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食で外交。ガストロディプロマシーが国家をつなぐ

ガストロディプロマシー(美食外受)とは、自国の料理をグローバル化させることを目的として、各国政府がシェフ、生産者、企業と協力をし、自国の食を他国に発信する活動のことです。和食の話に入る前に、2000年代初頭から劇的に活発になっているという世界のガストロディプロマシーについて、ジャーナリストのメリンダ・ジョーさんに教えてもらいました。

開始しています。正式に、ガストロディプ口マシーを最初に行ったのはタイです。2002年、輸出を促進し、世界にタイ料理レストランを増やすことを目的として、タイ料理レストランの認定制度を確立しました。その後、ペルー、韓国、北欧、と様々な国が独自のスタイルで食の外突を行っています。最後に、私の記憶に強く残っているチリでの体験を紹介します。チリのガスト口ディプロマシーの一環で、私たち国際ジャーナリストの一行は、チリのシェフ、ロドルフォ・グスマンとともに、地元料理の試食をしながらアタカマ砂漠を旅しました。彼は世界ベストレストラン50にランクインしたチリの「Borago」のオーナーシェフであり、2月末には銀座の「ブルガリイル・リストランテルカ・ファンティン」でコラボレーションディナーをするチリのトップシェフです。試食したのは、ラマのパテ、乳白色のカーネル、チャニャルの木の実から作られた甘いシロップなど。そのどれもが、ユニークで、知らなかったものばかりでした。こうして、初めて出合った料理の強烈な印象は、生涯、その土地の風土と料理の昧と共に、記憶に残り、多くの人々に長く語り継がれていくのです。

タイ

2002年に実施した「グローバル・タイ・プログラム」は、世界のガス卜口ディプ口マシー幕開けとなり、そのパイオニア的な存在として注目されています。海外でのイベントでは、タイ人シェフに食の外交官としての役割を持たせ、政府からの支援の下、ローカルのシェフや生産者に積極的にタイの食文化を伝えると同時に、海外のタイレストランへのビジネス支援も行っています。詳細は、政府が出版した「タイ:世界の台所」という電子書籍にカバーされています。今年2月末には、アジアの「ベストレストラン50」の表彰式がバンコクで行われ、バンコクに世界中から食のプ口達が集結します。

ペルー

2006年から、観光に力を入れた積極的な美食外交を実施し、食の輸出量を増加させると共に、国内外のペルー料理ビジネスの開拓を行っています。ペルー国内で、数々の食イベントを主催していますが、中でも政府がスポンサーとなっている、リマでのMisturaFoodFestivalは、国内外で高い評価を得ています。同イベントは、国内の各郷土料理を広く紹介する良い例とされ、ラテンアメリカでは最大規模のイベントとなり、毎年40万人を超える人々がリマを訪れています。

スカンジナビア

デンマークの「noma」のシェフ、レネ・レゼピの出現により、北欧料理は飛躍的な進化を遂げ、大きな文化貢献と経済効果をもたらしています。中でも伝統料理の技法と保存食品の技術を研究し、再構築された新しいスタイルの料理が世界的に支持を得ています。レゼピシェフの料理コンセプトは、シンプルで新鮮であり、かつ倫理的な料理であるということ。この哲学こそが、料理界に旋風を引き起こしたのです。スカンジナビアの中で積極的な国は、フェ口ー諸島やグリーンランドを含むデンマーク、スウェーデン、ノルウェーなど。各地方の政府は、2006年に投資を始め、海外への食品輸出促進にも力を入れています。

韓国

2009年、韓国政府は、食料品の輸出拡大や国の食文化振興として、7700万USドルもの金額を投資。「キムチ・ディプ口マシー」と呼ばれ、広がりを見せています。具体的には、ル・コルドン・ブルーやCIAなどの海外の有名料理大学で、韓国料理のクラスを提供したり、海外で料理の勉強をしている韓国人留学生に対し、奨学金を提供しています。また、活動の一環として「ビピンバ
バックパッカーズ」もサポートし、30カ国、8000人を超える人々へボランティアでビピンバを提供しています。最近では、政府が20億USドルを圏内の農業技術向上に投資することを表明しており、2017年までに食料品の輸出量を2倍にすることを目標としています。

マレーシア

2010年に、5つの主要市場(米国、英国、中園、豪州、ニュージーランド)に向けたガス卜ロディプ口マシlを推し進めるべく、マレーシアの食品輸出振興企業「malaysia external trade development corporation」を立ち上げました。その活動は、"Malaysia kitchen for the world"キャンペーンとして、国際的なフードフェスティバル等にシェフを出席させたり、海外のマレーシアレストランへの経済的支援を行ったりニューヨークやロンドンで特設の夜市を聞き、ローカルの人々に本物のマレーシア料理を味わう機会を提供しています。

台湾

2010年、3億4200USドルを「点心外交(ディサム・ディプ口マシl)」に投資しました。その投資資金の中で、「国際台北ビーフヌードルフェスティバル」や各地での国際フードフェスティバルを開催し、食文化振興に伴うシンクタンクを設立。台湾料理の食品輸出やビジネス展開を推進する基盤を作りました。また、海外でのイベントに台湾のシェフを送り、ヨーロッパや北米の主要市場に対し、台湾料理の多文化主義や環境保護の精神を広めました。

シンガポール

シンガポールは、「食の多様性」にフォーカスし、アジアで今、最もガス卜口ディプ口マシー活動が盛んと言われています。屋台から高級料理屈に至るまで、また、人種の坩堝としての近隣アジア諸国の食文化の融合によって生まれた多種多様な食のスタイルを紹介しています。2011年には料理専門の教育機関「Culinary Institute of America」(CIA)のシンガポール校が開校となり、アジアで最も国際的な料理大学として周知されました。ガスト口ノミーの分野での広がりは、さらに進化を遂げ、アジアの「ベストレストラン50」にローカルのレストランがランクインしたり、「ボキューズ・ドール」のような権威のあるコンペティションでは、シンガポール人のシェフが毎回競い合っています。

アメリカ

2012年、アメリカ国務省はアメリカ食材を促進し、南部で生まれたBBQやカリフォルニア料理などに代表される様々なアメリカ料理に理解を深めながら、異文化交流を積極的に行っていくシェフ集団「American Chefs Corps」を立ち上げました。100人のエリートシェフ(Dan BarberやJpse Andresなどの著名人も含まれる)が、低所得工リアの学校で講演をしたり、ローカルのシェフ達との料理セッションを行ったり、また、世界中の正式な大使館イベントに登場し、食の外交官として料理を振る舞っています。

オーストラリア

2014年、オーストラリアは、観光の大きな魅力として、「料理とワインの地」であることを世界的にアピールするため18ヶ月のプログラムを開始しました。その一環として政府が4000万AUDドルを費やし、国際的にソーシャルメディアキャンペーンを行ったり、食の外交旅行キャンペーンとして「bush tucker」を1つの目玉としています。「bush tucker」とは、カンガルーやワニの肉などの食材を使った先住民族のごちそうのことです。

Text:Melinda joe
翻訳:村上由(Office K2M Inc.)

※こちらの記事は2016年2月20日発行『メトロミニッツ』No.160掲載された情報です。

更新: 2016年9月1日

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