|東京ハイカジ中華[3]|
“ハイカジ”を紐解く質問集〜後編〜
今、”ハイカジ”くらいがちょうど良くないですか?

[TALK 4]角田さんがデザインしたテーブルウェアもしかして“ハイカジ”じゃないですか?

上質を廉価に届ける“ハイカジ”が
文化を底上げする!”


「共通の」「社会一般の」「普通の」といった意味を持つ“Common”という名を冠したテーブルウェアをデザインした角田陽太さん。西海陶器、東洋佐々木ガラス、燕振興工業といった老舗メーカーとコラボレートした確かな作りと、洗練されたシンプルなデザインを、普段の食卓に…、このコンセプトはまさに“ハイカジ”!なんでもCommonをデザインするにあたって人々のこれからの暮らしについて深く考えられたのだとか。「人のこだわりが強くなったのか、こだわる人々の数が増えてきたのか。“上質な生活”や“正しい生活”。強いては“幸せな生活”が何なのか、ということを無意識に考えている人が多くなっているのでしょう。しかも、上質なもの、個人の価値観に合うものであれば、値段が安かろうが高かろうが関係がないと考える人も増えてきている」。そこで、手に取ってもらえるデザインとして“Common”が生まれたというわけ。でも、上質ってそもそもなんなのでしょう?「私にとって上質とはディテールの積み重ねで成り立つものなんです。そして、そこら辺にあるものが上質なものであることが文化の底上げに繋がる」。というわけで、質を追求しながらも、それをカジュアルに提案する“ハイカジ”には大いに賛同いただいたご様子。「一過性の流行ではなく、“ハイカジ”はこれから文化として根付いていかなければならないことなのだと感じています」。では、角田さんが考える“ハイカジ”を他に具現化しているモノはなんでしょう?「祐天寺にあるもつ焼きの老舗『ばん』です。“ハイカジ”って、気を張ってお金をたくさん使うということとは真逆の、肩の力が抜けたこだわりなのかもしれませんね」

角田陽太さん
2003年に渡英し、ロス・ラブグローブ事務所などで経験を積む。帰国後は無印良品のプロダクトデザイナーを経て、2011年「YOTAKAKUDA DESIGN」を設立。飲み歩きが日課。

[TALK 5]ビームス創研の青野さん“ハイカジ”と聞いて何が思い浮かびますか?

時代の必然の選択肢
“ハイカジ”の発祥は神山町!”

「最近思うのは“若くありたい”と思う人たちの市場が大きくなっているのではないかと。ここ10年くらい。若者と大人の境目があいまいになってますよね」とは、セレクトショップ・ビームスで長年プレスを務め、現在は個人のソフト力をクライアントワークに活かすビームス創造研究所のクリエイティブディレクターを務める青野賢一さん。ファッションを含めライフスタイル全般に関してカジュアル化が進む要因を、さらに続けます。「もはや成熟することが多くの人にとって目的ではなくなっているんですよね。かつての大人のイメージはカチッとした服を着て、豪華なフルコースとワインをボトルで、なんていう感じだったろうけど、それが憧れではなくなってしまっている。むしろ今は、渋谷の神山町あたりのワインバーで、フランクに自然派ワインをグラスで飲むことがひとつのステータスになっていたりする。“ハイカジ”の発祥はもしかしたら神山町かもしれませんね」。神山町と言えばアヒルストアやsajiya、Pignonといったお店が並ぶ町。ワインは店主が自ら選び、生産者やその造り方にストーリーがあるもの。料理についてもパンが自家製だったり、本国で料理を学んだ本格ビストロ料理だったり。そんな“良質”な食事をカジュアルにいただけるお店。「いまファッションにしても飲食店にしても選択肢がたくさんあります。例えば、ベーシックなボタンダウンシャツを一つ取っても、ハイブランドからファストファッションまで、価格も質も様々ですが、ある程度の年齢や立場になったらカジュアルと言っても安っぽくない、たとえ他人が見たらわからなくても、クオリティ、ディテール、そのモノが持つ物語に納得できるものを身につけたい。そんな人が“ハイカジ”という選択肢に行きつくのではないでしょうか?ことに食においては“質”が、ファッションよりもわかりやすい。背伸びせず、でも上質さを味わいたいなら、“ハイカジ”的なお店が選ばれるのは必然ではないでしょうか」

青野賢一さん
BEAMS創造研究所クリエイティブディレクター、BEAMSRECORDSディレクター。ファッションはもちろん、音楽、文学、カルチャーに精通し選曲業、DJ業、執筆業も

[TALK 6]時代の“欲しい!”を再編集しているおふたりに質問”ハイカジ”ってちょうど良い贅沢じゃないですか?

新しい贅沢は生活の延長線上に、
イマドキの贅沢の形として「ハイカジ」がある!?

