ラディカルでアバンギャルドで革命的な
|前衛派日本酒[2]|
日本酒の初心者からマニアまで満足させてくれる、頼りがいのある店主がいる店

ここにご紹介する「日本酒スタンド? 」と 次ページの「地酒屋 幟」で、まず特筆すべきは 日本酒の初心者からマニアまで満足させてくれる、 頼りがいのある店主がいること。もちろん料理も、お酒の実力をググッと引き出してくれる 逸品を揃えています。しかし、それだけでこの話は終わり ません。お酒の美味しさを清く正しく伝えてくれるお店は、造り手とお客の中継地点。最高に美味い!と思ったら、その先にいる造り手のことを知り始めると 日本酒はもっと愉しくなります。で、そのイメトレを。 都内の日本酒の名店で、名酒の造り手たちの話を聞きました。

初心者から蔵元さんまで訪れる、間口の広い店

写真は、定番人気の温かい「ポテトサラダ」500円と、梅の程よい 酸味が次のお酒を誘う「鱧の湯引きと夏野菜の梅酢ジュレ」600円

名酒を揃える店!
日本酒スタンド?[新宿三丁目]

新宿伊勢丹の近くにある、古い雑居ビルの地下。「日本酒スタンド?」は立ち飲みながら女性客も多く、時にはお客として蔵元さんたちも普通にカウンターに並んでいることもあるという不思議なお店です。秋田県・新政酒造の佐藤祐輔さんもその1人。「東京に来る度にここには寄りますね。店長の千葉麻里絵さんはお酒の知識が豊富。蔵元の気持ちを代弁してくれるし、あらゆるお酒に居場所を作ってくれる。日本酒の入門店としてもおすすめです」(佐藤さん)。店長の千葉さんも「間口を広くとる」のは意識しているそうで、「お酒のセレクトは初心者が飲みやすいフルーティなものも欠かさないようにするなど、偏らないよう心がけています」。1人客でも気軽にオーダーできる よう、つまみのポーションは小さめ。例えば休日の午後、買い物の合間のひと休みにも実に重宝なお店です。

日本酒スタンド ?(もと)
電話:03・6457・3288
住所:東京都新宿区新宿5・17・11 白鳳ビルディングB1F
[月~金] 15:00~23:00(F L.O.22:00/D L.O.22:30)
[土・日・祝日] 12:00~21:00(F L.O.20:00/D L.O.20:30)
不定期に祝日も営業あり




 

次世代スターは、歴史ある蔵元のナチュラルな革命家

佐藤祐輔/1974年生まれ、秋田県出身。東京大学文学部卒業後、ジャーナリストの道へ。2007年から蔵に戻り、現在、新政酒造 8代目蔵元。好きな音楽は、テクノ、民族音楽、プログレなど。元々、ビル・ラズウェルに影響を受けてベースを弾き始めた音楽好き。「造り手を〝アーティスト?、銘柄を〝アルバム?と捉えると、日本酒の楽しみ方がより広がると思います」http://www.aramasa.jp/

人呼んで「日本酒界のスティーブ・ジョ ブ ズ 」―スター蔵元の筆頭、秋田県・新政酒造の蔵元、佐藤祐輔さんを、これほど端的に表現した言葉はないかもしれません。それは常にスタイリッシュな 黒のTシャツを着こなしているから...ではなく、現在入手できる協会系酵母の中で最古の6号酵母発祥の歴史ある蔵でありながら、乳酸無添加(酒造りでは発酵を安全に進めるために通常乳酸を添加します)、ビールやワインなど他の 醸造酒の手法を取り入れた造り、焼酎で使われる白麹での仕込み...と斬新なスタイルでユニークなお酒を次々にリリースしているから。日本酒マニアも、日本酒の入口に立ったばかりの女性も、洗練された甘みと酸を抱えたお酒の波 状攻撃にたちまち心奪われる事態に。 まさに、今回の「前衛派日本酒」にふさわしい次世代の造り手!にも関わらず、佐藤さんに水を向けると「うーん、自分としては伝統的な醸造技術に則しているだけで、特に新しいことをしているつもりないんですよね 」という意外な答えが。完全に肩の力が抜けたスタンスです。伝統は大切にしたいけれど、保守的ではだめなんですよ。保守的っていうのは今の利益を守ってそこから動こうとしないこと。僕がやりたいのは単にうまい酒を造って売るのではなく、世界最高の技術が確立された日本酒の中で、新政という蔵をどれだけ表現できるか、なんです」「新政」の裏ラベルと同等(所狭しと熱いメッセージが綴られています。ボトルを手に取る機会があれば是非チェックを)、いや、それ以上の熱量が伝わって来る〝祐輔トーク?。しかし今でこそ酒造りに熱中する佐藤さんですが、そもそも蔵を継ぐ気はなく、蔵に戻ったのは年、佐藤さんが 歳の時のこと。それまではフリーのジャーナリストとして活動する日々でしたが、ある時、急に日本酒に開眼。「偶然『磯自慢』(静岡県・磯自慢酒造) を飲む機会があり、改めて日本酒の美味さに気づきました。さらにその後で 『醸し人九平次』(愛知県・萬乗醸造)と出合ってしまって完全にノックアウト。 蔵に戻る決意をしました」そこからの快進撃は先に述べた通り。この8月には秋田の若手蔵元5つから成る技術向上ユニット「NEXT5」のメンバーとともに、シャンパーニュやブルゴーニュへのワイナリーツアーを敢行し、醸造への思いを新たにするなど今も「Think different」な勢いが止まらない佐藤さん。今後チャレンジしていきたい ことは、震災以降特に関心が高まった〝米作り?。「自ら米作りまで手掛けたら、酒造りがうまくいかなくても米のせいにできないし、もっと情熱的に酒を語れる気がします。究極を言えば、高級時計の価値が時刻を知ることではなく、所有する喜びにあるのと同様に、飲まなくても冷蔵庫に『新政』が置いてあるだけで満足してもらえるような、その人の人生を豊かに彩る存在を目指したいんです」

Text:安彦幸枝
Photo:浅井直子

※こちらの記事は2013年9月20日発行『メトロミニッツ』No.131掲載された情報です。

更新: 2016年10月3日

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