|TOKYO BEERNIST[2]|
今、ビールが最も面白い。日本と世界のビールの現状

ビールがブームと言える今、その盛り上がりの起点はどこにあるのでしょうか? どうやらそれは世界的な現象でもあるようなのです。日本のビールの歴史を紐解きながら、世界的なビールの動きを捉え、ビアニスタが増殖している要因を探ります。

日本のビールの歴史と、現在の活況まで

今となっては日本人にとって、最も馴染みの深いお酒とも言えるビール。その歴史を遡ってみると、本格的にビール造りが始まったのは明治の初めのころでした。日本で初めて商業的に成功を収めたと言われる「スプリング・バレー・ブルワリー」は、横浜の山手居留地に1870年創設。その後、100社を超えるビールメーカーが鎬を削った時期もありましたが、1901年のビール課税の影響で一気に減り、統廃合を経て1950年には現在の大手4社体制へ。戦後の経済発展と共に大手4社はビールの出荷量をぐんぐん伸ばし、まさに「とりあえずビール!」の現状ができあがります。そして、また転機のきっかけとなったのが1994年に細川内閣の規制緩和政策による酒税法改正。ビール免許を取得するために必要な最低製造量が年間2000キロリットルから、60キロリットルへと大幅に引き下げられました。日本にもマイクロブルワリーが多く立ち上がった、いわゆる「地ビール」の誕生です。

過去にもあった“地ビールブーム”

「〝第一次地ビールブーム?がここから始まるのですが、醸造所の数が300社以上にまで増え、マスコミにも取り上げられ、各地の地ビールが非常に話題になりました。しかし、よく〝癖がある?という表現がされますが、品質が伴っていないビールが多かったと言えます。また、今のように都内で飲める場所も少なく、リピートしたくても、再びその地に赴かなければならない。そのため、なかなか定着せず、2000年頃に終息し、廃業してしまうメーカーも数多くありました」とは、日本地ビール協会理事長の山本祐輔さん。300ほどあった醸造所も一時期は200ほどに減りましたが、現在また勢いを盛り返して、その数は242にも増え、第二次のブームと言える状況になっていますが、第一次地ビールブームとはどのような違いがあるのでしょうか? 「なんと言っても品質の向上ですね。ビールがハッキリ言って美味しくなった。これは、地ビール解禁から21年経過して、ブルワーの不断の積み重ねによる技術の向上が大きいです。また、2000年代の初めから、ブルワー同士が交流が活発になり、情報を共有するようになりました。原材料の選び方、醸造方法、パッケージングについての情報が一気に広まりました。さらに、地ビールを飲めるお店が増えたというのも大きな要因。今でも毎月のようにお店がオープンしている状況で、店員さんがお客さんにビールのストーリー、造り手の話を説明をしながら飲む。これが普及のために非常に良かった」。

現在のクラフトビールブームとは?

また、「酔うためのお酒」ではなく、趣味性の高い飲み物としてビールを嗜む、そんな付き合い方をする人が増えてきていると言います。大手4大メーカーのプレミアムビールと親しみ、高品質なビールに親しんできた土壌があったからかもしれません。「特に若い人たちは量より質を求めているような印象があります。また、ビールと言えば男性が飲むお酒というイメージが強かったかもしれませんが、今は女性がブームを牽引しているとも言えます」。その要因は地ビールが〝クラフトビール?と呼び名を変えたことが功を奏しているとか。この流れはビールのトレンドの発信地である、アメリカと同じ。「大手メーカーも『クラフトビール』という言葉を使い出したことで話題になったことは大きいですね。コンビニやスーパーに多彩なビールが並ぶようになりました。しかしながら、ビール業界は設備産業と言われているのですが、以前に比べて安価に醸造設備が導入できるようになり、敷居が低くなっています。ややもすれば安易にビール造りに参入する会社が増え、品質に不安が残るビールが出てきたのも事実です」と、警鐘を鳴らす山本さん。

ビールはアルコール度数が他の醸造酒に比べて低く、そのため品質管理が難しい飲み物であると言われています。第一次地ビールブームの二の舞にならないためにも、造り手も、それを運び、提供する伝え手も、飲み手も、さらなる成熟が必要なのかもしれません。最後に、今後のビール業界の展望を聞いてみると「今、このビールブームは首都圏だけのもので、ようやく地方に飛び火しはじめた状況です。せめて県庁所在地に2?3軒、こだわりのビールを提供するお店ができてほしい。そして、もうひとつは輸出。香港や台湾などアジアでビールがブームになっていますから、日本から色んなビールがもっと輸出される流れができるといいですね。日本のビールの魅力がさらに世界中に広がっていく、そんな未来が来ることを願っています」

Text川野亮(クラフトビール東京)
※こちらの記事は2016年3月20日発行『メトロミニッツ』No.161に掲載された情報です

更新: 2016年10月18日

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