ビストロの現在地 #10

東京のビストロ

bistro simba
[新富町]

今、東京にもビストロは無数に存在します。しかし、時代ごとに人々の心を満たしてきた、フランスのビストロが抱く“エスプリ”を知っている店となると、おそらく限られています。しかし、これよりご紹介するのはフランスで料理を学び、本場の文化を経験したことがあるシェフが手がける、東京のビストロです。それぞれがフランスのエスプリを独自の目線で店に込め、東京らしいビストロに育て上げています。

人一倍深い食材への思いを 突き詰めたら 「シンプル」と「香り」が軸になる

「ル・プティ・ニース・パセダ」など、フランスの 名だたるガストロノミーと、パリのビストロ ノミーブームの火付け役となった「シェ・ミッ シェル」などのビストロノミー。対照的な2つ の世界で10年に渡り修業を積んだオーナー シェフ、菊地佑自さん。ガストロノミーの厨房 を体験したが故に、大切なものを確信したの です。

修業したビストロノミー「シェ・ミッシェル」のスープ・ド・ポワソンをアレンジした、えび香るシンバ特製ブイヤベース、ココット2,376円。濃 醇なエビ出汁の香りに包まれ、クリアな味わいが口の中に広がる

ガストロノミーから、大きく舵を切ってビストロノミーへ。その転機が訪れたのは渡仏して4年目のことでした。両者の最大の違いは、「食材の扱い方」と、菊地さんは言います。「ガストロノミーでは、1皿の完成度を追求するあまり、たとえ最高級のフォアグラであろうとも、使用するのは中心部のみ。食材への思い入れが強い自分は、違和感を抱き、食材を丸ごと使うビストロノミーに移りました」。そこでは、タラをさばいたら、背の部分はロースト。腹部はじゃがいもと混ぜてブランダードに。残ったアラはスープにと食材をフル活用。これこそ求めていた理想の形でした。そんな菊地さんの思いを込めた1品が、特製のブイヤベース。テーブルに運ばれてきたココットの蓋をパッと開けた瞬間、ふわーっと広がるのは、なんとも豊かなエビ出汁の香り。「出汁の材料は、オマールエビと甘エビの頭を香ばしく炒めたものと、調理で出た魚のアラ全てです」。まさしく「シンプルで、香りがあり、温かいままテーブルに出す」という菊地さんのコンセプトがよく表れた1品。「シンプルを目指せば目指すほど、食材が決め手」と目を輝かせ、毎朝築地で魚を選び、栃木や青森の野菜の生産者のもとへ。愛する食材を手に入れ、ガストロノミーとビストロノミーの美学を合わせ持った菊地さん。間違いなく、現在、いや、今後も、東京のビストロノミー界を牽引するであろう、本国と時差のない料理を、ぜひ、お試しあれ。

シンバ特製ブーダンノワールと紅玉のピュレ1,404円。こちらも豚を余すところなく使うために生まれた料理。ワインはビオワインが中心

オープンキッチンからは、「食べる前から食べたいと思ってもらえるよう、香りを意識している」という言葉通り、料理ができ上 がるたびに、出汁やハーブのなど素材の香りが漂ってくる

|CHEF|菊地佑自さん -Yuji Kikuchi-

1976年、東京都生まれ。石鍋裕シェフの下で修業をスタートした後、 渡仏。三ツ星「ル・プティ・ニース・パセダ」(当時二ツ星)などを経て、 パリで人気のビストロノミー「シェ・ミッシェル」「ラミジャン」など、10 年に渡り修業し帰国。2015年に現店オープン。

☎03・6264・4218
東京都中央区銀座1・27・8
火~土17:30~翌1:00(24:00LO)、日17:00~24:00 (23:00LO) 月定休

更新: 2017年5月22日

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