# 5|赤ワインと風土料理

各地を旅するように味わおう

赤ワインと風土料理 東京の店めぐり①

Photo中庭愉生、柳大輔、三浦伸一、上田佳代子、菊池陽一郎、野呂美帆
Text 山田貴美子、岡本ジュン、佐藤太志、田代いたる、永浜敬子、浅井直子
Contribute Editor 小泉竜太郎
Special Thanks フランス観光開発機構、イタリア政府観光局、スペイン政府観光局

これより登場する東京の各店には、こんなお願いをしました。「季節が寒くなってきたため、ワインは『赤』を。合わせる料理は、そのワイン産地と同じまたは近郊の『風土料理』をご提案下さい」と。改めてお伝えすれば、「風土料理」とは“どこか特定の土地のことを伝えてくれる料理”のこと。伝統的な郷土料理も含みつつ、食材、歴史や文化など、その土地のことを知っているシェフが「風土」を表現したものであれば創作料理でも構いません。そして、今秋は「赤ワインと風土料理」をめぐり、遠い土地へ思いを馳せ、旅するように味わってみませんか? 各店の旅先(「風土料理」がテーマにする土地)のミニ情報も添えながら、フランス、イタリア、スペインの旅へご案内します。

FRANCE・ブルゴーニュ地方

最初の旅先は最上級のワインの故郷、ブルゴーニュ地方です。2015年、「ブルゴーニュのブドウ畑のクリマ」は世界遺産に登録されました。まもなく11月16日に解禁される、ボージョレ・ヌーヴォーもこの地方のワインです。

オルディヴェール[白金高輪]

ブルゴーニュの豊穣な味わいを 彼の地と似た鳥取の食材と共に

今もワイン産業を支えているのは大企業ではなく個人の農家が大多数というブルゴーニュ地方。1軒あたりのブドウ畑の面積は、ボルドーと比較にならないほど小さいそうです。「それぞれの農家が家族で消費するためのワインも醸造していて。そんなワインをよく分けてもらって楽しみました」と思い出を語る飛松裕之シェフ。現地ではその豊穣な大地に育まれたワインを、コック・オ・ヴァン(鶏の赤ワイン煮込み)やウフ・アン・ムーレット(赤ワインソースのポーチドエッグ)など、気軽な家庭料理にも惜しみなく使っていて、それが豊かだったと話します。そんな彼の地の豊かな味わいを、鳥取の食材で表現しているのがこの店。「四季のはっきりとした気候と大自然に恵まれた鳥取で育まれた食材は、ブルゴーニュのそれとも似ていますね」と話すのは鳥取県出身のオーナーソムリエ戸田健太郎氏。彼は今、料理人の間で注目を集めている鳥取食材の中でも吟味されたものを独自のルートで手配。数ある食材の中でも、両地で共に愛されている食材と言えば鳥です。今回、風土料理に選んだブレス産鳩のロティには、じっくり煮詰めたブルゴーニュ産の赤ワインのソースが見事なアクセントに。「この自然派ワインは絹のようにタンニンが滑らか。これには骨と香味野菜だけで摂った純度の高いフォン・ド・ボーで作ったソースが合うはず」。大自然のうま味を凝縮した皿に添えられているのは鳥取野菜。骨に結んだネギはまるで伝書鳩のように、ブルゴーニュと鳥取を繋いでいるかのようです。

<WINE>
フィリップ・パカレ
ルショット シャンベルタン2008[ブルゴーニュ]
自然派ワインの造り手として最も人気のあるフィリップ・パカレ氏が特級畑で作ったピノ・ノワールの繊細な果実味が溢れる。ボトル43,200円

<DISH>
ブレス産鳩のロティ
ブルゴーニュ産赤ワインのソース[ブルゴーニュ]
現地で人気のある鳩料理。フォン・ド・ボーと現地産のワインで煮詰めたソースが絶妙。コース8,640円の中の1皿(予約時、要問い合わせ)

