COFFEE AND TOKYO # 1

J-WAVE SPECIAL CROSS TALK

クリス・ペプラー×佐藤オオキ
コーヒーと東京とラジオ

Text:神吉弘邦 Photo:佐藤航嗣(TRON)
Styling 吉田幸弘(Chris Peppler) Hair&Make 池田永一(Chris Peppler)

誰もがその声を耳にしたことがあるでしょう、クリス・ペプラーさん。開局当初からナビゲーターを務めてきた、名実ともにJ-WAVEの顔です。一方、3年前からナビゲーターを務めるのは、デザインオフィスnendoの佐藤オオキさん。佐藤さんが手がけたカフェ「connel coffee」で、コーヒーについて、東京について、ラジオについて、カップ片手に語り合いました。

この「コーヒーと東京」という特集は、獅子文六さんの小説『コーヒーと恋愛』に少しインスパイアされています。1962~63年に新聞で連載されていたその小説からは、当時のコーヒーのことや東京の街の様子が伝わってきて、「コーヒーと東京」の観点から読んでも面白いのです。1960年はコーヒー豆の輸入が自由化され、インスタントコーヒーの国内生産が始まった年ですが、この頃から「東京のコーヒー」は加速度的に成長していきます。そして、自家焙煎にこだわり深煎りを究めた昭和の喫茶店、90年代のカフェブームを支えた店、日本のコーヒーチェーンやシアトル系のコーヒーチェーン、スペシャルティコーヒーの専門店、そして2010年を前後して広まってきたサードウェーブコーヒーなど、時代ごとに多種多様な店が生まれてきました。また、ファッション・商業の街に限らず、オフィス街や住宅地でも、今や東京のあらゆる街に個性とこだわりのあるコーヒー店を見つけられる時代に。そこで、メトロミニッツからのご提案は、「コーヒーを飲みに、知らない東京の街へ行ってみませんか?」。まずは、あまり馴染みのない街の1軒のコーヒー店へ行き、できれば帰りにもう1杯テイクアウト。あとはコーヒー飲みながら、音楽やradikoなども聴きながら、いつもと違う風景を散歩してみませんか? 今回、そんな提案にのってくれたのが、J-WAVE 81.3FMのナビゲーターの皆さん。実際に、各街のコーヒー店へ行ったり、過去の時代を振り返ってみたり、本特集をナビゲートしてくれます。そして、初めに登場するのはこのお2人。クリス・ペプラーさん、佐藤オオキさんが「コーヒーと東京+ラジオ」をテーマにスペシャルトークを展開!

CHRISPEP PLER/TV・ラジオ、パーソナリティ

CHRISPEP PLER/TV・ラジオ、パーソナリティ。1957年、東京生まれ。日本のインターナショナル・ハイスクールを卒業し、アメリカの大学に入学。帰国後、友人の紹介でDJを始め、J-WAVEの開局以来ナビゲーターを務める。J-WAVEの顔ともいうべき存在で、日本のミュージックマスターとして知られている。「コーヒーはロック、紅茶はポップス」と語る。・J-WAVE81.3FM日曜13:00-16:54 SAISON CARD TOKIO HOT100[ナビゲーター:クリス・ペプラー]来年30周年を迎えるJ-WAVEで、1988年の開局の翌日にスタートした看板番組。今聴くべき東京の最新チャート100曲をカウントダウン形式で紹介します。・J-WAVE81.3FM土曜18:00-18:54 SAPPOROBEEROTOAJITO [ナビゲーター:クリス・ペプラー]音楽好きなゲストを迎え、お酒を飲みながら音楽トークを繰り広げる54分(音楽を聴く隠れ家=オトアジト)。豪華ゲストのこれまでの音楽遍歴を垣間見ることができます。

朝10時のカフェ。イタリアの国際家具見本市「ミラノサローネ」への出張を終えて帰ってきた佐藤さんが、クリス・ペプラーさんを出迎えます。

佐:この店で出すコーヒー は、ちょっと濃い目なんですよ。以前はあまりコーヒーを飲まなかったんですが、イタリアで仕事すると濃いエスプレッソを毎回打ち合わせで出されて。そのうち日本でも飲みたくなり、自分でカフェを作ったんです。ハイカウンターなので、立ったままでも飲めますよ。
ク:イタリアのエスプレッソ文化は座らないですからね。なんでだろう?
佐:スイッチ感覚なんでしょうね。クッと飲んで、パッと出る。そうやってリズムを切り替えているのでは。
ク:僕もJ-WAVEのスタジオに着くと、用意されたアイスコーヒーをまず飲むんですよ。もう、しきたりです。
佐:僕は海外出張の時、空港からホテルにチェックインしたら、自分をいつもと同じ環境に戻すために、どの都市にも大体あるスターバックスに入って、いつも通りの気持ちにしていくんです。

