TOKYO ELITE RESTAURANTー世界に自慢したいシェフ
|アイデンティティのあるイタリア料理のシェフ[1]|
イタリア20州を感じる旅へ

本特集は、先にご紹介した“東京エリートレストラン第1弾“フランス”に続く、第2弾“イタリア”です。イタリアと言えば、ミラノ万博が話題に。「地球に食料を、生命にエネルギー」をテーマに、140以上の国と地域が参加、世界中からおよそ2,150万人もの来場者が集まり、大いに盛り上がりを見せました。日本からも精鋭の料理人たちがミラノへ渡り、その腕前を披露したことはまだ記憶に新しいかと思います。そんな盛り上がりが冷めやらぬまま、2016年には、日伊国交150周年の記念の年を迎えます。1866年に日本とイタリアが修好通商条約を結び、国交を開設してから150年が経とうとしているのです。この時の中で、日本人はイタリアという国に憧れ、ファッション、車、デザイン、サッカー、映画など、あらゆるイタリア文化を暮らしの中に取り込んできました。中でも、「イタリア料理」は私たち日本人にとって、最もイタリアを身近に感じる日常的なものではないでしょうか。しかし、そんなイタリア料理は今、何度かのブームを経て、爛熟とも飽和状態とも言われています。本場イタリアの味を日本で再現したいと奮闘した創成の時代から、数十年が経ち、今やシェフが己の“アイデンティティ”を武器に、勝負をする時代となったのです。本特集では、イタリアの風土や歴史に見る料理の背景を紐解き、イタリア料理を日本に根付かせた立役者たちに敬意を払い、その時代の変遷を辿りながら、今東京のイタリア料理界の最前線を猛烈な勢いで走る精鋭シェフたちのアイデンティティに迫りたいと思います。

<東京エリートレストランとは>

世界ーの美食の街と謳われる、食都「TOKYO」。ミシュランガイドの星の数においては世界最多を覆得し、その実力を世界に知らしめました。ここ東京は、美食家たちを魅了するワールドクラスの実力店が犇めき合っているのです。その中でも、グルメシーンの最前線を雄飛する、選りすぐりの精饒シェフたちの存在。そんな店の作り手でもある、凄腕の料理人たちが腕を振るう飲食店のことを、私たちは「東京エリートレストラン」と、敬意をもって名付けることにしました。本特集は、そのようなシェフたちを、自信を持って世界に自慢したいという思いから生まれました。その第2弾としてイタリア料理の名シェフたちをご紹介し、改めてその魅力をお伝えしたいと思います。

地図と表で巡るイマジネーションTRIP!?

イタリア20州を感じる旅へ

イタリア料理についてお話する前に、まずはイタリアという国のお話から、ということで、早速イタリアへ行ってみましょう!もちろん、想像での話ですが…実際にイタリアに行ったことがある人もない人もこちらの地図から、頭の中でイタリアを想像してみてください。HAVE A NICE TRIP!

Illust イフクカズヒコ

イタリア20州の地方色

イタリア料理は、素材も調理法も多様な郷土料理の集合体と言われていますが、まさにその豊かな地方色こそがイタリア料理の魅力です。ここでは、全州の特徴を名産や名所と合わせて、ダイジェストでお届けします。

イタリアの北部の国境にはアルプス山脈、中央には南北を縦に走るアペニン山脈があります。また、日本と同じく海に囲まれ、南北に長く、日本の面積の約8割という国土を持っています。そのため、北と南とでは気候も風土も異なり、山岳部、沿岸部、平野部ごとに、多様な暮らしが存在するのです。なお、イタリア20州は大きく分けると北部、中部、南部に分けることができますが、統一国家として今の形になったのは1861年のこと。それまでは、各都市が異なる独立国家として成立し、常に国家間で領土争いを繰り返していました。このような歴史的出来事も影響したことで、20州が全く異なる文化を備えているのです。では、さっそくその違いを見比べてみましょう。

