|東京ハイカジ中華[2]|
“ハイカジ”を紐解く質問集 前編
今、”ハイカジ”くらいがちょうど良くないですか?

中華を含めた食だけでなく様々な分野で"ハイカジ"がトレンドになっているのでは!
各分野で独自の視点を持って時代の潮流を見ている人たちに、いまの時代の気分と”ハイカジ”がリンクするのか、質問をぶつけてみました。

[TALK 1]提唱から2年経った今"ハイカジ"の波いまだ健在ですか?

ニューオープンに敏感な女性は、新しい体験をシェアすることも好む。「”ハイカジ”」を提案する『バッカンテ』(双葉社)のターゲットはまさにそんな女性。

“ハイカジ”はもはやすっかり定着。
話題の「ノームコア」が食の分野でもネクストトレンドに!

2012年12月、「女性のための美酒美飲スタイル誌」として創刊された『バッカンテ』の表紙に「いま、女子飲みは”ハイカジ!”」の文字が躍ります。それより少し前にアパレル業界を賑わせていたのが、「カジュアルで求めやすい価格だけれど、高品質」=「ハイクオリティカジュアル」という言葉。佐藤こうぞうさんが、そのフレームを飲食店にあてはめたのは2012年4月のことでした。「2011年に業界に旋風を巻き起こした”俺のイタリアン”が、その翌年には”俺のフレンチ”がオープン。さらに同年、2002年全日本最優秀ソムリエに輝いた阿部誠さんのプロデュースによる”東京ぶどう酒店”が、”一流のカジュアル”をコンセプトに掲げて、一気に”ハイカジ”の噴火現象が起きました。ワイン業態が成熟して”そこそこのワインが安く飲める”ところから、一歩進んで”この値段でこのクオリティ!”とギャップを楽しむ時代に突入します」
すでに2年前には「これからは”ハイカジ”がくる」と予測していた佐藤さん。その背景には成熟した食べ手の目線も欠かせないといいます。「”ハイカジ”の特徴は、顧客がプライスゾーンを選べる、ということ。価格以上の価値を提供できるレンジの広さはもちろんのこと、顧客が楽しめるホスピタリティも重要です。その店で過ごすことが”高品質な日常”の体験として記憶され、お店に行くことが顧客のライフスタイルの一部になることが”ハイカジ”な店の存在価値なのです」
特に、2011年の震災以降、自分の価値観を重視する人が増えていると考える佐藤さんは、そこにSNSの活用が加わったことで、いっそう”ハイカジ”な店の支持率が店の上がったと分析しています。
「今はSNSなどでリアルタイムには発信する時代。顧客同志で”価値のシェア”が進めば、当然、情報量は増加し、情報の質も高まります。求められるのは”新しい体験”で、顧客は、日々価値のある体験をアップデートして、発信したいのです」
提唱した2012年から2年の間にその潮流はますます加速。”ハイカジ”は、当初の価格を意識したコストパフォーマンスという軸から、新しい体験ができるか否かに価値を見出すバリューパフォーマンスの時代に完全にシフトしてきた、と語る佐藤さん。最近、この先の軸として「スーパーノーマル」「クオリティパフォーマンス」といった気になるキーワード予想が飛び出しました。「米国のファッション業界では”ノーマル”と”ハードコア”をミックスした”ノームコア”というスタイルが注目されています。普通だけれど、強いこだわりを感じるスタイル。飲食店もそんな”究極の普通”スタイルを持ちながら、クオリティの高さを表現できるお店が次の時代を築くのだと思います」

佐藤こうぞうさん
飲食業界向けサイト「フードスタジアム」、『バッカンテ』編集長。出版社勤務などを経て『ARIgATT』など飲食系雑誌に関わり、レストラントレンドの講演、執筆を重ねている。

[TALK 2]虎ノ門ヒルズのコンセプトが"ハイカジ"って本当ですか?

