ラディカルでアバンギャルドで革命的な
|前衛派日本酒[3]|
日本酒の初心者からマニアまで満足させてくれる、頼りがいのある店主がいる店

「ちゃんとした取材を受けるのは初めて」と恥ずかしそうに笑う表情が初々しい、福島県からやってきた5人は平均年齢27歳。家業を継ぐために蔵へ戻ってから数年と、彼らはまだ造り手として駆け出したばかりです。しかし、これからの日本酒業界を背負って立つ、次世代の注目株には相違なく。そんな彼らが同世代の山田洋平さんが営む店「地酒屋のぼる?幟?」に集まって、本音トークを展開しました。

日本酒業界に新風を巻き起こす!?今、ここで名前を覚えておくと今後が楽しみな5人の造り手。夜の大井町で意気満々に語り合った

名酒を揃える店!
『地酒屋のぼるー幟ー』大井町
>>日本酒を造る名手新たな時代の担い手5人

(写真左端)地酒屋のぼる?幟?山田洋平さん

(左2)曙酒造|鈴木孝市さん
1984年生まれ29歳。明治30年創業の曙酒造「天明」の6代目。現在は杜氏として腕を振るう。好きな食べ物はうどんと角煮。趣味はサッカー観戦と食べ歩き。尊敬する人物は同じ職に就いている両親


(左3)会津酒造|渡部景大さん
1987年生まれ26歳。元禄年間に創業で定番銘柄の「會津」の他、景大さんが新たに立ち上げた「山の井」も好評。9代目予定。尊敬する人物は鈴木賢二(福島県ハイテックプラザ課長)。趣味は料理とアウトドア。好きな芸能人は高田純次と石田ゆり子


(真中)大和川酒造店|佐藤哲野さん
1984年生まれ28歳。寛政2年創業。ただ今、杜氏になるべく修行中。哲野さんが立ち上げた「野恩」の他、定番銘柄は「弥右衛門」。好きな芸能人は原田知世。趣味は音楽。尊敬する人物は高橋藤一(銘柄「雪の茅舎」の杜氏)


(右2)松崎酒造店|松崎祐行さん
1984年生まれ28歳。創業明治25年の6代目。銘柄は「廣戸川」で杜氏として奮闘中。最初に仕込んだ平成23年酒造年度の酒が、鑑評会で金賞を受賞する快挙を成し遂げた。趣味は登山と温泉巡り。好きな食べ物はポテトサラダ


(右端)豊国酒造|矢内賢征さん
1986年生まれ27歳。創業は天保年間。9代目として新銘柄「一歩己」を立ち上げ、杜氏のもとで修行中。定番銘柄は「東豊国」。趣味はランニング。好きな芸能人は綾瀬はるか。尊敬するのは現杜氏の簗田博明、長嶋茂雄

?歌舞伎の世襲制のように、跡取りに 生まれたということは酒蔵を継ぐ運命にある。しかし、様々な職種がある今の 世の中で、すんなりと家業の仕事を選 択できたのでしょうか。
鈴木 きっかけは両親に連れて行かれた居酒屋です。たまたま飲んだ「東洋美人一番纏」がとても美味しくて感動しちゃって。こんな酒を造ってみたいと自然に思いましたね。
矢内 いつかは経営者として父親の後を継ぐつもりでいましたが、最初は造りたいと思ったことはなかったですね。でも、上京した時に母親が送ってきた 『愛と情熱の日本酒』(山同敦子著・ち くま文庫)を読んで目から鱗が落ちた。 蔵元杜氏※、酒造りってめちゃめちゃ カッコいいなと。単純ですが(笑)。
松崎 そうなんだ。僕なんかは小さい 頃から家を継ぐものだと思っていたの ですが、逆に蔵に戻ってきてから仕事に疑問を持ったことがありました。もっと他にやれることがあったんじゃ ないかと。"跡継ぎになれ"っていう親の刷り込みが多少あったのかも(笑)。
佐藤 在学中にインテリア関係の会社に内定が決まっていたんですが、家業を継ぐというのが自分にとって1つの選択肢じゃないのかと、ある時思って。とは言え全く白紙の状態で帰ったので 最初は大変でしたよ。まずやったのが Amazonで日本酒関連の本を大量購入(笑)。そこからのスタートです。 一同 マジで !?(大爆笑)
渡部 僕の場合は県外の学校に行った時に一人暮らしを始めたのですが、そこで料理に目覚めてしまって。家に遊 びに来てくれた友達が、作ったものを喜んで食べてくれるのが嬉しくてね。大学を卒業したら料理の世界へ行こう と思っていたくらいです。でも、前杜氏 が体調を崩したことがきっかけで蔵へ 戻る決意をしました。

?継ぐつもりだった、あるいはそんな はずじゃなかった。など、多様な事情が あったにせよ「今は酒造りが面白い!」 と5人は口を揃えて言う。さらに、これからの目標についても話してくれた。

