ワインとシャルキュトリ#5

実力派シェフの個性が光る自家製の数々

街でワインとシャルキュトリ①
「LAUBURU」

Photo 鵜澤昭彦 Text 下前ユミ

本場フランスのシャルキュトリで修業をしたシェフ、1年間かけて自家製の生ハムを仕込むシェフ、50種類もの自家製シャルキュトリを作るシェフ…そう、いよいよ東京にもシャルキュトリの文化が根付こうとしています。これから日本のシャルキュトリ文化の発展のカギを握る東京の作り手に会いに行きました。

「ローブリュー」のフロマージュドテット1,728円。豚の頰肉やタン、耳、豚トロなど、ゼラチン質たっぷりの部位を丁寧に下ごしらえし時間をかけて柔らかく煮上げた後、顔の皮で中身を巻いて作られている。一般的な冷製ではなく、ラヴィゴットソースとともに温製で提供する。その理由は「温かい方が美味しいから」とのこと

LAUBURU|表参道

気取らない家庭の味を追い求めた フランス人が通い詰める名店

「ローブリュー」の自家製のシャルキュトリ。同じ肉とは思えないほど、見た目も味も食感も異なる。この他にクスクスに添える「メルゲーズ」や赤い色の「ストラスブルグ」というソーセージ、生ハム、テリーヌなど15種類ほどを用意。「シャルキュトリにはジュランソンの白ワインだね」と櫻井さん

「シャルキュトリって、その土地で暮らす庶民が食べるその土地に根差したものだと思うんですよ」と言うのはオーナーシェフの櫻井信一郎さん。5年間のフランス修業時代に櫻井さんが最も感銘を受けたのがバスク地方だそう。バスクの十字架を意味する「ローブリュー」を店名に冠したこの店をオープンしたのが2002年3月。ヨーロッパの食生活に欠かせない豚肉料理をメインに、バスクの伝統料理、現地のシャルキュトリ専門店で学んだ手作りの生ハムやソーセージなどのシャルキュトリを数多く盛り込んだ骨太なフランス料理を提供。家庭の味を求めて通い詰めるフランス人のお客様も多く、彼らの「マンマの次に美味しい」という賞賛の声も櫻井さんの原動力です。

上から、田舎風パテと豚のど肉と皮のパテ

シェフとしては珍しい、フランスのシャルキュトリ専門店で働いた経歴を持つ櫻井さん。きっかけは、「フランス人が毎日食べている家庭料理とは、一体何なのだろうか」という疑問から渡仏。そこで見つけた答えが、彼らの家庭料理に欠かせない存在の“シャルキュトリ”だったのです。フランスには「シャルキュティエ」と呼ばれる職人がいて、料理人がシャルキュトリを作ることはありません。「どうやって作るのだろう。自分で作ってみたい」と思い、コック仲間に「シャルキュトリ専門店で働きたい」と話した時には「頭でもおかしくなったのか」と言われたほど、畑違いなことだったようです。

メニューはアラカルトのみ

シャルキュトリは、肉の旨みを最大限に引き出しながらその旨みを凝縮したヨーロッパ全土に存在する完璧な保存食。フランスの家庭では、おばあちゃんが先頭に立って作るそうです。製法も塩蔵、乾燥、燻製など様々でバリエーションも豊富。さらに、その土地の食材や独自のスパイスを用いた地方、村、個々の自慢の味がありました。だから櫻井さんが作るシャルキュトリも“日本の環境でできる最良のもの”を目指しています。「フランスで学んだ通りに日本で生ハムを作ったら今ひとつ味が足りなかったんです」と櫻井さん。その理由は、フランス語のレシピ本を翻訳しても見つからず、試行錯誤を繰り返して作り続けるばかり。ある日、フランス人に質問してみると「ワインと一緒に保存している」と。そこからひらめいて、ワインセラーを改造した生ハム専用の熟成庫が誕生しました。

店内にはフランス語の書籍が並ぶ

自家製の生ハムは毎年10月上旬に仕込みを始めます。1カ月がかりで血抜き、塩漬け、塩抜きした後、11月中旬に長野県東御市の山荘へ運びます。標高は約1,100mで、湿度は65~70%。山荘内に吊るし干しして約10カ月かけて乾燥させます。その後、店内の熟成庫で最低6カ月熟成。1度に仕込める本数は8本。この生ハムを楽しみにやってくるフランス人のお客様も多く、毎年2月にメニューに並ぶと、5~6月には売り切れてしまう人気ぶり。そう、櫻井さんの作るフランス料理は、いわゆる高級フレンチではなく、フランスの日常で食べられる家庭料理なのです。

櫻井信一郎シェフ

1961年、東京日本橋生まれ。幼少の頃より料理人を目指す。1988年より5年間渡仏。レストランのみならず、現地のシャルキュトリ専門店でも修業経験を持つ。2002年3月、南青山に「ローブリュー」を独立開業

ローブリュー
☎03・3498・1314
東京都港区南青山6・8・18
18:00~21:30 LO 日定休・8月中旬および年末年始は休業

※こちらの記事は2016年10月20日発行『メトロミニッツ』No.168に掲載された情報です。

更新: 2018年3月29日

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