#9 東京の名店

「Takumi」オーナーシェフ 大槻卓伺
「PIERRE GAGNAIRE」エグゼクティブシェフ 赤坂洋介

シェフを物語る1皿

Photo:柳 大輔 
Illustration:山崎真理子 
Text:石井 良、松本典子

20代で自身のお店を構えたシェフ、フランスやアメリカなど本国の巨匠の味を東京に伝えるシェフ、信頼する生産者との繋がりがあるからこその料理を生み出すシェフ。そんなシェフたちのストーリーを1皿を通してご紹介致します。

29歳、シェフの1皿

TAKUMI OTSUKI
1988年、広島県生まれ。神戸大学経営学部卒業と同時に渡仏。名だたる星付きレストランを食べ歩き、「ここだ」と思った店の門を叩いて直談判したという強者。ミシュラン三ツ星「ル プティ ニース」など5軒のレストランで約3年働く。2017年に「Takumi」をオープン。

シェフの1皿
ケーキ屋さんで大人買い

パズルのような皿に驚かされる。大学 時代に初めて作ったオリジナル料理と いうバラのソースのブランマンジェ、パ ン・オ・ショコラを分解再構築したデ ザートなど。内容は季節でも変わる。 ディナーコース13,500円(サ別)より

素材と組み合わせの‟妙‟を追求

昨年、28歳という若さで店を開いた大槻卓伺シェフ。その経歴は少し風変り。子どもの頃から料理人になると決めていたそうで、暇さえあれば魚のさばき方から高級食材まで調理の基礎を独学で学んだとか。大学卒業後は一足飛びにフランスへ。そこからもとても大胆で、気になるレストランを食べ歩き「ここで学びたい」と思った店に直談判したそう。約3年の滞在中に働いた5軒のレストランでは、それぞれ学ぶテーマを決めていたと言います。例えば、「ルプティニース」ではフレンチならではの魚の生かし方を、デザートの新しい感性は元パティシエ率いる「ランフィトリオン」といった具合。そんな大槻シェフが選んだ1皿は意外にもデザート。『組み合わせの妙』をテーマとする大槻シェフは、余分な素材をそぎ落としシンプルでミニマムな表現をよしとします。一口サイズを11皿集めたデザートこそ、その集大成。「全てがここから始まったんです」と大槻シェフ。このデザートの皿に合わせてお盆を特注し、そのサイズに合わせてテーブル、壁の色や素材など店の全てを発想したそう。“ケーキ屋さんで大人買い”というコンセプトもちょっとユーモアを感じさせます。また、こちらではデザートだけでなく、コースで登場する皿に対して全て、料理を構成する食材やハーブを小瓶に入れて並べ、説明カードを添えています。それにより、ゲストがより理解を深めながら食べ進められるようにと。「今はまだ成長段階ですが、“タクミらしい料理”といわれるものを作っていきたい」ときっぱり。大槻シェフは目標を定めたら脇目を振らずまっしぐらです。

「料理と向き合って欲しい」からと、店内の照明はあえて自然光と同じ明るさ。丁寧に料理の説明が書かれたカードは料理が運ばれる前のタイミングで登場する。読みながら料理を待つのも楽しい時間。
東京都港区西麻布1・11・10 ビルマーサ1F
11:30~15:00、18:30~23:30
日定休、月1回不定休 ※完全予約制

巨匠の1皿、私の1皿

YOSUKE AKASAKA
1979年、千葉県生まれ。2000年に渡仏し、アルザス「オ・クロコディール」などを経て、03年にパリの「ピエール・ガニェール」へ。10年、東京の「ピエール・ガニェール」オープンに伴いアシスタントシェフ、翌年エグゼクティブシェフに就任。

巨匠の1皿
“シエナの土”の香る国産特大ラングスティーヌのポワレ
グリンピースのピューレとニョッキ

イタリア・シエナの赤土をイメージしたガニェールさんのオリジナルスパイス“シエナの土”の風味でラングスティーヌ(手長エビ)に鮮やかなアクセントを与えた1皿。パンチのある味わいを好むというガニェールさんらしい味わい(プリフィクスディナー内の1品「季節の風」より)