虎ノ門ヒルズ 東京都港区虎ノ門1・23・1~4/TEL03・6406・6665(平日10:00~17:30)/森ビル株式会社 赤坂・虎ノ門エリア 店舗運営室

人が集い、つながる。
そのきっかけは“ハイカジ”にある

6月11日に開業したばかりの虎ノ門ヒルズ。「ビーフン東」の三代目でもあり、大阪でミシュラン1つ星をとった中華料理店「Chi-Fu」の東浩司シェフがプロデュースした虎ノ門ヒルズカフェも気になるところですが、開発にあたり「ハイクオリティカジュアル」をコンセプトに掲げているというのです。「コンセプトを策定する際に私たちが考えたのは、ワーカーも、レジデンスの居住者も、近隣のネイバーフッドも色々な層の人の境界がなくなり、世代も越えて、そしてグローバルにも対応できる場所でありたいということ。そんな多彩な人たちが気兼ねなく、優雅な時間を過ごしてもらいたい。そこで”ハイカジ”という言葉が思い浮かんだのです」とは、森ビル株式会社の商業施設事業部の吉田誠さん。”ハイカジ”を次のように定義されたそう。「ハイクオリティとは、”ホンモノ”のことです。虎ノ門ヒルズにある主な業態がカフェやレストランなので、そこに集う作り手の”顔”や”想い”が食べ手に伝わってこそ”ホンモノ”であると考えています。『above GRILL&BAR』『虎ノ門ARBOL』『Toranomon HOP』『TORANOMON KOFFEE』などなど、想いを持って食やサービスに打ち込んでいるお店に入居していただきました。そして、カジュアルとは、"フレンドリー"であること。顔と顔を合わせて、話して、伝わって、受け止められる。想いがダイレクトに伝わることだと考えています。いつも中心にあるのはヒトなんです」。すでに多くの人が訪れている虎ノ門ヒルズですが、そんな想いが開発の裏側にあったとは。実際に店舗オーナーや、入居しているホテル「アンダーズ東京」のチームと、数回にわたって開業前の懇親会を開いたのだとか。新しくて、洗練されている佇まいながらも、なぜか人のぬくもりを感じるのは、人と人、人と場所がどんどんつながっていく”ギャザリングハブ”として機能しているからなのかもしれません。

吉田誠さん
森ビル株式会社商業施設事業部。赤坂・虎ノ門エリア店舗運営室室長として虎ノ門ヒルズのリーシングの統括や、開発にあたってのコンセプト策定に携わる。

[TALK 3]高尚だった写真アートがカジュアル化してませんか?

(左)写真アートのハイカジなスポットに『Gallery 916』」を挙げてくれた河内さん。外観は倉庫のようだが、一歩踏み込むと600平米の空間に、写真界の重鎮たちがキュレーションした作品が並ぶ(右)河内さんが所属するアマナ運営の「IMACONCEPT STORE」は「写真と暮らす」をテーマに作られた写真の複合施設。写真アートがある生活を垣間見ることができ、カジュアル化が感じられる場所

作品も、アーティストも、
身近に感じる"場"作りが
盛んになっています。

「有名・無名にかかわらず、写真アートの作品を実際に見て楽しんだり、“撮る”だけでなく”観る”ことについても、深く学ぼうとする人たちが増えているように思います」と話すのは、日本の若手写真家による作品を収集する「amana photo collection」のチーフディレクター・河内タカさん。写真展やワークショップ、イベントが、最近人気を集めていることから感じられているそう。一昨年、ライアン・マッギンレーによる日本で初の個展の際、動物と一緒にポートレートを撮ってもらえるイベントに多くの人が訪れたことを思い出します。「アーティストが”観る側”と作るコラボ的な作品は今後盛んになっていくのかもしれません」。今までは、作家と言えば大御所の名前しか一般的には知られず、高尚な分野に思えたものですが、カジュアルに楽しめる”場”が増えてきているのです。「また、自分が撮影したものではない既存の写真を使って作品を作る『ファウンド・フォト』など、撮影の技術や知識が特になくてもアートの制作ができる、以前はなかった表現が生まれていますね」。新しい手法が生まれたり、写真アートだけでなくコアなカルチャー情報も手軽に入ったり、自分が作り手にも回れてしまう、このようなカジュアル化は人々の趣向の多様化に要因があるのだとか。「一般にもてはやされるもの以外に価値を見出す人が潜在的に多くいるということなのでしょう。そういった人たちにとって”ハイカジ”という潮流は魅力的。気負いがなく、ひとつ高いレベルを意識したライフスタイル。写真アートであれ、食の分野であれ、それが今の時代の気分なのかもしれません」

河内タカさん
株式会社アマナ「amana photo collection」チーフディレクター。2012年Aperture社のインターナショナルアドバイザーに就任。

Text:浅井直子(1)、田中恵里菜(GRINGO&Co.,3)

※こちらの記事は2014年7月20日発行『メトロミニッツ』No.141に掲載された情報です。

更新: 2016年10月10日

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