【州名/州都】

ヴァッレ・ダオスタ州/アオスタ
20州で一番小さな州。ヴァッレという州名通り、渓谷(ヴァッレ)の連なる山岳地。名峰モンブランでフランスと、マッターホルンでスイスと国境を接するため、イタリア語に限らず、フランス語も公用語。フォンティーナチーズで作るイタリア版チーズフォンデュ・フォンドゥータが有名。

ピエモンテ州/トリノ
イタリア屈指の工業地帯で、州都トリノには国内最大の自動車メーカー・フィアット社があり、ビエッラには羊毛を中心とする繊維工場が並ぶ。州人口の約半数はトリノに集中。フランスと隣接し、食の影響も強い。白トリュフが名産で、バローロなどワインの銘醸地でもある。

リグーリア州/ジェノヴァ
北部とは言え、周辺の山々に冷気が遮られて気候は温暖。大貿易港がある州都ジェノヴァ、海岸からの斜面に佇む世界遺産のチンクエ・テッレ、イタリアを代表する海のリゾート・ポルトフィーノやサンタ・マルゲリータなど、美しい海と寄り添う州。ジェノヴァペースト発祥の地。

ロンバルディア州/ミラノ
州都ミラノは、経済やビジネスの中心であり、ファッションとデザインが2大産業。料理においても新しいものに柔軟。ミラノにはミシュラン二ツ星「クラッコ」、「サドレル」、「イル・ルオーゴ・ディ・アイモ・エ・ナディア」が、マントヴァには三ツ星「ダル・ペスカトーレ」がある。

トレンティーノ=アルト・アディジェ州/トレント
ほぼ全域が山岳地帯。3,000m級の山々が連なり、ハイキング、夏の登山、ウィンタースポーツなどの目的で年間500万人以上が訪れる。隣接するオーストリアに支配されていたため、イタリア語とドイツ語が話される。食にもドイツやオーストリアの影響が強く、パスタ料理よりもスープ類が多い。

フリウリ=ヴェネツィア・ジュリア州/トリエステ
山岳部とほぼ同面積で、平地が広がる。州の中心に当たる地域は、生ハムの名産地サン・ダニエーレ。また、白ワインの優れた産地としても国際的な評価を得ている。平野ではとうもろこしが栽培され、この地域の主食・ポレンタ作りを支えている。

ヴェネト州/ヴェネツィア
貿易の街として1000年にわたって栄えた水の都ヴェネツィアが州都。また、ヴェローナにはローマ時代の遺跡や中世の街並みが残されており、世界遺産の1つ。ロミオとジュリエットの舞台でもある。海の幸がイメージされがちだが、北はオーストリアに隣接しており、山の幸も海の幸も豊富。

エミリア=ロマーニャ州/ボローニャ
ボローニャは、コペルニクスやダンテを輩出したボローニャ大学、歌劇場などがある学問と芸術の町。また、パルミジャーノチーズと生ハムの産地パルマ、バルサミコ酢のモデナなど美食の町が連なる。「世界のベストレストラン50」第2位の「オステリア・フランチェスカーナ」もモデナにある。

トスカーナ州/フィレンツェ
ルネサンスが花開いたフィレンツェなど、数々の古都を擁す州。また、キャンティなど、イタリアを代表するワインの銘醸地もある。地形的には、丘陵・山岳地帯。キノコなどの山の恵みを活かし、オリーブや香草を多用した料理が多い。三つ星店「エノテーカ・ピンキオーリ」がある。

マルケ州/アンコーナ
長靴型のふくらはぎ部分。州全体が丘陵か山岳地帯であり、平野部はほぼない。ルネサンス建築や芸術作品が数多く残され、見所は多い。加えて、マルケの人はとても温和で親しみやすいと言われており、旅人に愛される街である。ヴェルディッキオなど、ワインの生産も盛ん。

