TOKYO FOOD JOURNAL 2016 # 6

REPORTAGE
いよいよ東京でも根付き始めた
レストランからの提案料理とお酒の“ペアリング”

今やすっかり広く浸透した“マリアージュ”という言葉は、料理とワインのおいしい組み合わせのことですが、最近、レストランの中に“ペアリング”をうたう店が増えています。料理のコースに合わせてワインもコース仕立てで楽しむスタイルを指すようです。

銀座 鮨・シャンパン
銀座 815

写真左 「鮨7貫」(写真はトロ)/写真右 アミューズの「野菜ブイヨンのフラン サワークリームとキャビア添え」

写真左 刺身の「本日のお造り」(金目鯛)/写真右 前菜として「パテドカンパーニュと沖縄産パッションフルーツバターのサンドイッチ。

写真左 「黒毛和牛のタタキ野菜のサラダ仕立てイタリア産グレートリュフ添え」の2種類。/写真右 デザートは「オリーブオイルのジェラートサルディーニャ産エキストラバージンオイル風味」

「鮨 いわ」と「ボランジェ」のコラボレーションプロジェクト

高級飲食店がひしめく銀座6丁目の一角。12月1日にグランドオープンしたばかりの「銀座 815」は、正統派の江戸前鮨と名門シャンパーニュを同時に楽しめるレストランです。
英国王室御用達のシャンパーニュメゾン、「ボランジェ」の正規輸入代理店(株)アルカンと、鮨の名店「銀座 いわ」のコラボレーションによって生まれた本店は、鮨をはじめとした和食の皿、イタリアンやフレンチなど洋食の皿をコースで交互にサーブするユニークなスタイル。そしてそれぞれの皿に合わせて、シャンパーニュがメインのペアリングドリンクのコースが用意されています。
たとえば7皿(料理6皿+デザート1皿)構成の13000円のコースには、計6種類のグラスドリンクをペアリング(8000円)。穏やかな味わいのフランにサワークリームとキャビアを添えたアミューズにはボランジェのスペシャルキュベを合わせ、キャビアとの黄金のマリアージュを楽しませる趣向。前菜の盛り合わせにはフルーティなロゼシャンパーニュを合わせて、パプリカ入りロメスコソースやパッションフルーツとの調和を図ります。そして最後のミネストローネにはなんと、ボランジェが当たり年のみに造るプレステージュシャンパーニュ、ラ・グランダネをセレクト。そのリッチで複雑味にあふれた味わいが、香ばしい玄米入りのミネストローネにぴったりです。こんな希少なシャンパーニュを、グラスでカジュアルに楽しめるのは大きな魅力ですね。
他にも、金目鯛の刺身にはドメーヌ・シャンソン(ブルゴーニュ)のシャブリを合わせるなど、ペアリングにはスティルワインや日本酒も組み込まれ、緩急ある流れを作っています。
コースのメインとなる鮨は、小肌や穴子など江戸前らしい丁寧な仕事が施されたネタを、赤酢の酢飯がきっちりと支える小ぶりな7貫。存在感たっぷりながら、コースの中で主張しすぎることのない軽やかさが印象的です。今後、コース料理の和洋の比率はフレキシブルに変化するそうで、ドリンク含め様々な展開が期待できそうです。

「ぎんざ はちいちご」Tel 03・3573・1815 東京都中央区銀座6・3・12 数寄屋ビル1F 17:30~ 23:00(22:00LO) 日定休(12月30日~1月4日休)

西麻布 イタリアン
s`accapau

「サッカパウ」シェフの田淵拓さん(左)とシェフ ・ソムリエの梁世柱さん(右)。世界を知る2人の強力タッグ Tel 03・6721・0935 東京都港区西麻布1・12・4 nishiazabu1124 ビルB1F 18:00~23:00LO(バータイム~翌2:30) 日定休 (12月30日~1月4日休)

トレンドに終始しないペアリングを目指す

ジャガイモのピュレに牛ハツのロースト、マスタード入り赤ワインソースを重ね、パールオニオンを散らした皿。合わせたのは、土っぽさとミネラル感が特徴のNZ産ピノ・ノワール「バーン・コテージ2013」

シェフの田淵拓さんはイタリアとドイツで15年間、シェフ・ソムリエの梁世柱さんはアメリカで10年間と、それぞれ海外経験の長い2人がともに1つの世界観を作り、ここ東京から発信する「サッカパウ」。2016年の6月にオープンした、クリエイティブ・イタリアンレストランです。
西麻布の交差点からほど近く、目立たない階段を下り、隠れ家のようなエントランスドアを開けると開放的な空間が広がります。ニューヨークの最新店舗設計を参考にしたという店内は、スタイリッシュでインダストリアルなインテリアが印象的。90㎝ と奥行きをゆったり取ったカウンターの前には盛り付け用のステーションテーブルが設置され、キッチンの様子を見ながら食事ができるという話題の「劇場型」スタイルになっています。
月により7〜9皿で構成されるテイスティングメニューは8000円の設定で、各皿にそれぞれドリンクを合わせるペアリングコースは6000円。このペアリングシステムを導入することは、レストランの構想初期段階からすでに決まっていたのだとか。イタリア料理をベースにしながらも、様々な素材やテクニックをボーダーレスに取り入れた田淵さんのモダンな料理に合わせるのは、世界中のワインはもちろん日本酒、ビール、カクテル、リキュールなど多種多様です。

一過性のトレンドに終わらないよう本物を伝えたい

ペアリングを担当する梁さんは言います。
「長く働いたニューヨークでは、ペアリングの文化はかなり前から普及していました。シェフの皿それぞれに合うドリンクを選び、『料理+ドリンク』の完成度を上げて、コースとしての流れを作ることがソムリエの命題です。料理に合うならどんなジャンルでも取り入れますし、赤ワインから始めることも、泡をコースの途中に組みこむこともありますよ」
対して田淵さんも、「料理人側としても、自分の料理を最高の組み合わせのドリンクと楽しんでもらえるなら嬉しいですよね。ペアリングをオーダーするお客さまは、今のところ全体の50%ほど。ワインをはじめ、ドリンクの知識があってもなくても料理との組み合わせを楽しめるので、とても喜ばれていると思います。ペアリングは、これからもますます盛り上がるはず」
ペアリングが注目され、増えてきたからこそクオリティが玉石混交に陥りやすいことも事実。「一過性のトレンドに終わらないよう本物を伝えたい」と言う2人の今後が楽しみです。

Text:佐々木ひろこ
Photo:平尾健太郎
※こちらの記事は2017年12月20日発行『メトロミニッツ』No.170に掲載された情報です。

更新: 2017年12月20日

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