイエ・メリノは、メリノ種の中で最も体が大きく、肉質の良さが認められて肉用種になりました。

羊肉の分類

肉用の羊肉は、ラムとマトンに大別されます。また、その中間の肉をホゲットと呼ぶことあったり、まだ母乳以外は口にしていないものは乳飲み仔羊などと呼ばれることも。細分化された呼び名は他にもたくさんありますが、その定義は国によって様々。およその分類は下の表の通りです。ラムは柔らかい肉質で、特に、西洋諸国では広く愛されています。例えば、フランスではラムは食肉の最高食材ですが、マトンはほぼ食べません。マトンは、中国が世界最大の生産地ですが、中央アジア、中東、北アフリカでもよく食べられています。マトンには特有の香りがありますが、それは飼料として食べた草に要因が。主に脂肪部分が香りを放つ元となります。ちなみに、マトンは赤身肉が主体。脂質は筋肉間に蓄積されるため、牛肉の霜降りのような状態にはなりにくいとされています。

※羊肉の分類
ラム:生後1年未満の仔羊肉
ホゲット:マトンのうち1年以上2年未満の羊肉
マトン:生後1年以上の羊肉

家畜としての歩み

【野生ヒツジ(ウリアル)】体が大きい/基本的に大きな角を持つ(種類によってはないものも)/尻尾は短い/毛は粗毛(ヘアー)で、皮膚に近い部分に柔らかい下毛(アンダーコート)がある。家畜は体全体が柔らかい毛で覆われるよう改良。【家畜ヒツジ】体は小型/角が縮小(多くのオスで完全にないわけではない)/毛がふかふかに/ヒツジは生まれた時には犬のように長い尾を持つが、生後1週間ほどで切り落とす。進化の過程で退化し、上手く動かせなくなったため

ヒツジは、牧草地作りの名人。まず野山にヒツジを放すと、草が食べ尽くされます。そこに牧草の種を蒔き、さらにその上を爪が2つに分かれた蹄のヒツジたちが適度に踏みつけると、肥沃な牧草地がもたらされるそうです。そんなヒツジは、ヒトに家畜化された初めての動物との説が有力。約1万年前、古代メソポタミアで放牧が始まったとされ(やがて牧羊犬のために犬も飼うように)、原種は野生ヒツジの仲間たち。インド周辺に生息するウリアル、中央アジアのアルガリ、中近東に多いアジアムフロン、地中海エリアのヨーロッパムフロンなどと言われています。

[Guide02]ヒツジを飼育している地域

●羊飼育地域:ヒツジは、ヒトの居住する地域に合わせて広く生息しています。ソマリアやスーダンなどの砂漠気候の国々から、大規模な牧羊家は、南極大陸に近いアルゼンチン南部のパタゴニアや北極に近いアイスランドのフェロー諸島にもいます

ここで各国料理の話をさせていただけば、イギリスではミントやケイパー、モロッコではレモンやオリーブ、スウェーデンではディルというように、世界的に見ると、ラム肉はその土地に合った様々なハーブや調味料を用いた料理で食べられていることが多いようです。また、中近東諸国や北米では、総じて串刺しにして焼く、丸焼きにして焼くなど、シンプルな料理が主流。マトン肉は、主に煮込み料理になります。チュニジアでは香辛料や果物と一緒に煮込み、イギリスにおいてアイリッシュ・シチューなど、マトン肉のシチューは一般的に身近に親しまれています。

[Guide03]ヒツジの頭数が多い国ランキング

?FAO統計データベース(2012年)より
1位 中国/1億8700万頭
2位 インド/7,500万頭
3位 オーストラリア/7,472万1,551頭
4位 イラン/4,875万頭
5位 ナイジェリア/3,850万頭
6位 イギリス/3,221万5,000頭
7位 ニュージーランド/3,126万2,715頭
8位 パキスタン/2,840万頭2,548万
9位 エチオピア/9,204頭2,519万
10位 アルジェリア/4,105頭

※ランク外 日本/1万2800頭

アジアには世界の1/3のヒツジが生息しますが、中国の北部および西部、イラン、イラク、カザフスタン、パキスタンなどに特に多い。オーストラリアとニュージーランドは、人口よりもヒツジ頭数の方が多い国々。アフリカ大陸では、遊牧、半遊牧、移動放牧で飼っています。ヨーロッパは、東西を合わせてようやくオーストラリアと同じくらいの頭数だそう。南米には、北米と中央アメリカのヒツジの総数の5倍以上がいます。

[食肉のミニ知識]部位

■ネック 首周りの部位。煮込み料理に最適
■ショルダー 肩の部分で、流通量も多い。ジンギスカン、炒め物に
■リブ 肩ロース。適度な脂肪で、ステーキ、ジンギスカンに
■ラック 骨付きロース、フレンチラック、ラムチョップはこの部分
■レッグ もも肉。赤身で、煮ても焼いても使用範囲が広い
■フォアシャンク 前足のすね部分。煮こみ料理に最適
■ブレスト&フランク むね肉、ばら肉。一部はスペアリブとなる

[食肉のミニ知識]栄養

<食肉100gあたりのカルニチン含有量>
マトン208.9㎎/ラム80㎎/牛肉59.8㎎/豚肉35㎎/鶏肉~9.1㎎

細胞内の脂肪を燃やす効果が期待されるL-カルニチンが、特に、マトンに豊富に含まれています(上の数値は、参考:ニュージーランド食肉研究所 調べ)

<食肉100gあたりのコレステロール値>
羊肉50㎎
/魚肉50㎎/牛肉59㎎/豚肉69㎎/鶏肉110㎎

羊肉は、コレステロール含有量が魚レベルに少ないばかりか、悪玉コレステロールを減らす効果が期待できる不飽和脂肪酸が多く含まれています

<食肉の脂肪の融点>
羊肉44℃
/牛肉40℃/鶏肉30℃/豚肉28℃/魚肉20℃

人の体温より脂肪の融点が高いため、体温で溶けにくい。よって、体に入っても吸収されにくい脂とされています。ちなみに、羊肉はビタミンB1、鉄分、亜鉛も多く含有

Text:メトロミニッツ編集部
Illustration:遠山敦

※こちらの記事は2015年2月20日発行『メトロミニッツ』No.147掲載された情報です。

更新: 2016年10月22日

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