#1 真夏のじゃがいも読本

てんぷら近藤(銀座)
Melograno(広尾)

じゃがいものスペシャリテがある店

Photo:岡田孝雄
Text:佐藤潮、立石郁

正直、真夏にじゃがいも特集とは季節外れではないか、という声もありました。でも、逆にじゃがいもに限って季節外れなんてこと、あるのでしょうか。確かに、今、新じゃがが多く出回る季節ではありませんが、かと言ってじゃがいもが手に入らない時期など、ほとんどありません。
九州から北海道まで、土壌をあまり選ばず育つじゃがいもは、日本各地で年中収穫され、さらに保存も利くので、いつでも出荷されています。さらに視野を広げてみると、アフリカから北欧まで、世界各地で生産されていて、これまで人類の飢餓を幾度も救ってきた歴史上の英雄的な野菜でもあります。いつでも身近な存在のじゃがいも、その向こう側をちょっとのぞいてみただけで、人々の営み、様々な文化が見えてきて面白い。食べたい時に食べればいい、読みたい時に読めばOK、今月はじゃがいも特集をお届けします。

写真の店/チョウシ屋東銀座に店を構えてから約90年(昭和2年創業)、持ち帰り専門で、コロッケ、ハムカツ、メンチ、カツ(いずれも惣菜またはサンドイッチにて)を販売しています。毎日、早い時間から行列ができ、午後早めには完売してしまうほどの人気ですが、前の晩に仕込んで、朝4:00から開店直前まで作っても、ようやく作れる数がそれぞれ1日限定300個なのだとか。大正時代に「三大洋食」と言われた、カレー、とんかつ、コロッケの中で、最も高価だったコロッケを庶民に広めた立役者的な店。
☎03・3541・2982(つながりにくい時間帯があります)
東京都中央区銀座3・11・6【最近、営業時間が変わりました】
11:00~14:00、16:00~18:00(売り切れ次第終了。ただし、14:00までの間に完売する日がほとんど)
月・土・日・祝定休

Metro min. VOL.165 Cover Girl
玉城ティナ Tina Tamashiro
1997年生まれ。沖縄県出身。14歳で講談社『ViVi』最年少専属モデルとなり、ティーン女子からの絶大な人気を獲得。2014年、犬童一心監督のTVドラマ『ダークシステム恋の王座決定戦』のヒロイン役で女優デビュー、2015年にSABU監督の『天の茶助』で映画デビューを果たす。本年は『オオカミ少女と黒王子』、『貞子VS伽椰子』『闇金ウシジマくん ザ・ファイナル』(10月22日公開)と出演作の公開が続き、活躍の場を広げている

じゃがいものスペシャリテがある店

あまりにも身近な食材のじゃがいもは、コロッケのように日常的な日の料理がよく似合うのかもしれません。でもだからこそ、一流の料理人たちがじゃがいもを扱うならば、工夫や創意を凝らし、想いを込めないと、ハレの日の料理にはなれないのです。

てんぷら近藤(銀座)【じゃがいものてんぷら】

てんぷら一筋50年の先駆者がたどり着いたひとつの〆料理

邪道とされた野菜のてんぷらを主役に取り上げたり、薄手の衣で揚げ、余熱で蒸らして食材の風味を活かしたり。〝てんぷらは蒸し料理だ〞と豪語する「てんぷら近藤」の店主、近藤文夫さんのアイディアは業界に新しい風を吹き込み続けています。18歳から「山の上ホテル」にて修業を始め、23歳という若さで料理長に抜擢された近藤さん。美食家として知られる池波正太郎にこよなく愛され、独立後もミシュラン・ガイドに常連入りするなど世界的に認められてきました。じゃがいもは、そんな近藤さんでも「ポテトフライやコロッケなど完成された料理が数多くあるため、ただ揚げるだけでは芸がない」と、長らく考えあぐねた食材。60歳の頃「同じでんぷん質の米となら違和感なく融和するのでは?」という着想から閃いたのが、このじゃがいものてんぷら(単品600円)です。パリッと揚がった衣、芯に向かうほどグラデーションのように柔らかさが増すじゃがいもと米の食感。噛みしめれば境界がなくなるほど混ざり合い、まろやかな醤油の風味が広がる……ニュアンスは紛れもなく〝焼きおにぎり〞。洗練されていながら驚きや温かみもある、近藤さんの生き方が凝縮された一品です。

左:御年69歳の近藤さん。挑戦こそが自分の仕事であると語る。右:その日の厳選野菜が並ぶカウンター。近藤さん用とお弟子さん用、2つのスペースに分かれている。

てんぷらこんどう
☎03・5568・0923
東京都中央区銀座5・5・13 坂口ビル 9F
12:00~13:30LO/17:00~20:30LO日定休(月曜が祝日の場合も定休)

Melograno(広尾)【北あかりとトリュフのタルトタタン】

緻密に織り込まれた、ハイブリッドなじゃがいものスペシャリテ

昨年9月、広尾にオープンしたイタリアン「メログラーノ」のスペシャリテは、じゃがいもを使った前菜。これはオーナーシェフの後藤さんが、第20回「日経レストラン」メニューグランプリで優勝した際のメニューです。「北海道を訪れた際にいい農家さんに出会って、そこのじゃがいもを使ったメニューを考えようと思ったんです。でも、普段脇役に回りがちなじゃがいもを主役にするためには、既存の考え方では想像できないような新しい美味しさが必要だと思っていました」。後藤さんの修業先の1つ、シチリアでは「アグロドルチェ」という、甘味や塩味など対照的な要素をぶつけ合う料理スタイルが根付いていました。その経験をヒントに、よく煮た玉ねぎと、ピュレ状にした北あかりの甘味をキャラメリゼで閉じ込めたタルトに、塩気のあるトリュフのジェラートと黒トリュフをのせることで、数多の料理人を唸らせたという、この1皿が生まれたのです。実際に食べるとなるほど、『温と冷』『甘みと苦みと塩気』『ピュレの粘り気とパイのサクサクした歯ざわり』などといった要素が緻密に織り込まれ、組み合わせの妙が食べる人の感性に驚きと楽しみをもたらしてくれます。

前菜とパスタから2種、メインを1種選ぶコースは5,500円、少し品数多めに、本日のおすすめを組み立てたお任せコースが8,500円。21時からはアラカルトでの提供も。

※こちらの記事は2016年8月20日発行
『メトロミニッツ』No.165に掲載された情報です。

更新: 2018年6月12日

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