常に進化を求める姿勢を、日本人として受け継ぐ

2003年にフランス・パリでピエール・ガニェールさんと出会って以来その下で研鑽を積み、現在はANAインターコンチネンタルホテル東京内のレストラン「ピエール・ガニェール」でエグゼクティブシェフを務める赤坂洋介さん。5皿構成の前菜が一度にテーブルに並ぶ「カクテル・ド・ポッシュ」や、構成を1人ひとりが自由に選べるプリフィクスディナー「エスプリ・ピエール・ガニェール」など他に類を見ないスタイルが息づくこのレストランで、赤坂さんはガニェールさんの世界観をお客様に伝えています。「ガニェールは常に進化を求める料理人。エビのタルタルにバナナで甘味を加えるなど、自由な発想に今でも驚かされます。彼は世界に14店舗の自身の店を持ち、それらを回りながら各地で見つけた新しい食材や料理を教えてくれるので、いつも勉強になるんですよ」と赤坂さん。そんなガニェールさんの姿勢と唯一無二のスタイルを受け継ぎながら、自身も新しい味わいを追い求めています。今回、ピエール・ガニェールさんらしさが表れた料理として用意してくれた、ラングスティーヌのポワレと同じく「私の1皿」のパンタード胸肉のローストも辛味をテーマにした料理。赤坂さんは唐辛子の辛さにレーズンの甘さ、赤ピーマンのしっかりとした風味を加え、新たな深い味わいの辛味に仕上げています。さらに、日本人として日本の魅力ある食材を積極的に使っているという赤坂さん。福井県に古くから伝わる汐ウニをアクセントにした1皿など、日本各地で出合った食材を元に無限に広がるイマジネーションを、ここ東京で表現しています。

私の1皿
タイムの香る“石黒農場”パンタード胸肉のロースト
モリーユ茸のフリッセとグリンピースのニョッキ

唐辛子とレーズン、赤ピーマンのソースで岩手県産のパンタード(ホロホロ鳥)の繊細なローストを 味わい深く仕上げた1皿。「巨匠の1皿」と同じグリンピースのニョッキを、こちらは肉に合うよう香 ばしくポワレしている(ランチコースより)

ピエール・ガニェール

ANAインターコンチネンタルホテル東京の 36Fにある、ミシュラン三ツ星シェフ、ピエー ル・ガニェールさんの名を冠するレストラン。
4 月19日(木)~23日(月)には、ピエール・ガニェールさんが来日予定 東京都港区赤坂1・12・33 ANAインターコン チネンタルホテル東京36F 11:30~ 13:30LO、17:30~20:30LO(4月より18:00 ~20:30LO)月定休

FUMIO YONEZAWA
1980年、東京都生まれ。都内のレストラン勤務を経て、2002年NYへ。高級フレンチ「Jean-Georges」に入店、わずか3年で日本人初のスーシェフに。14年3月「Jean-GeorgesTokyo」開業時より現職。

巨匠の1皿
アイナメ シャトーシャロンソース
トマトとズッキーニ

バターと少量の水でふっくらと火を通したアイナメに、ジュラ地方のヴァン・ジョーヌ「シャトー・シャロン」の酸味を効かせたースを添えて。見た目はシンプルながら重層的で奥深い味わい

シンプルなのに深い、ベーシックなのに新しい。

ミシュランンガイド・ニューヨーク版の創刊以来、12年連続で三ツ星を獲得し、米紙ニューヨーク・タイムズでも最高峰、四ツ星の評価を受ける高級フレンチ「ジャンジョルジュ」。4年前にオープンした「ジャン・ジョルジュトーキョー」で厨房を任されているのが、本店でスーシェフを務めた米澤文雄シェフです。今回、米澤さんが師であるジャンジョルジュ・ヴォンゲリスティン氏を象徴する料理として作ってくれたのが「アイナメシャトーシャロンソース」。魚とソースだけ。潔いほどシンプルです。「シンプルさこそがジャンジョルジュの料理の哲学。香味野菜とブイヨン、ヴァン・ジョーヌで作るソースはベーシックですが、日々状態が異なる野菜で同じ味を作り続けるには高い技術が必要。私が本店で働いていた頃は、このソースだけはシェフが作っていたほどです」。自身の使命は、そんなシンプルに見えて深みのある師の料理を、東京に浸透させることだと言います。「本マグロのタルタルアボカド、ラディッシュジンジャーマリナード」は、米澤シェフが強い思い入れを抱く1皿。理由は「私が本店の厨房で初めて作った料理であり、ジャンジョルジュ的フレーバーが詰まった料理」だからと話します。ジャンジョルジュ的フレーバーを形成するのは、ショウガ、柑橘、スパイスの3アイテム。「これらを効果的に使い、ベーシックな食材の組み合わせに新しい味を盛り込んでいく。一見シンプルな、あるいは馴染みのある料理を、想像の上をいく味に。優れた料理人かつエンターティナーでもある師の仕事を伝えていきたいです」

私の1皿
本マグロのタルタル アボカド、
ラディッシュ ジンジャーマリナード

スモークとドライ、2種のチポトレで作るスモークチリオイルとジンジャーマリナードの風味が効いた1皿。スパイスの香味がマグロとアボカドのフレッシュかつコクのある旨みの引き立て役に

ジャン・ジョルジュ トーキョー

世界4都市にある「Jean-Georges」の中で も、カウンターがあるのは東京店だけ。大理 石造りの重厚感ある設え。グエナエル・ニコラ 氏が内装を手掛けた 東京都港区六本木6・12・4六本木ヒルズ け やき坂通り11:00~14:00LO、17:00~ 21:30LO 無休

※こちらの記事は
2018年4月20日発行『メトロミニッツ』No.185に掲載された情報です。

更新: 2018年6月12日

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