#5 この頃の肉料理

北島亭
Restaurant Anis

“かたまり”の魅力を知り尽くした
東京のレストラン案内

Photo:柳大輔 
Text:松本典子、河﨑志乃

料理としてのセンスの良さか、技術力の賜物か、これらの店の1皿に魅了される理由はそれぞれ異なりますが、共通して言えることは肉と真摯に向き合うシェフがいること。“かたまり”で極上の肉料理を作り上げる、東京の店へご案内します。

四ツ谷/フランス料理
北島亭

約1.2㎏の大山地鶏を約1時間かけて焼き上げる「鳥取産大山地鶏 丸ごと1羽のロースト」(写真は半身)はランチ10,800円~、ディナー12,960円~(サ別)のコースのメインとして選べる(2名~)。食べきれない時は持ち帰り用に包んでくれる。肉は信頼する30年来の業者より厳選。北島さんは今もなお毎朝築地に足を運び自ら食材を吟味。南フランスの風景画を配した店内は全18席で料理人も多く訪れる。

フレンチの巨匠がフライパン1つで焼き上げる
丸鶏のロースト

「肉は骨付きの塊で焼くのが一番旨い」という信念の下、仔羊や牛肉、丸鶏までフライパン1つで焼いてのけるのが、四ツ谷で27年続く北島亭のオーナーシェフ北島素幸さん。焼くというよりじわっと温めるように、何度も休ませながら優しく火を入れた塊肉は、驚くほどしっとりして柔らか。長年の経験と腕がなければ到達できない妙技です。きっかけは、フランスで食べた鹿フィレ肉との出合い。ナイフがスッと入った肉は、焼き目がなく全体がピンク色で、日本にはない火入れ技術に衝撃を受けたそう。それから30年以上も模索してフライパンのみで焼く今の方法に辿り着き、約10年前には厨房からオーブンを取り払ったほど。「初めは難しくても、追求し続けることが次につながる。慣れて簡単にできるようになると、さらに違うテーマにトライしたくなる」と北島さん。そんな探求心から「仔羊の岩塩包焼き」など数々の逸品を生み出してきました。約1時間かけて火を入れた写真の丸鶏は、どこを食べても完璧な仕上がり。パリッと香ばしい皮や首、ジューシーなもも肉、蒸したかのようにしっとりした胸肉、と味や食感のメリハリも楽しめます。塩でしっかり下味を付けるのも北島亭の特徴で、最後はバターで仕上げてガーリック添えとなれば、これにはワインが欠かせません。
「こういう骨付きはビストロ料理だから、手で持ってパクパク食べるのが一番。そこにワインがあって、ワイワイ食べればもう最高ですよね」と北島さん。肩肘張らずに満腹になれる一流店の味を、ぜひワインと一緒にご堪能あれ。

きたじまてい
☎03・3355・6667 東京都新宿区三栄町7 JHCビル1F
11:30~14:00(13:30LO)、18:00~21:00(19:30LO)
水、第1・第3火定休(12/31~1/10休)

初台/フランス料理
Restaurant Anis

羊のエポール(肩肉)のロースト(10,000円のコースから)。鉄板に藁を敷き、みかんの皮で香りを付けながら、置き方などを細やかに調節しつつ焼き上げていく。清水さんが引き出した、“肩の部分でしか味わえない食感”を楽しめる。店内では、オープンキッチンで塊肉が焼かれていく様子を見ながら食事をすることができる。

1枚の鉄板を使って
あらゆる肉に火を入れる職人技
肉ごとの異なる表情を堪能して。

かつて、〝肉の魔術師〞と呼ばれたパリの三ツ星レストラン「アルページュ」のアラン・パッサール氏の下で肉部門を担当して以来、塊肉の面白さにのめり込んでいったというオーナーシェフの清水将さん。オープンキッチンに設置した1台のプランチャ(鉄板)で、さまざまな肉を塊で焼いていきます。1つの鉄板だけを使い、骨を伝って内側から肉にじっくりと火を入れていく清水さん独特の調理スタイル。鉄板の中で肉を置く場所や置き方はもちろん、下に藁を敷くなどして火加減を調節。焼ける音の変化などで火の入り具合を判断しつつ、肉と向き合いながら自分の感覚を頼りに仕上げていきます。「どの塊肉も焼き上がるまで、どう仕上がるかはわかりません。焼き上がった肉をカットして断面を見る瞬間が一番楽しいですね。僕には肉しかないですから、楽しみながらこの道を極めていきたいです」という清水さん。そんな清水さんにとって塊肉の魅力は、それでしか出せない質感。「薄切り肉とは違う肉の世界、塊肉ならではの表情を出せるのが面白いところです。肉が持っているポテンシャルや、それを引き上げる技術によって質感も味わいも変わりますから」。付け合わせも素材が持つ〝表情〞にこだわり、京芋のソースで食べるしっとりとした菊芋のロースト、焼き目を付けたみかん、パリパリのゴボウのチップなど、どれも素材の魅力をシンプルに引き出し、メインの肉に華を添えています。清水さんが巧みに引き出す、その日しか味わえない〝塊肉の表情〞を存分に楽しんで。

レストラン アニス
☎03・6276・0026 東京都渋谷区初台1・9・7 1F 11:30~14:30LO、18:00~23:30LO
月・第2日定休(12/30~1/8休)

※こちらの記事は
2018年12月20日発行『メトロミニッツ』No.182に掲載された情報です。

更新: 2018年4月21日

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