ワインとシャルキュトリ#2

日本シャルキュトリ協会会長・ポコさんに聞いた

“シャルキュトリ”というフランス文化

Photo 菊池良助

日本でフランスのシャルキュトリを正しく伝えていきたいと活動している「日本シャルキュトリ協会」。ここではその会長、シェフのクリストフ・ポコさんに話をお聞きします。こちらからの最初の質問は、「ハムやソーセージはヨーロッパ中で古くから食べられてきたものだと思いますが、シャルキュトリはフランスのものですか?」

クリストフ・ポコさん

フランス・リヨン出身。「ルグドゥノムブションリヨネ」オーナーシェフ。15歳で料理の世界に入り、ミシュラン2ツ星「ジル」他、名店で修業を重ねる。25歳で来日し、ル・コルドン・ブルー東京の教職、ホテルソフィテル東京の総料理長などを経て、2007年独立

「確かに、ヨーロッパ各地にハムやソーセージはありますが、〝シャルキュトリ〞はフランス語ですし、フランスの食文化です」。そう話す、ポコさん。シャルキュトリにはワイン同様にテロワールがあり、その土地ならではの風土や知恵が息づいている。だから、イタリアにはイタリアの、ドイツにはドイツの食肉加工品があり、フランスとは育ってきた背景が異なる食文化だと言います。

「私の生まれ育ったリヨンはよく美食の街と言われますが、アンドゥイエットやソシソン・ド・リヨンなど、昔からひと際シャルキュトリ作りが盛んな土地柄です。街のブション(地元料理とワインが楽しめるリヨンならではのビストロ)で、ポリヨネ(リヨンとボジョレだけで使われている伝統的なワイン専用のガラス容器)に入れられたワインとともに様々なシャルキュトリを楽しむというのがリヨンらしい光景です」。そんなポコさんの子どもの頃の思い出は、料理上手のおじさんが週末に作ってくれたテリーヌだとか。家族で食べるシャルキュトリは、テリーヌ型に入った塊のままテーブルに運ばれてくるテリーヌなど、大皿から皆でシェアして食べるのが楽しかったと言います。

リヨンから北へ30kmも行くとあるのがワインの名醸地ボジョレ。ルグドゥノムブションリヨネでも、ポコシェフが敬愛する生産者たちのワインを揃えている

このようにシャルキュトリはフランスでは暮らしの一部で、誰でも子どもの頃からごく身近な存在。しかし、私たち日本人にとってはまだまだ知らないことばかりで、どのように食べ、どのように選んだらいいか、わからないことが多いもの。良質で美味しいシャルキュトリとはいかなるものかが、如何せん判断しにくいように思うのです。
「シャルキュトリは種類が非常に多く、どれが美味しいか、どんなワインに合うかなど、何か1つの答えを導き出すのは難しいですね。だから、いろんなものを食べて、経験を積み重ねて、自分の好みを探すのが良いのではないでしょうか。例えば、日本には各地に様々な味噌がありますが、味が全然違うと思います。でも外国人には、白味噌と赤味噌の味の違いは話を聞いただけでは、想像がつきません。一度、食べてみるしかないのです」

自家製リヨン風ソーセージ白インゲン豆ピューレとルッコラ(1,500円)。白いんげん豆のピューレが敷かれた皿の上に、コンソメで温められたソーセージが載っている。上にかかった泡の正体は焦がしバターで、醤油で香り付けされている

また、もう1つ、私たちにはややこしいことがあります。「シャルキュトリ」の言葉の意味です。「シャルキュトリ」は食肉加工品の総称のことで、その多くは豚肉を原料としますが、鴨やジビエなど他の肉を使うこともある。…と、ここまではわかりやすいのですが、さらに、それらを販売する店のことも「シャルキュトリ」と呼び、そこでは惣菜類も扱っている。だから、シャルキュトリに置いてあるような惣菜類もシャルキュトリと呼んで良いそうです。例えば「シャルキュトリ・パティシエール」とは、シャルキュトリを生地で包んで焼いたものの総称で、パテのパイ包みはもちろん、タルト・フランベ(アルザス地方のピザ)、キッシュ、クロックムッシュも含むと言います。

コショナイユブションリヨネ風(1,500円)。シャルキュトリの盛り合わせで、パテドカンパーニュ、軽く燻製したリエット、ニンニク風味のソーセージ、フランス産のサラミとピクルスで、サラミ以外は全て自家製。シェフおすすめのワインは、ドメーヌ・ド・ラ・グランクールフルーリーキュヴェ・ヴィエイユ・ヴィーニュレ・クロ(9,500円)。木イチゴやすみれの香りに、複雑味、タンニンが感じられるビオワイン

「しかし、基本はやはり食肉加工品のことです。私はキュイジニエ(料理人)ですが、他にブーランジェ(パン職人)、パティシエ(菓子職人)、そしてシャルキュティエという人たちがいます。つまり、食肉加工も専門の職人がいるほど、1つの「食」分野として確立しています。私たちは、その魅力を日本で広く伝えていきたいと思い、2013年に『日本シャルキュトリ協会』を立ち上げました。フランスの豊かな食文化であるシャルキュトリを、これからもっと東京の食のシーンに取り入れてほしいと考えています。フランスには職人がいますが、東京にはまだ専門店も少ないので、今はレストランのオーナーがシャルキュトリを自家製するのも良いことではないでしょうか。手間はかかりますが、シャルキュトリは作り手のアイデンティティを表現できますので、お店の個性も強まるはずです」

そろそろワイン文化も成熟しつつある東京ながら、本場では長い年月、最高のワインの友であったシャルキュトリ文化の広がりが少し遅れ気味。しかし、今後、自家製する店が増えてくると、東京にも東京ならではのシャルキュトリとの付き合い方が生まれ、新しい「ワインとシャルキュトリ」文化が育っていくのかもしれません。

「ソワレスペシャル☆シャルキュトリ×ボジョレ・ヌーヴォー」開催

今年もまもなくボジョレ・ヌーヴォー解禁日がやってきます(11月17日)。ルグドゥノム・ブション・リヨネではそのお祝いにディナーイベントを開催。岩手県「久慈ファーム」のブランド豚《佐助豚》を使ったスペシャルシャルキュトリとボジョレのマリアージュが楽しめます。
●日時:11月17日(木)18:30受付/19:00スタート
●会場:ルグドゥノム・ブション・リヨネ
●参加費:9,900円(税・サ10%込)
●定員:40名様(着席)
●主催:日本シャルキュトリ協会(会員登録受付中!)info@charcuterie.jphttp://www.charcuterie.jp/
●お申し込み・お問い合わせ:ルグドゥノムブションリヨネ
☎03・6426・1201Info@lyondelyon.comhttp://www.lyondelyon.com

※こちらの記事は2016年10月20日発行『メトロミニッツ』No.168に掲載された情報です。

更新: 2018年3月13日

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