|EAT GOOD[1]|
365日、ふだんの食事が大切になるPart1

今月は、「EATGOOD」(イートグッド)という特集です。「EATGOOD」とは、例えるならば“道”のこと。その道は真っ直な1本道なので、迷子になることはありません。目的地はわからないけど、必ずどこかにたどりつくという確信があります。歩いていくと、いくつもの四季が過ぎていきますが、旬の美味しい野菜を毎日食べることができるので心も体もいつでも元気。また、道の途中で様々な人と出会い、つながりが生まれ、自分にとっての“良いもの”が何かが次第に明確になっていきます。もちろん雨の日も風の日もありますし、便利な乗り物もないのでひたすら歩くしかありませんが、「毎日、一歩ずつ歩いていたら、ここまで来ることができました。この先も自然体で進んでいきたいですね」と松浦清一郎さんは言います。あ、そうなんです。歩いている人とは、この前のページで三浦半島をめぐっていた、松浦さんと奥様の亜季さん。「EATGOOD」とは松浦さんの営む会社「エピエリ」のコンセプトであり、今月は、その言葉にヒントを得た特集を展開してみたいと思うのです。で、「EATGOOD」が何たるものかをこの目で確かめるため、松浦さんの1日に密着(5月6日)。三浦半島で農家さんをめぐった後、松浦さんは野菜ぎっしりの車を走らせ、東京の「麹町カフェ」へと向かいます。エピエリは「EATGOOD」(良いものを食べよう)という土壌の上に、「麹町カフェ」やその他の店々を育ててきました。

“良いもの”を東京へ届ける、松浦さんの日常~午前の部~

濃厚な黄身の味わいが特徴の青色卵「タフラン」、通常の1.5倍もの鉄分を含んだ赤色卵「アトムくん」など、品質の高い卵を販売中。

本日の三浦半島地方、天候は曇り、午後の降水確率は60%、美味しい食材と出合える確率は120%! 5月6日の朝9:30、メトロミニッツは松浦清一郎さんとともに「安田養鶏場」へやってきました。

【午前9:30】
「この辺りは海あり山あり、勾配のある複雑な地形なので、多彩な旬の食材を集めることができるんです」。そう話す、松浦清一郎さんは「麹町カフェ」をはじめ、東京でいくつかの飲食店を営む会社「エピエリ」の代表。それにも関わらず、日々、朝から三浦半島中をめぐり、自ら“本日の食材”を仕入れては東京の店まで届けています。「必ずと言っていいほど立ち寄っているのが、こだわりと情熱を持っている3つの農家さんです」とのことですが、果たしてどのような食材が見つかるのでしょう?この日(5月6日)、編集部は松浦さんの1日を追いかけてみました。「雨の日も雪の日も、こうして卵を洗っているんです」。到着するなり、松浦さんがそう教えてくれたこの場所は、元旦以外の364日、無休で営業する「安田養鶏場」。すぐ目の前では、養鶏場の皆さんが卵の洗浄やサイズ分けの作業中です。この直売所にはたくさんの卵が並んでおり、特に驚かされたのが薄らとした青色の美しい卵。聞けば、こちらは南米原産のアローカナという珍しい品種のものだそう。その他の卵も、親鳥の餌に鉄分や納豆菌といった独自の飼料を加えて栄養価を高めるなど、品質アップに余念がなく確かに“こだわりと情熱”がビンビン伝わってきます。さらに松浦さんの目的は、朝採れの卵だけではありません。ここでは約8000羽という鶏の排泄物を有機肥料として活用し、野菜も育てているのです。その数は、実に年間100種以上。この日は、マーブルビーツやグリーンエッグといった西洋野菜の他、春キャベツ、新玉ねぎなど旬の定番野菜をどっさり仕入れ、車に詰め込んでいました。「この辺りには30以上の直売所がありますが、次に向かう農家さんはダイコンやニンジンといった1年中、料理に欠かせない定番の野菜を特に美味しく育ているところなんですよ」松浦さんいわく、今の世の中、年中さまざまな野菜が手に入るものの、ハウスではなく露地栽培で育てた野菜の旬は驚くほど短いそう。

 

およそ6000坪という畑では、京都や加賀の伝統野菜をはじめとする国内外の多彩な品種が育つ。三浦半島名物のダイコンだけでも年間10種類というバリエーション。近年バーニャカウダが流行した影響で、個性派根菜の需要も高まっているとか。親子3世代で力を合わせ、30年以上も小売りを続けてきた成果が、多彩な形で実っているよう

