COFFEE AND TOKYO # 11

special feature
featuring J-WAVE 81.3 FM
コーヒーと時代
~当代のコーヒー家の言葉~

続いてご登場いただくのは、コーヒーがぐんと多様化したここ10年の間にお店をオープンし、今の東京のコーヒーシーンを牽引する4名の立役者たち。彼らの言葉から見えてくる、コーヒーの今とこれから。

下北沢
BEAR POND ESPRESSO
since 2009

全てはここから始まった――写真は、NYのサードウェーブの渦中でバリスタを経て、2009年「ベアポンドエスプレッソ」(以下、B.P.E)をオープンした田中勝幸さんが、2007年から日々エスプレッソの抽出データを綴った年代手帳、登場した著名な海外の新聞、本、映画と、積み重ねた実証です。田中さんは砂漠に運河を引き込むように、日本のコーヒーシーンの開拓者となり、トレンドを生み出しました。しかし、当の本人は、すでに、新たな運河造りに着手していたのです。

ブームのその先へ。
立役者が提案する次の形は、内を見つめる「コーヒーハウス」

「エンジェルステイン」と名付けた唯一無二のエスプレッソ。メイソンジャーでの提供。インショップ。パブリックカッピング。どれも、ここから始まったコーヒーカルチャーです。僕は当時、これから誕生するトレンドに一石を投じただけ。そこで生じたリッピング(波紋)を広げたのは、今の若者たちです。NYで本格的にバリスタのトレーニングを始めて以来、天気、豆の状態、水量など、エスプレッソの抽出に影響するデータは今も、毎日記録。品種は、米・COUNTER CULTURE COFFEE時代に熟知していたので、自分の中では次の世界に進みたかった。そして、無意識のデータを意識によって形にしたのが、3月の渋谷「No.8ベアポンド」のリニューアルです。ちなみに意識の中から捻り出したアイデアは、しょせん誰かのコピー。無意識の中の膨大なイメージから意識的に選択した考えだけが、オリジナルです。「B.P.E」も新「No.8」も、コンセプトは「be in」(中にいる)で、席は窓の外を向いていません。それは、be in BEAR PONDと同時に、bein TOKYOを意味します。外を通る人を羨ましく眺めるのではなく、内を見つめる。例えば、憧れて東京に来たはずなのに、今、つまらないと感じているなら悪いのは東京じゃない。あなたのパッションがなくなっただけ。再び自分の人生を生き抜こうと思えるような、エネルギーに満ちた「コーヒーハウス」です。

「ベアポンドエスプレッソ(写真)」
Tel03・5454・2486 東京都世田谷区北沢2・36・12 11:00~17:30 火定休 ※エスプレッソは11:00~12:00( 数量限定)
「ベアポンドエスプレッソロースターズNo.8」
Tel03・6427・7273 東京都渋谷区渋谷1・17・1 美竹野村ビル1F 平日10:00~23:00、土日祝11:30~23:00 不定休

三宿
NOZY COFFEE
since 2010

コーヒーの魅力に目覚めた学生時代を経て、当時、23歳の若さで、仲間と共にいち早くシングルオリジン専門店「ノージーコーヒー」をオープンした能城政隆さん。それから、7年。能城さんは、「恐らく、自分が生きている間には、シングルオリジンの価値が伝わらないかもしれない。でも、だからこそ、チャンスを感じる」と言います。当初から変わらない思いを抱きながら、コーヒーの価値を広めるために、現在ある企画を進行中のようで…。

スペシャルティコーヒーの普及はまだこれから。
伝える土壌がようやく、整ってきた段階

本当に美味しいコーヒーを伝えたい、そして、自分自身も、コーヒーをもっと深く探りたいという思いはオープン当初から変わりません。驚くようなフレーバーやキャラクターを持つ、高品質なスペシャルティコーヒーと出合うたびに、今もわくわくし、感動します。それくらい、コーヒーは自分にとって、価値の高い飲み物。とは言え、当時は、カフェと言えば、空間やうつわ、BGMなどの追求が先行していて、コーヒーのクオリティは後回しだったり、ニカラグアのコーヒーというだけで、「よくわからない」と敬遠されたりすることも。ですから、この7年間の課題は、飲む人の先入観をどこまで取り除けるかでした。スペシャルティの世界へ導入するために、セミナーを開催し、「そもそもコーヒーはフルーツの種で…」という話から始めて実際に飲んでもらうと、コーヒーの概念が変わったという参加者が徐々に増えていきました。現在も定期的なセミナーやワークショップを開催し、地道に1人ずつ意識を変えていけたらと思います。さらに、コーヒーの価値を上げる取り組みとして進行中なのが、不特定多数の利用者が出入りするホテルでの展開です。ラウンジで提供されるコーヒーの価値は、正直に言って、味よりも、空間が先行している象徴的な例。以前からそこで美味しいコーヒーが飲めたら、コーヒーへの認識が変わるのではと思っていました。今、やっと、スペシャルティコーヒーに触れてもらえる土壌が整ってきたのだと実感しています。

