#3 東京の名店

北島亭
Osteria dello Scudo~SAPORI ANTICHI~

名店の料理人たちのいま・ここにあるニュース

Photo:松園多聞
Text:望月実香子

これよりお届けするのは、あの名店の料理人の皆さまに、「今、考えていること」や「今、取り組んでいること」など、最近の話題を語っていただくニュースページ「東京“名店”ジャーナル」。それぞれのテーマで、自由に語っていただきます。

「北島亭」北島素幸さんの話題

パリの名店「ル・デュック」を招き
レストランで食事をする楽しさを今の東京の若い人に伝えたい。

フランスを愛し、フランス料理を50年作り続けてきた北島さんは、今こそ、東京の若い人達に食事の楽しみ方を知って欲しいとパリの名店「ル・デュック」を招いて、5月にイベントをすることにしたと言います。

Motoyuki Kitajima
1951年、福岡県生まれ。六本木「レジャンス」などを経て、7 7 年渡仏。「トロワグロ」「ジョルジュ・ブラン」などで6年間修業を重ね帰国。京橋「ドゥ・ロアンヌ」などでシェフを務め、90年に「北島亭」をオープンさせた。

僕は18歳で料理の世界に飛び込んでから、もうすぐ50年。その中でもフランスで働かせていただいた6年半は、生涯忘れられない輝くような経験でした。レストランの料理だけでなく、そこで食事をする魅力を初めて教えてくれた国。フランスがあったからこそ、今日もこうして店を開けられる。だから、恩返しをしたいとずっと思い続けていたんです。そんな時、常連のお客様がパリにある魚介専門のフランス料理店「ル・デュック」との話を繋いでくれて、良い機会と思い、今回イベント開催を決めました。海外のシェフが来日してイベントをするのは、「北島亭」として初めて。お客様に楽しんでいただけるよう「ル・デュック」のみなさんと連絡を取り合いながら試行錯誤を重ねています。「ル・デュック」は、僕がフランスにいた当初から人気のお店でした。夜は毎日満席。ミッテラン元大統領やサルバドール・ダリなどの著名人もたくさん来る名店として知られていました。また、フランスで初めて生の魚料理を提供したレストランとしても有名です。
5月に開催するイベントでは、そんな彼らの料理をここで再現してもらいます。「ル・デュック」のオーナー、シェフ、ソムリエ、スタッフがパリから来日し、食材だけでなく、ワインまで全て現地から持ってこられますからね。まるでパリのレストランで食事しているような体験をしていただけると思います。
パリのレストランでの食事というのは、本当に素敵で特別なものですよ。フランス人にとってレストランで食事するということは、ロマンチックな出来事なんです。一生懸命働いたら、好きな女性を誘っておしゃれをしてレストランへ出かける。味の良し悪しだけじゃないんですよ。料理が出てこなくったって、シャンパンやワインだけで恋人と囁き合ったりしてね。そういう楽しみって、人生を豊かにする上でとても大切。
今回、そんなロマンチックな部分まで体験してもらえれば嬉しいですね。特に日本の若い人たちにレストランに行く楽しさを体験してほしい。日本人もレストランに行く機会はあると思いますが、心の豊かさが足りないようにも見えるんです。フランス人って、とても心が豊かで優しい人が多い。食事を共にする人や、レストランに対して敬意を払って接する。そんな心の豊かさがあるからこそ、食事から幸福を得ることができるんでしょう。ぜひ5月のイベントには、とびきりのおしゃれと、食事を豊かに楽しもうという気持ちを持って来てください。
約半世紀の料理人人生を経て、今一番やりたいのはフランスへの恩返しと、レストランの本当の魅力を次の世代に伝えていくこと。今回のイベントの目的もまさにそこにあります。そのために、人の心を打つことができる1皿を作りたい、と思って厨房に立っています。67歳になっても失敗はしょっちゅうですが(笑)。だからこそ、できるようになりたい、と思って続けられるんですよね。毎日全力でやる。これだけです。そうすれば人生は素敵ですよ。

パリ14区にある「ル・デュック」は、1967年に創業した魚介専門のフレンチレストラン。美食の 街で50年以上の歴史を誇る名店中の名店で、フランスで初めて生魚、魚のカルパッチョを 提供したことでも知られる。毎朝中央市場に仕入れに行き、鮮度、品質管理を徹底した上で 供される1皿は、グルメなパリジャンたちにフランス風の刺身料理を教え、魚の新たなおいし さを伝えてきた。パリで魚料理を食べるなら「ル・デュック」を予約しろと言われるほど。

