日本の中華料理 # 3

「新中国家庭料理 浅野」の場合
本場×日本
メニューの境界線

私たちが普段食べている中華料理、どこまでが本場中国流で、どこからが日本流なの? ローカルな四川料理から「冷やし中華」的日本の中華まで、幅広い料理を提供している六本木「新中国家庭料理 浅野」のメニューを開き、その境界線を探ります。

美味しさという共通点が 中国料理と日本の中華を繋ぐ

1993年創業、飯倉片町に店を構える「新中国家庭料理 浅野」。料理長の稲富康治さんは、ここ「浅野」で基礎を身につけ、数々の店で経験を積んだ後、再度「浅野」に戻り、店を引き継いだ方。先代の浅野俊昭さんは、日本の中華料理の祖・陳建民さんの直弟子です。日本人の口に合う料理を追求した大師匠・陳さん、その味を継承した師匠・浅野さんの後を受け継ぎつつ、本場と日本の境界線を緩やかに行き来するのが稲富さんのやり方。今では中国でみっちり修業する料理人も珍しくありませんが、稲富さんは「自分は何度も現地に通ったわけではありません。師匠や人から聞いた本場の料理や調理法、調味料を頭にストックし、そこから組み立てて料理を作る。日本流ですね」と話します。「浅野」のメニューの振り幅の広さも、それが理由。「陳さんはよく『料理人は美味しく作るのが仕事。食べた人が笑顔になればそれでいい』と話していたそう。共感する言葉です」。本場と日本を繋ぐ中華料理。そこにあるのは、美味しさという唯一無二の共通点なのです。

本場流

左上:よだれ鶏 1,490円四川ではどんな店にもあるというおなじみの料理で、黒酢とラー油の使用が基本。 ただし本場では鶏がラー油に浸るほど油が多く、鶏にウコンを塗り込んだり、にんじんの漬物が添えられる店もある。
右上:春雨の激辛炒め 1,598円 牛挽肉を山椒、唐辛子と炒め、春雨に絡めた四川らしい激辛料理。現地での呼び名は「螞蟻上樹(マーイーシャンシュー)」。 箸で持ち上げると、細かい挽肉が木に登る蟻の群れのように見えるため。
左下:師直伝麻婆豆腐 1,728円 陳さん→浅野さん→稲富さんと受け継がれてきた店の看板料理。葉にんにくが入るなど基本は現地流だが、多少辛さは控えめ。日本ではよく醤油と味噌が使われるが、本場ではラー油と山椒が決め手に。
右下:自家製水餃子辛口ごまだれ 1,296円中国で餃子と言えば、焼きではなく水餃子が主流。ごま、ラー油、にんにくベースのタレは、四川でもポピュラーだが、タレを餃子の下に敷くのは「浅野」流。日本的な「柚子ポン酢」907円も用意。

日本流

左上:牛肉とピーマンの 細切り炒め 2,700円 青椒肉絲(チンジャオロース)として知られるが、中国では牛肉ではなく豚肉、ピーマ ンではなく青唐辛子を使用。稲富さん曰く 「陳さんが、日本人好みの食材の組み合わせを考えて作ったのでしょう」。
右上:ふわふわ卵のかに玉 甘酢あんかけ 1,728円 膨大な数の卵料理がある中国。ふわりと仕上げるかに玉の元祖は広東料理の「芙 蓉蟹(フーヨーハイ)」とも考えられるが、 ケチャップ入りの甘酢は日本生まれ。稲富さん的に「中国と日本が半々位の1品」。
左下:むき海老のチリソース 2,678円 ケチャップで甘みを付けたタレを絡め、見 栄え良く仕上げたこの料理も、陳さんの考案。本場では、ショウガ、にんにく、豆板醤、醤油などで煮切る汁なしタイプの「干 焼(ガンシャオ)」が一般的。
右下:師直伝 担担麺 1,296円 本場四川では、汁なしに色々な薬味を加えて食べるのが普通。汁ありにしたのもごまを入れたのも、陳さんが最初と言われる。手作りの醤油ダレと甜醤油で手間暇 かけて仕上げた人気メニュー。

Text:唐澤理恵
Photo:柳大輔
※こちらの記事は2016年6月20日発行『メトロミニッツ』No.164に掲載された情報です。

 

更新: 2017年6月20日

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