心と体を温める、上質な時間

|東京モダンおでんキュイジーヌ[6]|
時代ごとに活躍の場が広がった。
東京の暮らしとおでん

その時代の食文化の変遷に合わせながら、形を変え、活躍の場所を変え、人々の暮らしに寄り添ってきたおでん。現在の形が作られた明治以降から、モダンおでんが登場した現在にかけても、その懐の深さで人々のお腹を満たし続けています。たかがおでんと侮るなかれ、震災や戦争を乗り越えた“おでんの歴史”をのぞいてみましょう。

東京のおでん年表


|明治 |
「呑喜」創業(1887年)。
現在のおでんの原型が作られる。




|大正|
浅草「お多福」創業(1915年)

麻布十番「福島屋」が蒲鉾屋として創業(1920年)
戦後おでん種の販売を開始する。

関東大震災(1923年)
関東の飲食店の崩壊により、東西の料理人の流出入が盛んになる。




|昭和|
『軍隊調理法』刊行(1937 年)
和食・洋食を含め当時のレシピを編纂。おでんの記載もあり、種にはがんもどき、こんにゃく、大根、里芋、ちくわぶが挙げられている。

「紀文」創業(1938年)

第二次世界大戦(1939年~1945年)

吉祥寺「塚田水産」創業(1950年)
家庭料理としておでんが定着しはじめる

セブン・イレブンが初めてコンビニおでんを販売(1979年)

西麻布「一根」オープン(1990年)
京風おでん懐石として一世を風靡

銀座「よしひろ」(1998年)
トマトおでんを開発




 

明治時代に確立した「酒場おでん」

種の幅が広がって
酒のつまみとして大成

屋台料理として親しまれてきたおでん。食の西洋化がすすむ明治の時代ではありますが、庶民の間ではおでんが爆発的なブームになったと言われています。首都となった東京は人口が急増、多くの人に手っ取り早く食べられる煮込みおでんが好まれたのです。その人気から屋台だけではなく、居酒屋でもおでんがメニューに並ぶようになります。明治20年に登場した「呑喜」では、「袋」を考案。油揚げの中に銀杏を入れたりするなどの工夫が。肉の使用や野菜の種類が増え食材が豊かになったこの時代、つまみとしてのおでんを各店こぞって研究したとか。

創業当時は屋台だったという「呑喜」。40年ほど前に新しい建物に改築しましたが、空間は変わっても、丸いおでん鍋を囲む賑やかさは当時のまま。右でご紹介した「袋」ですが、東京大学の目の前という場所柄、お腹を空かせた学生が多く、銀杏をゆっくり愉しむわけもなく…。それなら、と中身をすき焼き風に変えているのだとか

酒場おでんの定番おでん種

ダイコン

ちくわ

コンニャク

ハンペン

タマゴ

イワシのつみれ

あつまあげ

こぶ

昭和時代に広まった「家庭おでん」

タッチポイントが増えて
おでんがより生活に密着

屋台や居酒屋と外食シーンで食べられていたおでんが、家庭料理として食卓に上り始めたのは戦後のこと。練り物の価格が安定したこと、おでんの種を売る「おでん種屋」が町に増えたことにより、おでん種を買って自宅で作る環境が整ったためです。このころになると東京でもすっかり薄味の出汁が主流になっています。そして、1979年にセブン-イレブンがおでんの発売を開始。その他のチェーンもあとを追い、瞬く間にコンビニおでんは市民権を得ました。子どものおやつに、ひとり暮らしの晩ご飯のおかずにと、さらにおでんが人々の暮らしに入り込んできたのです。

夕ご飯の選択肢として、すっかり定着したおでん。家庭では、練り物を中心としたおでんが多く食べられていますが、それぞれ家によっても入れる具材が違うのも面白いところ。ご飯と一緒が基本のため、ソーセージなどおかず性の高い種が誕生しました

家庭おでんの定番おでん種

ロールキャベツ

ジャガイモ

ソーセージ

つくね

シュウマイ

牛ハラミ串

きんちゃく

平成時代に飛躍する 「モダンおでん」

まだまだ続ける進化 ネクストおでんはどうなる?

モダン化の兆しは1990年、従来の種とは一線を画した おでんを提供するお店「六根」が西麻布にオープンし ました(現在は閉店)。懐石風おでんと称し、おでん種を 一皿ずつ美しく盛り付け、種も「フカヒレ大根」「タラ の白子」など当時としてはオリジナリティあふれる品 が多く、空間つくりもおでん店とは思えないスタイ リッシュな設え。当時の世相とも相まって“口説ける おでん店”として人気店に。この「六根」と、後でご紹介 するトマトおでんの元祖「よしひろ」の登場により、お でんの種、出汁、提供スタイルに新解釈を加えた「モダ ンおでん」が増えていくのです。

今回の「モダンおでん」特集のどこかで登場するこの真っ白なおでん。取材陣も衝撃を受 けたおでんで、関東風? 関西風? というような議論では答えがでない、ニュータイプのお でんです。さて、問題。このおでんの色はどうやって出していると思いますか?

モダンおでんの定番おでん種

アスパラガス
昆布とかつおのやさしい出汁と、アスパラガスの甘味が実はマッチするんです。
□春?夏にかけて旬の時期に登場!

牛タン
オーダーを受けてから、出汁に投入して熱を加える。やわらかい食感はやみつきに。
□食べられるお店=「西麻布こんぶや」「おでん屋den」

カキ
寒い冬の時期、鍋物に欠かせないカキも、おでんの種に。上品な椀物のようにアレンジ。
□食べられるお店=「銀座よしひろ」「味のなかむら」など

トマト
そのまま噛みついても、崩して出汁と一緒にいただいても美味なモダンおでん代表格。
□本特集でご紹介するほとんどのお店でオンメニュー!

Text:辺戸名悟/河島マリア(GRINGO)、メトロミニッツ編集部
Illustration:村林タカノブ

※こちらの記事は2015年12月20日発行『メトロミニッツ』No.146掲載された情報です。

更新: 2016年11月1日

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