ビストロの現在地 #15

東京のビストロ

Small Wonderland
[銀座]

Photo 松園多聞 Text 浅井直子

今、東京にもビストロは無数に存在します。しかし、時代ごとに人々の心を満たしてきた、フランスのビストロが抱く“エスプリ”を知っている店となると、おそらく限られています。しかし、これよりご紹介するのはフランスで料理を学び、本場の文化を経験したことがあるシェフが手がける、東京のビストロです。それぞれがフランスのエスプリを独自の目線で店に込め、東京らしいビストロに育て上げています。

フランスで体得した食の楽しさをガストロノミーの頭と腕で再現する

歌舞伎座の真裏にある「Small Wonderland」は、2011年にオープン。それまでガストロノミー一筋だったにも関わらず、オーナーシェフ、堀宏至さんが独立時に選んだのは、ビストロの形でした。現地のフランス人とワインを酌み交わして知った食事の本当の喜びを、東京で。楽しさと美味しさを支えるのは、ガストロノミーで培った腕です。

ビストロにもかかわらず店名は英語!? おすすめは鹿肉バーガー!? 変化球の連続かと思いきや、それは、堀さんが、「ガストロノミー仕込みの頭と腕を使い、親しみやすい料理を楽しい空間で提供する」というお店のコンセプトを、直球で表現した結果でした。

「カジュアルな食べ物の代表、ハンバーガーを、あえてその目線で作りたくて。木苺を練り込んだ自家製バンズに、火入れをコントロールした鹿肉のパティを挟む。このバーガーは、れっきとしたフランス料理です」と、胸を張ります。

そう言えば、堀さんのフランスでの修業先の1つで、三ツ星を50年間獲得し続けている「オーベルジュ・ド・リル」も、絶妙な火入れの鹿肉のスペシャリテで知られる名店。「向こうではランクの高い店ほど、火入れに細心の注意を払います。調理の面では、ビストロという形でも妥協しません」。

ガストロノミー畑のみを渡り歩いた6年間は、堀さんにとって、「フランスらしさ」を体得した時間でした。「夜中にコンビニは閉まるし、メトロはいつも止まるし、日本よりはるかに不便。でも、フランス人とお酒を飲んでいると、不思議と人生が楽しくなるんですよね」。その感覚が忘れられず、緊張感のある星付きの調理場から、こじんまりでも、クオリティの高い料理はそのままに、会話が弾むカウンターへ。堀さんにとっても、お客さんにとっても、そこはまさに、「スモールワンダーランド」と言えるのかもしれません。

相性の良い鹿肉と木苺の組合せ。木苺を練り込んだ自家製バンズと、赤ワインソースの酸味が、鹿肉を引き立てる。ポテトフライは二度揚げし、ローズマリーで香り付け。フランス料理らしさが溢れた鹿肉バーガー2,000円

左/ボリュームたっぷりの前菜の盛合せ2,200円。内容は日替わり。この日はパテドカンパーニュ、いわしとじゃがいものタルト、魚介のサラダなど 右/1階は堀さんとお客さんのトークで毎晩盛り上がるカウンター。2階はフランスで出会った画家大田和亜咲宜さんが描いた南仏の絵が飾られ、いっそうリラックスした雰囲気のテーブル席

|CHEF| 堀宏至さん -Hiroshi Hori-

1977年、東京都生まれ。「オーベルジュ・ド・スズキ」を経て、渡仏。リヨン「オーベルジュ・ド・リル」などフランス各地で6年間修業を積み、帰国。二ツ星の「エディション・コウジ・シモムラ」、一ツ星の「レヴェランス」料理長などを経て、2011年11月独立。

スモールワンダーランド
TEL 03・3547・3805
東京都中央区銀座4・12・2
18:00~23:00(22:00LO)
日定休

※こちらの記事は2017年5月20日発行『メトロミニッツ』No.175に掲載された情報です。

更新: 2017年5月22日

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