「ノージーコーヒー」Tel03・5787・8748 東京都世田谷区下馬2・29・7 10:00~19:30 不定休

代々木公園
Little Nap COFFEE STAND
since 2011

イタリアでバール文化に触れたのをきっかけに、バリスタを始めて今年でちょうど、20年になる濱田大介さん。「公園の周りで、ローカルに根付いたコーヒースタンドを」という理想の下、代々木公園の近くに2011年、オープン。その1カ月後に起きた東日本大震災をきっかけに、さらに地域にコミットして行きます。取材中も、次々に訪れる常連さんの挨拶に応える濱田さんは、今年2月、2店舗目を開店しました。6年前の船出と同じく、静かに。

次のステージもご近所の生活の一部に。
見ている先は変わらず「ローカル」

「リトルナップコーヒースタンド」のオープンから6年。自分の出したい味をもっと明確に作るため、この2月、富ヶ谷に作った2店舗目「リトルナップコーヒーロースターズ」には、焙煎機を入れました。今は、焙煎している時間が楽しくて仕方ないです。それ以外では自分自身、あまり変わった気がしません。東京全体のコーヒーの動きも、実は、あまりわかっていなくて( 笑)。ご近所にフグレンやパドラーズコーヒーなど、友人の店が増えてきたとは思いますが。「サードウェーブ」という言葉も、例えば、音楽でもニューウェーブや、サイケデリックなど、ジャンルの境界が曖昧なように、定義がはっきりしていません。似たようなお店が増えていますが、かっこ良ければいいと思い、眺めています。そう思えるのも、この代々木公園横で、ご近所の人を見てコーヒーを淹れているからかもしれません。震災の影響で、エスプレッソマシンを止めて、ドリップだけを提供していた際、ここは、不安を抱えたご近所さんのコミュニケーションの場になりました。その時に改めて、自分がやりたいことは何か、この地域にとってのお店は何かを考えました。そこで出た答えは、自分が美味しいと思うコーヒーを出すこと。そして、1杯飲んだら、「よし、がんばろう」と思えるコーヒーを出すこと。それは、2店舗目を出しても変わりません。じわっと、ご近所さんの生活の一部になれたらと思います。

「リトルナップコーヒースタンド(写真)」
Tel03・3466・0074 東京都渋谷区代々木5・65・4 9:00~19:00 月定休
リトルナップコーヒースタンド(写真)
「リトルナップコーヒーロースターズ」
Tel03・5738・8045 東京都渋谷区富ヶ谷2・43・15 9:00~19:00 不定休Text:よねくらりょう Photo:藤村はるな ※こちらの記事は2014年11月20日発行『メトロミニッツ』No.145掲載された情報です。

奥沢
ONIBUS COFFEE
since 2012

コーヒーが苦手だったはずなのに、ホームステイ先のシドニーで美味しい浅煎りのコーヒーと出合い、「ポールバセット」でバリスタ修業をスタートした坂尾篤史さん。農園にも足を運び、ハイクオリティなコーヒー豆の良さを引き出すため、焙煎からこだわった浅煎りのコーヒーを提供。店舗も増やし、着実に世界を広げてきました。そして今、コーヒーブームを冷静に分析しながら、「僕らにしかできないこと」を追求しています。

浅煎りの味わいを追求。
ゲストバリスタの招聘や活躍するシェフたちに広める活動も

店を始めたのは、震災の翌年。その辺りから、人々の意識が変化し、様々なジャンルで、工程の透明性や、サスティナブルかどうか?などが問われるようになりました。当時、浅煎りのコーヒーだけではお客さんが来ないと言われましたが(笑)、豆の出どころがわかるシングルオリジンコーヒーは、そんな背景もあり、支持されやすかったのだと思います。2軒目の道玄坂を始めた後は、同じような店も増えました。でも、まだまだ。さらに、スペシャルティコーヒーが広まるためには、50軒、100軒とお店が増えなければと思っています。元々、コーヒーを通じて、人との繋がりを大切にしたいという気持ちがあったので、スウェーデン「Koppi」からロースターを招いたり、オーストラリア「Artificer Specialty Coffee Bar & Roastery」のバリスタにお店に立ってもらったりと、僕らにしかできない交流を深めていたのですが、最近は、異業種との繋がりも。今、気になっているのは、レストランのコーヒーのレベルアップです。料理人の方を集めて講習会を開催。浅煎りなのは、素材の味を伝えたいからと説明すると、シェフの方たちも同じマインドなので理解してもらえます。コースの最後に、「コーヒーか紅茶、どちらにしますか?」ではなく、最後のコーヒーもコースの1つとして、ワインのように、きちんと農園や豆のことも含めた提案ができたらと思います。

「オニバスコーヒー奥沢店」
Tel03・6321・3283 東京都世田谷区奥沢5・1・4 9:00~19:00 火定休
「オニバスコーヒー中目黒店(写真)」 Tel03・6412・8683 東京都目黒区上目黒2・14・1 9:00~18:00 不定休

Text:浅井直子
Photo:野呂美帆
※こちらの記事は2017年4月20日発行『メトロミニッツ』No.174に掲載された情報です。

 

更新: 2017年12月15日

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