贅沢の定義は時代によって変わっていきます。とすれば、今、この時代の贅沢の形とは?お招きしたのは、様々なショップのディレクションや内装デザインを手掛け、7月には「FreshService」の第2弾として期間限定ショップを表参道のGYREにオープンした南貴之さん。そして、モノで繋がるSNS「Sumally(サマリー)」代表であり、カルチャー全般から、レストラン事情にも詳しい山本憲資さん。ライフスタイルから、オンライン上から、人々の欲を刺激し続けるお2人。テーマは、“ハイカジ”と贅沢のカタチについて。ハイカジ中華の代表格である外苑前の「楽記」にて、対談の場を設けました。まずは、南さんの近々の活動から。「僕がやっているFreshServiceのテーマが、『新しい贅沢』なんですね。バブル時代のような煌びやかな『ザ・贅沢』という価値観は、もう違うだろうと。今の贅沢の在り方って、例えば服だったら素材とか、デザインのバランスとか、もうちょっと掘り下げたところにある気がしています」かたや、つい先日、NYを訪れた山本さん。南さん同様、新しい贅沢のカタチを感じる出来事があったとか。「ブルックリンにある『Blanca』という??つ星の店に行ってきたんですね。『Roberta’s』っていう人気ピッツェリアの奥にあって、本当隠れ家スペースなんですが、その存在自体にすごく無理がないな~と。煽り感もなくて、言うならばブルックリン育ちのバンドがそのまま出世して、フジロックに出ました、みたいな(笑)。これまでは過度な贅沢や質の高さとか、シェフが有名とか、そういうことが切り口になることが多かったけど、自然に手を伸ばした延長線上でどこまで行けるか、そんな価値観ヒップな存在として認識されはじめていると思います」生活の延長線上で紡いできたものが、ムーブメントになっていく。ポートランドの雑誌『KINFOLK』のように、小さなコミュニティのライフスタイルに注目が集まるのも同様の流れだよね、とも。自分たちがいいと思うものをシンプルに発信する感覚って“ハイカジ”っぽい。そもそも、日本人て“ハイカジ”を得意としてきたのでは、と南さん。「ファッション面から言うと、“ハイカジ”って昔から日本人が大得意だったんじゃないですかね。コレクションブランドを着崩してみたり、そういうストリート感って東京が世界で一番早い。ただ、コレクションのような発表の場所が東京にはない。だから、パリコレとかで新しいモノが出て、認められて…。でも、それ前から東京にあったじゃん!て。そこに高い値段をつけて消費させようとするけど、ストリートの人たちは騙されねーぞ(笑)みたいな」とにかく、量をこなすことで対象の世界を網羅し、そこを高解像度で理解できる状態に自分をセットすることがライフワークと語る山本さん。レストランも数をこなすことで、見えてくるものがあるという。「やっぱり、日本の食は世界と比べても、群を抜いてクオリティが高い。下手したら、どこの国の料理も平均値をとれば日本の方がうまかったりする。“ハイカジ”が来ているのであれば、そういう積み重ねが根底にあってのことなんだと思います。例えば2つ星の『L'Effervescence』のカジュアルラインとしてオープンした『LA BONNETABLA』ではたこ焼きを模したスイーツがデザートに出てくる。このようにハイエンドとカジュアルを自由に行き来できる体験がしやすいのは、それだけ東京のシーンが成熟してるってことなのかもしれませんね」ファッションと食、異なる分野ですが、共通するのは世界に冠たる日本人のセンス。異なる場所にいる2人でしたが、それぞれに感じていた「贅沢の方向性」は図らずも近い。その事実が実に興味深いのでした。

対談が行われたのは外苑前の楽記。神宮前、ワタリウム美術館の近くに昨年オープンした中華料理店。香港の焼き物を、現地の釜を使って提供するこちらは、開店して以来すぐさま人気店に。対談が行われたのは外苑前の楽記。テーブル上に並んだ皮付き豚バラ肉のクリスピー焼き1,600円やアワビのオイスターソース煮1,900円をつまみながら、約2時間の濃密な会となりました。山本さんは一人でワイン一本を空け、ご満悦。

南貴之さん
alpha代表。クリエイティブディレクター、ブランディングディレクター。クリエイティブユニット「FreshService」としても活躍。7月5日には、表参道GYREに期間限定モバイル型セレクトショップをオープン。

山本憲資さん
広告代理店を経て、雑誌「GQ JAPAN」の編集者に。2010年に独立。世界中の素敵なモノを見つけ、持っているモノや欲しいモノをシェアする「Sumally」代表。http://sumally.com

Photo:下屋敷和文(6)Text:河島まりあ(GRINGO&Co.,4)、三宅あゆみ(5)、船山壮太(verb、6)

※こちらの記事は2014年7月20日発行『メトロミニッツ』No.141に掲載された情報です。

更新: 2016年10月17日

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