OKI SATO/デザイナー

OKI SATO/デザイナー。デザインオフィスnendo代表。1977年、カナダ生まれ。2002年にnendoを設立、東京とミラノを拠点に活動中。06年にはNewsweek誌「世界が尊敬する日本人100人」に選ばれる。nendo東京オフィスはこのカフェと同じビルの6階にあり、「ビルの中の人を繋ぐようなカフェが欲しい」と「connel coffeeby mother port coffee」を作った。
・J-WAVE 81.3 FM 土曜 21:00-21:54 LAUGH SKETCH [ナビゲーター:佐藤オオキ] 毎週1つのキーワードからデザインやグローバルな視点を盛り込みながら繰り広げる、佐藤オオキのデザイントーク。小さな日常をちょっとユニークに変えてくれます。・J-WAVE 81.3 FM 5月5日(金・祝)09:00-17:55 J-WAVE GOLDEN WEEK SPECIAL RAIZIN presents TOKYO CREATIVE SWITCH[ナビゲーター:佐藤オオキ&クリス智子]「東京」ならではの「奥行き」に出合える9時間特番。キーワードは「SMART & CREATIVE」です。

2人の話はカフェという空間の話から、東京という都市の話へと次第に広がっていきました。

佐:カフェって1人だけの空間も持てるし、オープンな場所にもなれる。人と人を繋ぐ接着剤の役割を果たしてくれるのがコーヒーなんだろうなって。
ク:コーヒーさえ中心にあればいいから、カフェの決まった形がなくなったんでしょうね。日本家屋でコーヒーを出す店だって、今は普通に感じるし。
佐:東京にはオーナーのこだわりを感じるカフェもあれば、近隣の環境になじんでいるカフェもあって、どの海外の都市よりも多様さを感じます。それに適度なノイズ感が街にある。僕は何か考えたり、文章を書いたりするとき、うるさい場所は嫌だけど、静かな場所も苦手なんです。東京は距離感が冷たすぎず、常に人を感じるカフェのようなザワザワ感があって大好きです。
ク:今の東京、いい意味で熟していると思う。デザインや建築にしても、若い子たちが江戸の伝統的なスタイルを持ってくるような発想をするけれど、それがあまり嫌味じゃない。変なレトロ感もなく、逆に未来感を僕は感じる。J-WAVE ができた30年前だと「俺たちってイケてる?」と肩に力が入ってるようなところがあったから。

ラジオの仕事から東京のカルチャーを見つめてきたクリスさん。 佐藤さんとの対話は、熱を帯びたラジオ論へ。

佐:作業中はJ-WAVEを流しっぱなしです。適度なザワザワ感、不純物が混じったくらいの情報が心地いいんです。求めてないのにスッと入ってくる情報だったり。それに比べるとインターネットは情報の純度が高すぎて、まるでエスプレッソみたいになってる。
ク:あんまり飲み過ぎたら、胸焼けしちゃうよね。
佐:そう(笑)。あまりに凝縮された情報がすぐ獲得できる時代に、疲れちゃう人も多いだろうって。だから、これからラジオはインターネットにできないことができると思うんですよ。それをクリスさんは自然体でこなしている。
ク:長い間やっていると、瞬発力に頼る部分はありますよ。アスリート的になってきたかもしれない。ただ「オレが、オレが」という部分が消え、いい感じで〝自分〞がなくなってきたのかも。
佐:達観してますね。
ク:価値観の根底がガラッと変わったのは、前の震災が大きかったですよ。そこから考え方も変わりましたね。でも時代は振り子のように動くから揺り戻しがある。震災の後はみんな最大公約数の人畜無害なことを言う空気だったでしょう。今はそれじゃつまらなくなって、反動で過激なことを言うのかも。「王様は裸じゃん!」というのがリスナーに響くのかなと。
佐:なるほど。
ク:リスナーが相づちを打てる共鳴感を提供するのは、ラジオの仕事にとって不可欠です。社会や文化がどんな方向に行くのか先読みして、どんどん提案するのがJ-WAVEらしさじゃないかな。ラジオがインターネットを後追いするだけじゃマズいですからね。
佐:僕の番組でも、頭の中のスイッチを突っつくというか、使ってなかった筋肉をストレッチでほぐすような情報発信ができたら面白いなぁ。
ク:そう。新しい視野を提供して、脳みそのシワを伸ばしていきましょう!
佐:えーっ!? シワがツルツルになったらダメじゃないですか(笑)

connel coffee by mother port coffee

「こねる」という名の通り様々なコラボが生まれるカフェ

2015年7月、草月会館の2階にオープン。気仙沼で自社焙煎のコーヒーを提供するマザーポートコーヒーとクラウドファンディングのミュージックセキュリティーズ、そして佐藤オオキさんが代表を務めるデザインオフィスnendoのコラボカフェ。

「コーネルコーヒー バイ マザーポートコーヒー」
TEL 03・6434・0192
東京都港区赤坂7・2・21 草月会館 2F
9:00~18:00、土・祝10:00~17:00 日定休。

Text:神吉弘邦
Photo:佐藤航嗣(TRON)
※こちらの記事は2017年4月20日発行『メトロミニッツ』No.174に掲載された情報です。

更新: 2017年12月15日

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