WHISKY DAISKY ! #16

本格的にウイスキーを味わう
〜TOKYO BAR GUIDE〜
3人のTOPバーテンダーが語る、
バーとウイスキーの話

Photo キムアルム Text 岡本ジュン

バーのスタートは、“勇気を出してその重い扉を開けること”。それに限ると言います。なぜなら、バーは横のつながりが強いため、1軒目さえ思い切って入れば、そこからどんどん広がっていくそう。そこで、メトロミニッツが勇気を出して開けた扉はここ、「バーハイファイブ」。まずは東京のバーを代表する3名による対談からお届けします。

この日集まったのは、海外で最も有名な日本人バーテンダーとして知られる上野秀嗣さん、スコッチウイスキーの知識では右に出る者はいないと言われる中村信之さん、そしてジャパニーズウイスキーの第一人者である堀上敦さん。この3名にバーを楽しむコツや最近のバー事情をお聞きしました。

中村信之さん / CAMPBELLTOUN LOCH (写真左)
1968年、千葉生まれ。バーでのアルバイトからスタートし、ホテルのバーを経て1999年、有楽町に「CAMPBELLTOUN LOCH」を開店。スコッチファンにとってお宝の山と言われるお店は日本中からお客が訪れる。『不味いウイスキーなんて存在しない』がモットーで全てのウイスキーに美味しい飲み方を提案している。

上野秀嗣さん / BAR HIGH FIVE(写真中央)
1968年、北海道生まれ。(一社)日本バーテンダー協会副会長。「スタア・バー・ギンザ」の立ち上げをオーナー バーテンダー岸さんと二人三脚で果たす。2008年、銀座に「BAR HIGH FIVE」をオープン。「THE WORLD'S 50 BEST BARS 2016」では23位にランクインするなど世界でも有名な日本人バーテンダー。

堀上敦 さん / Shot Bar ゾートロープ(写真右)
1964年、東京生まれ。20年以上映像関係の仕事に携わり、ジャパニーズウイスキーにハマったことがきっかけでバーテンダーに転身という異色の経歴。40歳を過ぎて2006年、西新宿にジャパニーズウイスキーの専門バー「Shot Bar ゾートロ-プ」をオープン。国産ウイスキーに関しての品揃えや知識は群を抜いている。

バーテンダーに聞く、ウイスキーバーの入り方・楽しみ方

——— いきなりですがバーはとても敷居の高いイメージがあるのですが?


上野 いえ、まずは勇気を出して、扉を 開けてください。で、もし違うと思ったらそのまま閉めて帰ればいいんです。


堀上 扉を開けてもらえれば、後はバーテンダーがなんとかしますよ。


上野 バーでは1杯目はこれで2杯目はこれでと決まっていると思っている方が多いけど、実は好きなものを飲めばいいし、分からなかったら聞いてください。恥ずかしくないんです。


中村 ウイスキーの永遠のテーマですが、必ずしもストレートで飲まなくてもいいんですよ。うちの店は水割りもオン・ザ・ロックも出します。若いお酒をそのままストレートで飲むのはしんどい話ですよね。要はそのお酒に合った飲み方をすればいいんです。


――― それぞれお客様はどんな方が多いのでしょうか?


上野 9割8分くらいが海外の方です。


堀上 すごいなあ(笑)。うちは海外の方が7割ぐらいですかね。


中村 うちは2割ぐらいかな。どこの 店も海外の方は増えていますよね。


堀上 最近特に増えていると思います。海外のウイスキーでも日本限定のシングルカスクなんかあるでしょう。だから海外から日本でしか飲めないお酒を飲みにくる人が多いですよね。音楽でも、ジャズやロックで日本でしか手に入らないものが多いですが、ウイスキーも同じですね。あらゆるジャンルにマニア度の高いものがいっぱいあって、マニアの 人にとってはたまらないから日本へ来るんでしょうね。


中村 日本人は何かを好きになると突き詰めていく人が多いよね。


上野 ウイスキー好きも、そこらのバーテンダーよりもものすごくよく知っていらっしゃいますしね。


中村 スコッチやウイスキーに限ると、僕らが海外の買い付けに通い詰めていた 20 年前と今とは状況が全然変わっていますね。昔はいいウイスキーが日本に安く入ってきていて、そのウイスキーが今まだ飲めるので、海外のマニアにとって日本は天国なんですよ。


――― そもそも、みなさんはどういう きかっけでバーテンダーに?


堀上 もともとウイスキー好きだったけど、たまたま日本のウイスキーを飲むことがあって『これ美味しいな』って思ったんです。で、買うのに苦労するくらいなら自分で店をやろうと思ったのが最初ですね。


中村 僕ももともと好きでしたけど、これだけ好きな人がいるんだから供給してあげようと思ったのが始まりですね。求められるから応えていったというか。ウイスキーってものすごく種類があるからキリがないんですけどね。


上野 私はコーヒー好きなので喫茶店をやりたかったんです。大学を卒業して喫茶店で生計を立てるためには酒も出そうというので、まずは渋谷のバーテンダースクールに通って。スタア・バー・ギンザにいた時に、毎日ベストだと思ってカクテルを作ってもお客様ごとにそれが変わるので『これは終わりがない』と。 途中で諦めるのはもったいないから、だったら喫茶店じゃなくバーをやろうと決心したんです(笑)


