COFFEE AND TOKYO # 10

special feature
featuring J-WAVE 81.3 FM
コーヒーと時代
~カフェ伝説 since1994~

Text:松本典子 Photo:吉次史成

1994年、「東京のコーヒー」に小さな事件が起きた。犯人、いや、事件の当事者は、堀内隆志さん。堀内さんが何をしたのかと言えば、鎌倉に1軒のカフェをオープンさせた、ただそれだけ。その名は、「カフェ・ヴィヴモン・ディモンシュ」。それから23年経った今、その店は“カフェブームの先駆け”と呼ばれています。そんな店のオーナーである堀内さんに、店の近所に住むクリス智子さんと会いに行きました。

café vivement dimanche
since 1994

「カフェ・ヴィヴモン・ディモンシュ」Tel0467・23・9952 神奈川県鎌倉市小町2・1・5 8:00~19:00(堀内さんのハンドドリップコーヒーは11:00~) 水・木定休

カフェ界のカリスマが淹れる珠玉の味わい

鎌倉で愛され続けて23年、自家焙煎のコーヒーが飲めるカフェ。店名はフランス映画『日曜日が待ち遠しい!』の原題「ヴィヴモン・ディモンシュ」から名付けられたもの。ちなみに、こちらで焙煎した豆を使ったコーヒーは神楽坂の「マドラグ」でもいただけます。

海外の文化が参入して 多様化したコーヒーの未来

GUEST/ TAKASHI HORIUCHI
1967年東京生まれ。流通業勤務を経て1994年、26歳の時に「カフェ・ヴィヴモン・ディモンシュ」をオープン。湘南ビーチFM「NA PRAIA」、FMヨコハマ「SHONAN by the sea」のラジオコーナーも担当し、ブラジル音楽のCDプロデュースや選曲、コーヒーや音楽にまつわる執筆など幅広く活動。
「鎌倉のカフェで君を笑顔にするのが僕の仕事」 堀内隆志・著 mille books刊 1,080円
カフェを始める前の学生時代から25年間のことを堀内さんが初めて綴った1冊。「カフェは僕の表現方法」と始まるこの本には、堀内さんが様々な人に出会い、店を育て、表現し続けた歴史が詰まっています。

クリス 時々お邪魔していますが、こうじっくり話すのは初めてですね。
堀内 確かに、なかなか営業中はドタバタしていてすみません。
クリス いえいえ。それでも堀内さんのコーヒーが飲みたくて、隙あらば来ちゃいます。でも今って、サードウェーブやスペシャルティコーヒーもあれば、昔ながらの喫茶店もあって、どこでどんなコーヒーを飲んだらいいか迷っている人も多いと思うんですけど、堀内さんのお店に来れば答えが見つかるような気がしますよね(笑)
堀内 そう、うち全部あるんですよ(笑)。深煎りからサードウェーブ系まである店ってあまりないんですよね。
クリス 海外から入った新しいコーヒー文化についてはどう感じますか?
堀内 スペシャルティコーヒーは美味しさの新しさもあるし、「From seedto cup(種からカップまで)」ってい定義があって、すごくわかりやすいんですね。農園や品種、栽培方法など今まで不透明だった部分が明らかになったのが今の時代に合っているし、〝コーヒーは苦いだけ〞という概念を覆したのもいいことだと思います。世界的にもスペシャルティコーヒーはブームで、まだ広がりを見せそうですね。ただ、その一方で、今まで育んできたものもあるので、ここでは両方一緒にできたら良いなと思っています。豆も昔からのニーズと新しい感覚の両方に対応するとか。プロセスや抽出方法も多様化して、これからもっとコーヒーが楽しくなる気がします。そんな「カフェ・ヴィヴモン・ディモンシュ」ですが、1994年のオープン当初は決して順風満帆ではなかったそう。何せ、全国的に見てもまだ〝カフェ〞という業態の店がほとんどなかった頃のため、営む方も客も手探り。しかし堀内さんの凄いところは、コーヒーはもちろんのこと、カフェでありながら、フリーペーパーやグッズ制作、音楽、と様々な発信をしてきたこと。それも、美術作家の永井宏さん、編集者の岡本仁さん、詩人・写真家の沼田元氣さんなどカルチャー界の錚々たる人たちを巻き込んで…。そうして「カフェ・ヴィヴモン・ディモンシュ」からカフェ文化が作られていったのです。