安田養鶏場 農産物直売所
TEL:046・856・1694
住所:神奈川県横須賀市長坂4・18・17
営業時間:9:00~18:00/無休

現在で何代目なのか分からないほど歴史が深い。少なくとも江戸時代には先祖が三浦半島で農業を営んでいたそう。受け継いだ田畑を大切にしながら、新しい農法にも果敢に挑戦。特にメロンとスイカの栽培に力を入れており、夏には山のように店頭へ並ぶ

【午前10:20】
そんな露地栽培でも巧みに旬をコントロールしているのが次に向かった「加藤農園」です。加藤農園に到着すると、直売所のお隣の畑でニンジンを収穫中のおばあちゃんを発見。せっかくなので土から抜いたばかりのものを購入することにしました。時期外れの冬に種を蒔き、ビニールを被せるなどして丹念に育てたから、芯まで柔らかくて立夏の今も食べ頃なのだと言います。「ここ数日は快晴が続いたから、今日の野菜たちはひと際元気いっぱい」と、イキイキした野菜に囲まれて松浦さんも嬉しそうです。ニンジンの葉がピンと立っていることも、収穫量が天候によって左右されることも、当然のようでいて業者から野菜を買ってばかりだと忘れがちなことだと気づかされます。「そうですね。背伸びして、わざわざ高い有機野菜を取り寄せてもお客さまが喜ぶとは限りませんし、自分で味わってみて、本当に美味しいと思ったものを届けられたらと思っているだけなんです。三浦半島をめぐって食材を手に入れているのは、私にとっては自然体で普通のこと。これが安くて美味しい食材を手に入れる方法だからです」。そんな松浦さんの言葉を聞きながら、最後に訪れたのは「髙梨農場」でした。

露地栽培では冬が旬となるニンジンやダイコンだが、手間暇をかければ5月の収穫でも柔らかで身が詰まった食感に仕上がる。この農園では風変わりな品種は手に入りにくいものの、王道の野菜は安定して高品質なのだそう。今回の松浦さんは80本のニンジンをはじめ、ラディッシュ、ホウレンソウ、トマト、ナスなどを購入

加藤農園 直売場
TEL:046・888・3034
住所:神奈川県三浦市南下浦町上宮田2436
営業時間:10:00~18:00/無休

4500坪以上という広大な畑を持ちつつ、1992年からは地産地消を掲げ収穫物はすべて直売所のみで販売。どういった調理を行うのか購入者のことも考えながら、年間150種類以上もの品種を育てている。ご主人は「三浦半島食彩ネットワーク」会長としても活躍中

【午前11:30】
「例えば、有機無農薬栽培がマイナスになる場合もあるんです」と、熱く語ってくださった髙梨農場のご主人・髙梨雅人さんは、これまでの農家さんとはひと味違う方のようで。「虫などのストレスに対して野菜は防御物質を出し、これが人体に有害な場合があります。また必要以上の有機肥料を使えば地下水が汚れることもあるでしょう。私も若い頃は化学薬剤が嫌いでしたが、今では最低限の適切な使用が、よりエコロジーだと感じるようになりました」。畑の周囲にイネ科の牧草を育てたり、オレンジ色の特殊な光で夜の畑を照らしたり、多彩な害虫予防法を取り入れる髙梨さんは筑波大学の農学部出身。土壌、水質の成分検査を独自に行い、最適な栽培を模索し続ける、まさに研究者そのものです。取り扱う野菜も、西欧で品種改良された最新の品種から、日本ではすでに廃れてしまった古い品種まで様々。すべて科学的根拠に基づいた農法を駆使して育てています。さて、本日の食材がすべて集まったところで、次に向かうはいよいよ東京です。このように松浦さんは、日々、馴染みの農家さんたちと顔を合わせて会話をし、それぞれの野菜に対する思いを「EATGOOD」という言葉に乗せて、東京で待っているお店のスタッフやお客さんのもとへ毎日届けています。

食味に優れた星形のタイプ、彩り鮮やかな黄色く丸いタイプなど、ズッキーニだけでも7種類を栽培中。松浦さんは迷わず星形のタイプをセレクトしたが、直売所に一斉に並べると、お馴染みの品種が一番売れるのだとか。それでも周りの農家が育てている野菜はあえて外し、目新しい農作物にチャレンジし続けている

髙梨農場野菜直売所
TEL:046・888・1363(FAXのみ)
住所:神奈川県三浦市南下浦町菊名神台662・7
営業時間:10:00~17:00/水定休(野菜のない時期は不定休)

Text:佐藤潮(effect)
Photo:小林秀銀

※こちらの記事は2016年6月20日発行『メトロミニッツ』No.163掲載された情報です。

更新: 2016年9月23日

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