右は戸田健太郎オーナーソムリエ。「ブルギニオン」で10年間勤務。左は飛松裕之シェフ。「シェ イノ」やブルゴーニュのミシュラン1ツ星 「レストラン グルーズ」などで研鑽を積む

オルディヴェール
東京都港区白金3・9・8 スカーラ白金シティプラザB1F
☎03・6874・3380
営18:00~翌1:00(金〜翌2:00)
日・第3月定休

FRANCE・ブルゴーニュ地方

© Atout France/Michel Angot

ヨンヌ県、ニエーブル県、ソーヌ・エ・ロアール県、そしてコート・ドール県から成る地方。「コート・ドール」はフランスで唯一の地理に由来しない県名で、「黄金の丘」を意味します(他の3県は河川名から)。収穫を終え、紅葉した秋のぶどう畑が太陽の光を浴びて、丘一面を黄金に染める光景から名付けられた、気高きワインの産地です。また、フランス最高級とうたわれるシャロレー牛をはじめ、エスカルゴ、ブレス鶏、ディジョンのマスタードなど、魅力的な特産食材も豊富。

CELLIER des dîmes[恵比寿]

秋の森を散歩するようなマリア―ジュ

「ソースを大切にするクラシックなフレンチが好きです。その土地で食べ継がれてきた食材を大切にしていきたい」と語る五木田祐人シェフ。24歳でフランスに渡り、ニースのミシュラン2ツ星で働いた後、地方料理を知ろうとパリではなくブルゴーニュへ。ミシュラン1ツ星の「ル・ジャルダン・デ・ランパール」ではスーシェフを任された実力派です。ブルゴーニュではブレス鶏やジビエなど、フランスらしい豊かな食材に直に触れて多くを学んだと言う五木田シェフ。その頃から現在までずっと、フランスを感じる料理を作りたいという思いは変わらないと言います。そして“風土料理”という今回のお題に、五木田シェフが用意したのは日本人には馴染みが薄い「ブルヌイユ」、つまりカエルでした。「カエルはフランス人が好きな食材の1つ。ソテーなどにすることが多いですね」とのことですが、今回はシェフのスペシャリテで登場。淡白だが風味のあるカエルの肉を、ブルゴーニュの秋の食材であるエスカルゴやキノコ、さらに蕎麦の実と一緒に一口コロッケに。口の中で様々な食感や香りが混じり合い、小さいながらも大きな存在感を放ちます。この1皿に合わせるワインは白と言いたいところですが、あえて選んだのはオート・コート・ド・ニュイの赤。名生産者が造る緻密でバランスが良いピノ・ノワールは秋の森に漂うキノコの芳香に寄り添います。五木田シェフがこのマリアージュにそっと忍ばせたのは、まさに深まるブルゴーニュの秋の気配そのものでした。

<WINE>
オート・コート・ド・ニュイ2011[ブルゴーニュ]
落ち着いてきて飲み頃になった2011年。造り手はオート・コート・ド・ニュイの第一人者と言われるジャイエ・ジル。ボトル12,000円

<DISH>
エスカルゴとグルヌイユ、天然キノコ[ブルゴーニュ]
ニンニクとパセリが香るエスカルゴバターの風味を効かせている。フェンネルのソース添え。お任せコース(4日前までに要予約)9,800円の中の1皿

シェフの五木田祐人さんは24歳で渡仏して2年半滞在。帰国後は赤坂の「シュマン」でスーシェフを務め、2016年に独立した

セリエ・デ・ディーム
☎03・6450・4455
東京都渋谷区広尾1・4・10 鴻貴ビル1F
営11:30~15:00(14:00LO)、18:00~24:00(22:30LO)
月定休
※昼、夜ともに予約は1日3組

※こちらの記事は2017年10月20日発行『メトロミニッツ』No.180に掲載された情報です。

更新: 2018年4月20日

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