ウンブリア州/ペルージャ
20州で唯一海に面していない内陸の州。70%以上が丘陵地帯、残りは山岳地帯という地形から「緑のハート」と呼ばれる。ペルージャのアッシジには、キリスト教の聖堂など修道施群がある。チョコレートが有名で、秋の祭典ユーロチョコレートは大人気。その他、黒トリュフも特産である。

ラツィオ州/ローマ
首都でもあるローマは、各地から多くの人が移入している大都会ながらも、伝統的な食文化をきちんと守っている数少ない街である。また、羊乳から作るペコリーノ・ロマーノが名産。ハインツベックがエグゼクティブシェフを務める「ラ・ペルゴラ」もローマにある。

アブルッツォ州/ラクイラ
丘陵地帯、山岳部の険しい地形であり、沿岸部より山間地の方が広いため、魚介料理よりも羊や豚肉料理の方が豊富。特に、羊飼いは紀元前から続いている。またギターという意味のパスタ「キタッラ」や、結婚式の引き出物の定番コンフェッティ(ドラジェ)作りの発祥の地。

モリーゼ州/カンポバッソ
1964年にアブルッツォ州から分離して生まれた、最も新しい州。平野がほぼなく、山岳地域は雪に覆われた白い季節も長い。州都には12~14世紀の街がそのまま残る地域があり、モンフォルテ城やロマネスク様式の美しい教会が見られる。硬質小麦の産地で、小さなパスタ工房が健在。

カンパーニァ州/ナポリ
風光明媚な歴史的建築の多い州都ナポリ、カプリ島の青の洞窟、ボンベイの遺跡、アマルフィ海岸など世界的にも知名度のある観光地を擁する。ナポリはトマトの一大産地、水牛のチーズ・モッツァレッラも原産で、カプレーゼは、「カプリ島のサラダ」の意味。ナポリピッツァ発祥の地。

プーリア州/バーリ
南北に400km以上ある細長い州。山岳地帯の多い南イタリアでは珍しく肥沃な平野が広がっており、農業が盛ん。また、とんがり屋根の石積みの家屋が並ぶアルベロベッロ、白壁の町・チステルニーノなど、文化的にも充実している。耳たぶ型のパスタ「オレキエッテ」が定番。

バジリカータ州/ポテンツァ
長靴型の土踏まず部分。土地の大半をアペニン山脈が占める。州都ポテンツァは、街の詳しい起源は解明されておらず、古代ローマ以前の遺跡が近年発掘された。マテーラは世界遺産のサッシ(洞窟の居住群)が見所。また、サルシッチャ(腸詰め)発祥の地で、豚肉加工品の生産も盛ん。

カラブリア州/カタンツァーロ
イオニア海とティレニア海に挟まれ、山にも恵まれた州。寒暖の差があるため、この地域の果物や野菜は濃厚で旨みが凝縮されており、特にベルガモットなどの柑橘類やオリーブの生産が盛ん。カラブリア料理の特徴は、ペペロンチーノ(唐辛子)をたくさん使うこと。

サルデーニャ州/カリャリ
サルデーニャ島と周辺の島々の州。手付かずの自然が残る周辺の海は素晴らしく、エメラルド海岸(コスタ・スメラルダ)など、高級リゾート地として人気。漁業よりも牧羊が盛んで、遊牧民サルディの歴史に由来して「羊飼いの島」と呼ばれる。ボッタルガ(カラスミ)が特産。

シチリア州/パレルモ
地中海最大の島で、20州で一番大きい州。ヨーロッパ最大の活火山・エトナ火山もある。漁業の他、柑橘類の栽培も盛んで、赤い実のブラッドオレンジが有名。歴史的に数多くの国の支配を受け、各国の文化の影響を受けた料理が多い。魚介のクスクスや、アランチーニなどがその例である。

Text:松島千冬

※こちらの記事は2015年11月20日発行『メトロミニッツ』No.157掲載された情報です。

更新: 2016年9月15日

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