”コク”って何?#7

【本当の国語辞書を調査した件】

辞書で『コク』を
引いたら。

Photo 井上美野

実際に、様々な辞書でコク”を引いてみたところ、気づいたことがあります。『コク語辞典』はコク”に対する様々な解釈を集めた本ですが、本物の辞書にも1つの共通した正解があるというより、書き手なりの表現で、それぞれの解釈が書かれているようだ、と。

広辞苑 第6版 岩波書店
新村出・編 2008年
こく【酷】
①(本来、中国で穀物の熟したことをあらわしたところから)酒などの深みのある濃い味わい。「―がある」②むごいこと。ひどいこと。「―な練習」

現代国語例解辞典 第4版 小学館
林巨樹、松井栄一・監修 2006年
こく
①深みのある濃厚なうまみ。「こくのある酒」②転じて、文章や話などの深みのある趣。「こくのある文章」▼形容詞「濃い」の連用形が名詞化したものか。また、穀物が熟す意の「こく」からとも。

明鏡国語辞典第 2版 大修館書店
北原保雄・編 2011年
こく
①深みを感じさせるうまみ。「―のある酒」②深みを感じさせる面白さ。「彼の文章には―がある」

三省堂現代新語国語辞典 第4版
三省堂 市川孝(主幹)ほか 2011年
こく(濃)
〈名〉①あとまで舌に残る、深みのある味。「―のある酒」②深みのある内容。「―のある文章」

学研 現代新国語辞典
改訂第5版 学研
金田一春彦、金田一秀穂・編 2012年
こく
[形容詞「濃い」の連用形の転か]①濃厚な味。深みのある味。「―のある酒」②深みがあって味わいごたえのする面白さがあること。「―のある文章」

新明解国語辞典 第6版 三省堂
山田忠雄(主幹)ほか 2005年
こく
[形容詞「濃い」の連用形]その物のよさが、ちょっと味わっても分かるほど凝結されていること。「―の有る酒」

日本国語大辞典 第2版 第5巻 小学館
日本国語大辞典 第二版 編集員会 2001年
こく
(形容詞「こい(濃)」の連用形の名詞化したものか。また、「こく(酷)」からとも)酒などの、深みのある濃厚なうまみ。また比喩的に、文章や話などの深みのある趣。*骨ぬすみ(1899)〈広津柳浪〉四「佳酒(ええ)どこぢゃない、壜詰の正宗と同一品(ひとつもん)だから、こくがあるんぢゃ類なしと云ふんだ」*思想と風俗(1936)〈戸坂潤〉文学、モラル及風俗・一「特に理論的に多少コクのありさうな哲学になればなるほどさうだ」*女面(1958)〈円地文子〉一「あの顔はこの間の霊媒より余程コクのあることを言い出しそうだった」*湯葉(1960)〈芝木好子〉「乳くさく甘く、こくのある味は」

新明解 語源辞典 三省堂
小松寿雄、鈴木英夫・編 2011年
こく
うまみ。漢語「酷」からきたという説と、形容詞「濃い」の連用形の名詞化とする説がある。「酷」は、酒の味や香りの強いことをいう。西暦100年頃の中国の字書『説文解字』に「酷酒味厚也(酒の味、厚きなり)」とある。この酒の味の厚みから、物のうまみ全般に及んだというのが、漢語由来説である。「濃い」からきたとする場合、形容詞連用形の名詞化の例が少ないことが難点となる。現在、「こく」は味覚についてだけでなく、「こくのある文章」などとも使う。

暮らしのことば新語源辞典 講談社
山口佳紀・編 2008年
こく
深みのある濃い味わい。「こくのある酒」などと使われる。形容詞コイ(濃い)の連用形が名詞化した語と思われる。形容詞連用形の名詞化は少ないが、「遠くから見る」「多くを望まない」などが指摘できる。関連する語に「鯉濃」があり、これは「鯉の濃漿」の省略形である。「漿」は汁の意で、「濃漿」とは、肉や魚をよく煮込んだ濃い味噌汁をいう料理名のことである。

語源大辞典 東京堂出版
堀井令以知・編 1988年
コク
深味のある濃厚な酒などのうまさ。文章や話の深い趣を比喩的にいう。コイ(濃)の連用形からか。あるいは、コク(極)の意からか。甘、酸、辛、苦、渋の五味の統合された調和のさま。

※こちらの記事は2016年9月20日発行『メトロミニッツ』No.167に掲載された情報です。

更新: 2018年4月19日

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