矢内 お酒って、子育てのように手間 ひまかけてやるので、全てが可愛いん ですよね。よく出来てくれた!って (笑)。僕は「十四代」や「飛露喜」みたい なお酒を造るカッコいい先輩たちに憧 れてこの世界に入ったのですが、いつ かはそんな存在になりたい! 後に続 く人達のために、日本酒っていいなっ て思ってもらえる素敵な造り手を目指 したいですね。日本酒業界の起爆剤に なりたいなと。
鈴木 原料の米や水の他、環境だって 毎年違うけど、それを皆で力を合わせ て日本酒に再現していくのってワクワ クして仕方ない。僕はもっといい酒を 残したいし、従業員のために酒蔵の環 境をよくしていきたい。ゆくゆくは地 元を引っ張っていけるような存在にな れたらと。それが本来の酒蔵の姿だと 思うので。
渡部 みんなすごいな(笑)。僕は地味 な酒を目指しています。一般の家庭で 毎日飲まれるような酒。日常に僕の酒 があったら、嬉しいじゃないですか。
松崎 村の人達が見てくれている、と いう思いがあるのでもっと有名になっ て〝人知れる酒?になりたいですね。で も、本当に酒造りは面白いですよ。出口 から考えて入り口にもっていく。完成 をイメージしながら造るんですが、必 ずしも思い通りになるわけじゃないと ころが。
佐藤 僕は、米も水も地元のものを 使った酒にこだわりたい。地酒の本来 ある姿を大切にしたいです。
松崎 それにしても矢内くんだけ何か 突っ走っているよね(笑)。彼は計り知 れない可能性を秘めている気がして、 恐ろしいっすよ。
矢内 それはこっちのセリフ(笑)。松 ちゃんのことはかなり意識してる!
鈴木 僕にとって技術的に一目置いて いるのは佐藤くん。人間性は松ちゃん。 頭がキレるのが矢内くんで、一番心を 許せるのが渡部くん(笑)。
渡部 何だか僕だけ次元が違いません か !!? (笑) 一同 大爆笑。
鈴木 でも、みんなそれぞれレベルが 高い位置にいるよね、低い次元じゃなくて。それが嬉しい。これからも互いに 切磋琢磨しながら、日本酒業界を盛り上げていこう!

?開始から2時間。飲んで語って名残 惜しくも座談会は終了。意外にも「お互 いの真面目な話を聞くのは初めて」と5人の面々。日本酒の未来は明るい!そんな希望が膨らんだ一夜でした。

※蔵元杜氏=経営と杜氏を兼ねること。杜氏の高齢化や酒蔵の経営状況により、近年増えている傾向。

手前左:鰹出汁と昆布で炊いた「のぼる風煮豚」580円 右: 毎日空輸している新鮮な刺身。本日は「岬あじ」を酢締めした ものと盛り合せに。1,960円 奥:スモークした瀬戸内の地魚 が入りの「自家製ポテトサラダ」580円

全国各地の美酒に情熱を注ぐ 若き店主が造り手の想いを伝達

造り手が精魂込めて醸したお酒を、誰よりも 美味しく提供したい。そんな情熱を胸に秘め るのが、今年1月にオープンしたこちらを仕 切る28歳の山田洋平さん。ある居酒屋で飲ん だお酒がきっかけで開眼し、地酒の名店「吟 吟」(大森)の門を叩き修業後に独立。全国各 地を訪ね歩きながら様々な造り手と交流し、 日本酒を広めるべく見識を深め続けている。 揃えるのは、「賀儀屋」や「三千櫻」などの銘柄 が約30種類。もちろん、「廣戸川」や「天明」な ど今回登場した若手が造る酒も扱う。 「彼らにはいい酒を造ってもらい、飲み手に しっかり魅力を伝えていくのが店側の役目。 僕は同世代として刺激されますし、一緒に成 長しながら伸びていきたい」と洋平さん。 料理は父親の達也さんが担当。愛媛県の松山 港から毎日空輸される地魚の他、西条市や 「廣戸川」の地元である天栄村から直送され た新鮮な野菜を使ったメニューが中心。素材 を生かしたシンプルな味付けで、日本酒にピ タリと寄り添う肴が豊富です。思わず酒がぐ いぐい進んでしまっても、値段はグラス一律 390円なので財布に優しくご安心あれ。「利益 よりも美味しい日本酒を知ってもらうこと の方が大切」との言葉に胸が熱くなる。とに かく“日本酒愛”に溢れた店なのです。

地酒屋のぼる~幟~

地酒屋のぼる~幟~

住所:
東京都品川区大井1・25・9
TEL:
03・3776・0319
営業時間:
17:30 ~ 22:30LO 不定休

Text:山内聖子
Photo:安彦幸枝

※こちらの記事は2013年9月20日発行『メトロミニッツ』No.131掲載された情報です。

更新: 2016年10月10日

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