# 6|赤ワインと風土料理

各地を旅するように味わおう

赤ワインと風土料理 東京の店めぐり②

これより登場する東京の各店には、こんなお願いをしました。「季節が寒くなってきたため、ワインは『赤』を。合わせる料理は、そのワイン産地と同じまたは近郊の『風土料理』をご提案下さい」と。改めてお伝えすれば、「風土料理」とは“どこか特定の土地のことを伝えてくれる料理”のこと。伝統的な郷土料理も含みつつ、食材、歴史や文化など、その土地のことを知っているシェフが「風土」を表現したものであれば創作料理でも構いません。そして、今秋は「赤ワインと風土料理」をめぐり、遠い土地へ思いを馳せ、旅するように味わってみませんか? 各店の旅先(「風土料理」がテーマにする土地)のミニ情報も添えながら、フランス、イタリア、スペインの旅へご案内します。

FRANCE・オーヴェルニュ地方

© Atout France/OT du Puy en Velay/J. Grimaud

総じて2万㎞を超える川など、この地方の自慢は何と言ってもヨーロッパ最大規模の自然保護区を擁すこと。火山も100近くあり、109カ所の温泉という恩恵をもたらしています。また、右の写真の「ル・ピュイ・アン・ヴレー」には火山活動により隆起した2つの奇岩があり、その上に建てられた聖母像と礼拝堂が見下ろすという不思議な町です(病治癒の伝説により)。ちなみに、タイヤメーカー「ミシュラン」の本社、天然ミネラルウォーター「ボルヴィック」の採水地もこの地方に。

Les Chanterelles [代々木八幡]

自然に寄添う食文化を伝えるキノコ料理

2011年に「シャントレル」をオープンさせたのは、中田雄介シェフ。3年間のフランス修業の中で最も影響を受けたのは、オーヴェルニュ地方のサンボネ・ル・フロワ村にある現・3ツ星レストランでの経験だったと言います。中田シェフが師事したのは、「キノコの魔術師」と言われるレジス・マルコンシェフで、今回用意した「キノコのお茶とフォアグラマカロン」は、マルコンシェフのスペシャリテを中田シェフが進化させた逸品です。「僕が"風土料理"を考えるとなると、フランスの自然と寄り添う豊かな食文化が思い浮かびます。例えば、秋になると家族みんなで森に入り、散策しながらキノコ狩りをして、帰宅したらバター炒めやオムレツにして味わいます。このキノコのお茶は、『キノコを最も昇華させた料理』だと思います」(中田シェフ)。店名にも使われているシャントレルをはじめ、ジロールやセップなどヨーロッパから仕入れたキノコをたっぷり使い、乾燥キノコも駆使して、炒めて5時間煮るなどしてエキスだけを抽出。チキンブイヨンと合わせコンソメスープ風に仕上げています。それに、フォアグラのフランを挟んだマカロンは最高の相性。合わせるワインは、中田シェフが吟味して揃えたお店の150種以上の中から、ブルゴーニュの名醸造家が生む1本。「森の湿った草の香り、木の朽ちたニュアンスがあり、最もキノコの香りを感じさせる赤ワイン。この料理とともに、フランスならでは風土の味が楽しめると思います」(中田シェフ)

<WINE>
サントネー プルミエ クリュ レ グラヴィエール2009[ブルゴーニュ]
名醸造家、ジャン・マルク・ヴァンサンによる1本は、粘土質の土壌で栽培されたピノ・ノワールを使い、複雑な香りを備えた味わい。ボトル9,720円

<DISH>
キノコのお茶とフォアグラマカロン[オーヴェルニュ]
コース定番の、スタートの1皿。カフェ&プチフールを思わせる遊び心も楽しい。アーモンド生地のマカロンにはフォアグラのフラン入り。おまかせコース10,800円の中の1皿

中田雄介シェフは、東京・渋谷の「ラ・ブランシュ」を経て、渡仏。「オーヴェルジュ・エ・クロ・デ・シーム」(現「レジス・エ・ジャック・マルコン」)などで修業をした

シャントレル
☎03・5465・0919
東京都渋谷区元代々木町24・1 アブニール元代々木1F
営18:00~21:00LO、土・日12:00~14:00LO、18:30~21:00LO
月定休

FRANCE・南西フランス

© Atout France/Maurice Subervie

ピレネー山脈を挟んでスペインと国境を接する南西部は、かつてバスク王国があった北バスクと、ガスコーニュと呼ばれた地方で主に構成され、他では見られない豊かな食文化を育んできました。パリに比べ、ずっと南にあるため、気候は比較的温暖。ピレネー山麓で育つビゴール豚の生ハムの他、鴨や白インゲン豆なども特産。昨今ではワインも注目されています。それから「アルマニャック」はこのエリアを象徴するぶどうの蒸溜酒です。

COMME À LA MAISON [赤坂]

南西部で自ら体感した美味しさ、愉しさを
日本にも、きちんと伝えたいと孤軍奮闘

「日本に帰ってもアルマニャックしか飲むなよ(笑)」。これはオーナーシェフの涌井勇二さんが修業先だったボルドーのレストランで言われたこと。同店はボルドー以外にもバスクやランド(ボルドー南側の県)など、フランス南西部一帯の郷土料理を提供していますが、冒頭のように涌井さんに語ったシェフもランドの出身でした。「彼が作る料理はクラシックでしたが、どれもビックリするぐらい美味しくて、愉しくて。日本人の僕を受け入れてくれた優しさも嬉しかった。僕の使命はこの美味しさを日本に伝えることだと思った」。パリでも研鑽を積んだ涌井さんですが、天啓を受けたのでしょう。帰国して料理もワインも南西部を徹底する、この店を開きました。代表作が「スープ・ド・ガルビュール」。家庭料理ゆえ、様々なレシピがありますが、涌井さんはランド風。「現地では一家に1本の生ハムがストックされている」そうで、その骨からフォンを摂り、白インゲン豆やちりめんキャベツなどをじっくり煮込みます。「暖炉も全戸にあるから、朝、鍋をかけて、帰ってくる頃には料理ができている」。そんな情景も思い浮かびます。ポイントは「脂をしっかり乳化させること」と涌井さん。仕上げに振りかける唐辛子は南西部にある一集落、エスペレット村の特産品で「収穫時季になると、各家庭で干し柿のように、唐辛子を軒に吊るすから村全体が真っ赤に染まる」。コンテ・トロザンで醸された、南西部の中では比較的軽い味わいの赤ワインと合わせれば、不思議と未だ見ぬ村の温もりまで感じられるのです。

<WINE>
バステ[南西フランス]
フランス南西部、コンテ・トロザンの赤。この1本はカベルネ・フラン50%、メルロー50%で醸されています。ガルビュールによく合います。グラス972円、ボトル6,480円

<DISH>
スープ・ド・ガルビュール[南西フランス]
フランス南西部の各集落で食されてきた白い野菜だけで作るスープで、ちりめんキャベツも白い部分だけを使用。特産の唐辛子も大切なポイント。1,944円

パリのレストランやビストロで修業した後、ボルドー「ラ・シャマド」でその魅力に開眼した涌井勇二さん/南西部料理を堂々と謳う同店

コム・ア・ラ・メゾン
☎03・3505・3345
東京都港区赤坂6・4・15 シティマンション赤坂1F
営18:00~23:00LO
日定休

※こちらの記事は2017年10月20日発行『メトロミニッツ』No.180に掲載された情報です。

更新: 2018年4月20日

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