中村 僕はホテルでバーテンダーをしていたので、ちょうどお2人の中間ぐらいに位置しているのかな。当然カクテルも嫌いじゃないですよ。カクテルを作る 方へのリスペクトは今、自分がやっていないからこそあります。


上野 バーテンダーという仕事は、目の前の人を笑わせられるところが魅力で すよね。そういう職業ってあんまりないじゃないですか。僕は自分のことを免許のないサイコロジストだと思っていて、 疲れちゃった時とか、何かあった時にう ちに来て、美味しいお酒を飲んで、話をするうちになんとなく楽しい雰囲気になって、また来るねって笑顔で帰ってもらえればいいんです。


堀上 それは理想ですね。そうなりたいなと思うところはありますけど。


上野 ウイスキーの方がよりそうじゃない? 手持ちのものからこれぞという一本を出して『よく俺の飲みたいものが分かったな』っていう世界なのでより真剣勝負ですよね。


中村 ウイスキーって注ぐだけなんです。でもそれだけだと次がない。もう一度来てもらうためにはサプライズとか、味への衝撃的な記憶とか、そういうものがないといけないんですよね。

――― 最近はウイスキーの飲まれ方も 変わってきているんでしょうか?

堀上 若い人はハイボールから入ってきやすくなっていますね。ハイボールは一般的にはウイスキーのソーダ割りですが、“ハイボール” という飲み物だと思っている人が多い。だからウイスキーは何にしますかって聞くし、好きなウイスキーで作れますよと説明してあげることが多いですね。

中村 うちのお客様に限って言えば、すごくいい物ばかり飲んでいる若い人も少なくないんです。今はインターネットで調べれば分かるので、美味しいところだけつまめるし。それも悪くはないんだけど、実はもったいないなと思ってます。伝説の「トニーズバー」のトニーさんに教わったのですが、美味しいものを食べるのは喜びなので、その階段のステップは多い方がいいと言うんです。それがウイスキーを長く楽しむ秘訣だと僕も思います。例えば、スイカの赤いところだけを食べてスイカが最高だよって言うよりも、種や皮も食べてみて、ここは食べない方がいいねっていう方がスイカに関しては詳しい人だと思うし。だからいろいろ試してみることも大切だと思いますね。

――― バーの世界は横のネットワーク が強いイメージがありますが、それはどうしてだと思いますか?

上野 私なりに考えてみると、やっぱりバーはものすごく入りにくいからじゃないでしょうか。分厚い扉があって、外に ニューも無いし、中も見えない。そこで扉を押す勇気を与えてくれるのが紹介なんですよね、あの人が紹介してくれたんだからと。大体においてバーはパッと入ってくるような立地じゃないので、 バーテンダーの方も“いらっしゃいませ”と言いながら、内心は知らない方だとドキドキしているんです。そこで誰々さんの紹介で来ましたと言われると、その不安が一気に解消されるんですよ。だから私たちは日本全国どこでも、同じ銀座の中でも、先輩、後輩に関わらず積極的に紹介するんです。1軒目さえ勇気をもって入ってもらえれば、そこからどんどん繋がっていくものですよ。

中村 初めてのお客様がいらしたら、 僕も『いつもはどこで飲むんですか』と さりげなく聞きますね。

堀上 普段何を飲んでいるかで、おすすめするものも変わってきますものね。

中村 限られた何杯かの中で、価格や好みをすり合わせたいし。特に最初の1杯は難しい。ウイスキーは価格帯が広いので『おすすめを』って言われて価格が高過ぎてもなんだし、こんなのしか出さないのかって思われても困るし。そこ 普段飲まれているお店の情報が参考になります。

堀上 そうそう好きなお店の情報があると助かるし手っ取り早い。

上野 バーにはそういう意味でのネットワークは本当に必要ですね。

―― 今回はウイスキーを飲むのにオススメのバーを2軒ずつ紹介していただきました。数珠つなぎに繋がったこのバーのラインアップ(下図参照)を見てどう思われますか?

中村 ここに載っているバーで知らないお店はないですね。どこも業界では有名なお店ばかりです。

堀上 お2人が銀座界隈なので銀座方面に偏るかなと思って、僕はあえて東京の西の方からオススメしました。紹介しようか迷ったお店が他の方から紹介されていて面白いですね。

上野 私は古巣のスタア・バー・ギンザの姉妹店を紹介しました。先ほども言いましたが、どこのバーにしても、まず扉を開ける勇気です! 扉さえ開けてもらえれば、後は知識の宝庫みたいなバーテンダーがいるわけですから。『ウイスキーのことを何も知らないので、入門 で何杯か飲ませてください』と言ってもらえれば、どこのお店でも親切に教えてくれますよ。

バーテンダーの つながりで巡るTOKYO WHISKY BAR

横の繋がりが強いバー業界だからこそ、良いバーを知るにはバーテンダーに聞くのが一番! そこで対談の3名から数珠つなぎにオススメのバーを教えていただいたのが、こちらの図。 21名のバーテンダーの繋がりを感じながら巡れば、東京史上最高のバーホッピングができるかもしれません。次の記事からご紹介します。

※こちらの記事は2017年7月20日発行『メトロミニッツ』No.176に掲載された情報です。

更新: 2017年11月14日

この記事が気に入ったら
「シェア」しよう

最後までお読みいただき、ありがとうございます

pagetop