きたじまてい
☎03・3355・6667
東京都新宿区三栄町7 JHCビル1F

5月・四谷「北島亭」にて開催!Le Duc Tokyo
四谷の「北島亭」に、魚介専門フレンチ「ル・デュック」がパリからやってきます。オーナーのドミニク・ミンケリ、シェフのパスカル・エラルド、メートル・ドテルのオリビエが来日。食材やワインなどがフランスから持ち込まれ、4日間限定で本店のランチ、ディナーの料理が再現されます。全6皿(ランチは5皿)のコースは、各皿チョイス可能。イベント限定の1皿も登場するそうです。東京でパリの一流の味、サービス、そしてロマンチックなレストラン体験ができるチャンスです。

■日時:5月16日(水)~19日(土)ランチ12:00~13:30LO、ディナー(1部)18:30~20:30(2部)21:00~
■料金:ランチ10,800円、ディナー15,120円 ※サ別
■申し込み・お問い合わせは「北島亭」まで
※当日はメディア取材が入る可能性がございます。

「Osteria dello Scudo~SAPORI ANTICHI~」小池教之さんの話題

イタリアの伝統料理を、護り、磨き、未来へつなぐため「オステリア デッロスクード」をオープンしました。

イタリア郷土料理の魅力を伝え続けてきた小池教之さんが、ついに2月26日(月)、四ツ谷に自身のお店をオープン。今回、作ってくれた1皿「仔羊の猟師風」に、小池さんがこの店で目指すものが表れていました。

Noriyuki Koike
1972年、埼玉県生まれ。大学在学中にイタリア料理の世界へ。3年間、プーリア州など6州で腕を磨き帰国。10年間シェフを務めた広尾「インカント」では、イタリア20州の郷土料理を作り話題に。2018年2月独立し、同店をオープン。

今回お出しした「仔羊の猟師風」はかれこれ20年間作り続けてきたものなんです。イタリア・ローマの郷土料理で、〝伝統を受け継いで、さらに先へ〞というこの店のテーマを象徴する1皿。そのテーマを店名の「スクード」という言葉で表現しました。イタリア語で「盾」という意味です。イタリア数千年という長い歴史の中で、多様な気候風土、政治、宗教、文化などが複雑に折り重なって形作られてきた郷土料理を「護る」。その象徴としての「盾」。それを磨いて、次の世代に伝えていきたいという思いを込めました。私がここまでイタリア料理に惹かれるのは、1皿の背後に広がる歴史に壮大な浪漫を感じるからなんです。遥か昔に偶然から生まれた料理が、その土地の料理として定着して今に伝わっている。その料理が重ねて来た歴史に強烈な魅力を感じるのです。だから、私が全く新しい料理を作り出すことはありません。この店、「スクード」は、新しさとは真逆の「イタリア料理の博物館」みたいなお店。イタリア各州の郷土料理を深掘りして、大切に磨いて、レストランの1皿に仕上げるイメージです。季節ごとに特定の地域をテーマにしたプリフィックスコースを考えていて、今から夏手前頃まではイタリア北東部のヴェネト州をテーマにする予定です。また、料理人としてイタリア料理の「地域性」や「伝統」を次の世代に伝えていくことをこの店の軸にしたのは、今の世の中に対する懸念があるから。加速度的にIT化が進み、温暖化などの様々な環境問題も深刻化している。例えば、元々暖かい土地の特産物であったトマトやナスが、北部アルプスでも収穫できるようになったり。そうやって不自然な食文化が形成されてしまうのではという恐怖感があります。それによって今まで長い時間をかけて築かれてきた「伝統」がなくなってしまうかもしれない。もし数年後に今の気候風土が失われ、「郷土料理」という言葉が成立しない世界が現れたとしたら、「昔はこんなの食べてました!」って「博物館」みたいな料理をずらっと並べてやろうかなと思っています(笑)。今に受け継がれてきたものを絶対に枯らしたくない。だから、私はこの店、この1皿を通じてできることを毎日やり続けていこうと思っています。

ローマの郷土料理「仔羊の猟師風」。アーティチョークやリコッタチーズなど、その土地の食材を使い地域性を表現。小池さんが料理人として修業を始めた店から磨き続けてきた1皿

オステリア デッロ スクード ~サポーリ アンティキ~
「伝統料理を護り、磨き、そして未来へ」がコンセプトのイタリア料理店。特定の地域をテーマにしたプリフィックスコース(5,500円~)を季節ごとに提供。ワインもその地域のものを提案。店内はイタリアの田舎にあるレストランのような温もりのある落ち着いた空間。

☎03・6380・1922
東京都新宿区若葉1・1・19 Shuwa House1F
12:00~15:00、18:00~23:00 日定休、他月1回不定休

※こちらの記事は
2018年4月20日発行『メトロミニッツ』No.185に掲載された情報です。

更新: 2018年6月12日

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