"いい時間"を提供し続ける カフェ文化の発信地

NAVIGATOR/CHRIS TOMOKO
1971年ハワイ生まれ。1994年、J-WAVEでナビゲーターデビュー。4月からは新番組「GOODNEIGHBORS」を担当。現在は、鎌倉で海と山に囲まれながら生活中で、「カフェ・ヴィヴモン・ディモンシュ」にもよく通っている。番組名の通り、堀内さんとはまさに、“ご近所さん”の間柄。
on air song/Drip for Smile
カフェへの思いを綴った堀内さん人生初の歌詞にシンガソングライターの畠山美由紀さんが曲を付けた記念すべき作品。堀内さんが選曲と監修を担当した「COFFEE&MUSIC」の第2弾、「Coffee&Music Drip for Smile」に収録。

クリス オープンしてから、もう23年も経つんですね。その頃のコーヒーはどんな存在だったんですか?
堀内 当時、コーヒーはあまり注目されていなかったんですよ。喫茶店が下火になっていた時代でしたし、雑貨ブームで、どちらかというと紅茶の方が流行っていましたね。オープン準備をしている頃、道玄坂にオープンエアでお茶が飲める「ドゥ マゴ パリ」ができたり、新しいフレンチカフェの形態が入ってきた時代でした。
クリス そこまでコーヒーが注目されていない時代に、気持ちがコーヒーに行ったきっかけがあったんですか?
堀内 お店に置くフリーペーパー(喫茶と音楽をテーマに6年間制作)を作っていた影響が大きくて、古い喫茶店の話を聞いたりするうちにすごく興味が出てきたんです。70年代に「はちみつぱい」というバンドにいらした和田博巳さんが札幌で始めた「和田珈琲店」というお店が原点になったんですね。当時すでになかったお店ですけど、いい音楽が流れる中で自家焙煎のコーヒーを飲める夢のようなお店だったと人から聞いて、〝青い鳥〞じゃないけどそれを追い求めているというか、やっぱり僕は「コーヒーと音楽」なのかなと思って。京都や札幌、福岡とかでコーヒーの飲み歩きをして、札幌の自家焙煎の文化に触れて、今もブレンドをお願いしている「斎藤珈琲」に出合えたことも大きかったですね。
クリス 途中までは斎藤珈琲さんに焙煎をお願いしていたんですよね。自身で焙煎を始めたのはいつからですか?
堀内 2010年です。斎藤さんが体調を崩した時期があって、今始めなきゃという転機になったんですね。
クリス 焙煎の面白さとか、始めてから変わったのはどんなことですか?
堀内 焙煎度合いで表情が変わってくるのが面白いですね。コーヒーの幅がすごく広がりました。
クリス 堀内さんって、ほんと色々追求されていますよね。音楽も精通しているし、ラジオもやっていますよね?
堀内 恐れ多くてクリスさんの前でラジオやってるなんて言えないです(笑)
クリス 音楽もラジオも時代が変わるごとに入ってくるものは変わるんですけど、自分が仲介する立場というのはあまり変わらないですよね。そのまま読むのではなく、咀嚼して自分の言葉でどんなふうに伝えようか、時間をかけて考えますし。媒体という意味で、お店にも近い部分がありませんか?
堀内 ありますよ。お店に対して考えていることは、ここで過ごす時間がお客さんにとってすごくいい時間だったらいいなってことなんです。お客さんはコーヒーを飲みにくる人、オムライスを食べにくる人、打ち合わせに使う人、それぞれ利用目的は違いますけど、どなたでもウェルカム。いい時間を過ごせるお店にしたいと思っているので、何かを押し付けたりしない感じでお客さんが普通に過ごせるように考えていますね。
クリス だから堀内さんのお店に人が集まるんですよね。私もまた近いうちにお邪魔します。今日はステキなお話をありがとうございました。

J-WAVE 81.3 FM 月~木曜 13:00-16:30
GOOD NEIGHBORS [ナビゲーター:クリス智子]
東京を能動的にクリエイトする人々が自然に集まるプログラム。毎日、独自の視点や審美
眼を持つ多彩なゲスト(ご近所さん)を迎え、気兼ねない会話を満喫します。

※こちらの記事は、
2017年4月20日発行『メトロミニッツ』No.174に掲載された情報です。

更新: 2017年12月15日

この記事が気に入ったら
「シェア」しよう

最後までお読みいただき、ありがとうございます

pagetop