|地中海料理という、暮らし方。[3]|

マリーノ・ニオラ先生に訊く!
地中海料理とは?ー第3部ー

地中海料理が歩いてきた道

現在のような「地中海料理」がどのようにして生まれたのかを考える際には、きっちりと「古代地中海」と「現代地中海」という2つの時代に分けて振り返る必要があります。現代地中海世界は、地中海領域がイスラム化した以降の世界です。それに対して古代地中海は、イスラム化する前のまだ地中海全域が同じ食べ物を食べていた時代のことを指します。この違いをぜひ覚えておいてください。

改めて言いますが、「地中海料理」の核となる3つの食物が、オリーブオイル、穀類(小麦)、ワイン。いずれも古代から存在するもので、ギリシャ神話にも出てきます。それぞれを司る神がいて、3つの食材は神から人間への贈り物だと考えられていたのです。

オリーブオイルはアテナからの贈り物。アテナはギリシャの城塞都市・アテネの女神で、民主主義のシンボルでもありました。小麦は女神デーメーテール。その名はギリシャ語では「母なる大地」を意味し、豊穣の神です。そして、ワインはディオニソスで、この神は外国人。ワインとともに「酩酊」ももたらしました。

それぞれの起源に軽く迫る!

(左)アテナ(中)デーメーテール(右)ディオニソス

1.Olive Oil
知恵と勝利の女神アテナ

2.Wheat
穀物の栽培を人間に教えた豊穣神デーメーテール

3.Wine
豊穣とブドウ酒と酩酊の神ディオニソス

オリーブオイル

パルテノン神殿にはこの聖なる木の守護神として女神アテナが祀られ、オリンピックの勝者には小枝が授けられました。そんな古代ギリシャ時代から平和を導く勝利の象徴とされてきたオリーブですが、いつどこで人々が利用し始めたのかについては諸説あるようで、明確にはわかりません。しかし、古代は食べる目的より、薬として肌に塗る、ランプに灯をともすなど、暮らしの中で利用されることも多かったようです。

小麦

Stefano Tinti/Shutterstock.com

ギリシャ神話の他、エジプト神話、ローマ神話にも女神が存在したほど、豊穣のシンボルとして確固たる地位を得た小麦。発祥は1万年前のメソポタミア文明の頃と言われてきましたが、最近では2万5千年前の新石器時代に栽培が始まったとの説もあります。メソポタミアの頃はピタパンのように生地を薄く伸ばした無発酵パンでしたが、古代エジプトではふっくらとした発酵パンが作れるようになりました。

ワイン

古代ギリシャ人が、ディオニュソスに捧げた習慣が「シュンポシオン」。共に酒を飲む集いのことで(「シンポジウム」の語源)、酔っぱらうのを嫌った人々は水で薄めたワインを手にし、哲学から日常の悩みまであらゆることを語り合ったそうです。ワインに関する最も古い記録はメソポタミア文明のシュメール人が書いた『ギルガメシュ叙事詩』ですが、その発祥はやはり定かにはなっていません。

つまり、オリーブオイル、穀類、ワインは〝古代地中海料理時代に確立された、"基本の食物"ということ。現代地中海の料理では、それに加えて野菜と豆類、果物、そして魚介類も欠かせない存在となります。魚は、特にサバやイワシなどの青魚で、例えばサーモンは青魚ではないので地中海料理には含まれません。

それからパスタやピッツァ、チーズ類です。そして大事なことは、肉は少量であるということ。現在でも、肉を週に一度しか食べない地域もあれば、お祭りの時にしか食べない地域もあります。とりわけ南イタリアがそうです。

このような「古代地中海」のギリシャ・ローマ時代、「現代地中海」のイスラム教の時代の後には、もう1つ大事な転換期がやってきます。1415年から始まる「大航海時代」です。特に、地中海地域の食事情が劇的に変化をしたのは1500年代。アメリカ大陸を発見したおかげで、一気に食材の幅が広がりました。

トマト、パプリカ、ジャガイモ、ナスなどがアメリカから入ってくるようになったのです。柑橘類が入ってきたのもこの頃ですね。現在、オレンジやレモンは地中海地域でたくさん栽培されていますが、インドや中国、日本などのアジア方面から入ってきたものだったのです。そのため、今でもナポリではオレンジのことを“ポルトガル”と呼んでいます。ポルトガル領にはインドがあったので、そこから輸入されていていたからです。

Interview:粉川妙
Text:メトロミニッツ編集部

※こちらの記事は2015年5月20日発行『メトロミニッツ』No.151に掲載された情報です。

更新: 2016年10月26日

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