料理と教室#1

料理家の料理と教室

料理家
渡辺有子さんの教室

Photo:白石和弘 Text:森亜紀子

渡辺有子さんが主宰する「FOOD FOR THOUGHT」は、 渡辺さんの美学が息づいたアトリエで行われる、少人数制の料理教室。3年目に入った今春、料理教室から派生したお店もスタート。料理教室で伝えたいこと、教える中で感じていることや変化について伺いました。

料理と教室

今月のテーマは「料理教室」です。料理教室と聞くと、まず思い浮かぶのが技術や作り方を習得するために通う「料理の教室」かもしれませんが、ここでご紹介するのは1回限りの参加でも良い場合がほとんどで、気の向くまま、好きに暮らしに取り入れることができるもの。どんな料理を教えてもらえるのか?の他 に、誰がどこでどんなコンセプトで行っているのか?も気になるところで、「新しい料理を知ること」と「教室で過ごす時間」、どちらも訪れる目的になり得る場です(だから、特集名は「料理と教室」)。時に、ライフスタイルのヒント、食文 化・歴史、子どもに伝えたい大事なことなど、料理のレシピ以外の何かも知るこ とができたりして、好きな教室に行けば行くほど、きっと暮らしはもうひと回り豊かになっていきます。

料理を通して、
豊かな暮らしのヒントがみつかる教室

料理家 渡辺有子さん:素材の味を生かした、シンプルで印象的な料理が人気。丁寧な暮らしぶりでも注目を集める。著書に、『サンドイッチの時間』(マガジンハウス)、『「献立」と「段取り」』(マイナビ)、『すっきり、ていねいに暮らすこと』(PHP研究所)など。年内にエッセイを出版予定。

渡辺有子さんが主宰する「FOOD FOR THOUGHT」は、 渡辺さんの美学が息づいたアトリエで行われる、少人数制の料理教室。3年目に入った今春、料理教室から派生したお店もスタート。料理教室で伝えたいこと、教える中で感じていることや変化について伺いました。

料理家として数多くの料理本を出版されてきた渡辺有子さんが 料理教室をスタートさせたのは 、2015年の4月 。料理本をはじめ 、様々な形で〝食〞にかかわる中で、一方通行ではなく、より多面的なアプローチに興 味を持つようになったと言います。

「料理には、それぞれの勘所というか、おいしくなるポイントがあって。料理教室で は、料理本や雑誌では伝えるのが難しい、そんなレシピの行間のような部分もお伝 えできるのが嬉しいですね。改めて“伝える”ことの難しさと面白さを感じ、以前にも増して、それぞれの料理のポイントをより明確にするようになりました」その場で直接反応が返ってくる、双方向のコミュニケーションがあることも料理教室の醍醐味。「教室のメニューを考える時は、新しい発見も持ち帰ってほしいし、 家での再現性や味の驚きと安心感のバランスなどを毎回、時間をかけて悩みます。 顔や反応が見えるぶん、より慎重になるのかもしれません」

水なすときゅうりにプラムを合わせ、ハーブを加えた夏らしいサラダ。水なすは、包丁で切れ目を入れ、手で丁寧に割くことで断面が増えて味が浸みやすくなる。オリーブオイルとアップルスウィートビネガーと塩で味付けしたら、レモンの皮で香り付け 。

その卓越した審美眼やセンスにも定評があり、料理本にとどまらず、暮らしまわりや モノにまつわるエッセイなどの著書もある渡辺さん。生徒さんからの質問は、料理に加え、教室で使っている器やカトラリー、調理 道具だけでなく、身につけているファッション、果ては掃除方法にまで(!)及ぶことも。

「料理にまつわるものは、使い勝手が良く美しいものを選びます。器は料理を引き立てるものが良いし、調理道具は料理をするための〝道具〞としての機能を果たすことが最優先事項であり、さらに美しくもあってほしい。教室で実際に使っている瞬間を目の当たりにすることで、使いやすさが伝わることもあるようで、カーブの浅さや柄の短さなど、混ぜるのもよそうのも万能に使える匙は質問が多く、お店でも扱うようになりました」
そんな声が多かったことから、料理教室と同名のショップを今春オープンするに至ったそう。教室からも徒歩5分程と近く、お店という開かれた場ができたことで料理教室にハードルを感じる方の入口にもなっています。

教室は、季節の素材をメインに、イタリアンや和食、時にはエスニックなど、その時々でジャンルを変え、5品の料理で構成。生徒さんはリピーターが多く、料理の頻度もレベルも年齢も様々だそう。「参加されたみなさんに、何かしらの気づきや学びを持ち帰ってもらいたいと思っています。

教室では、デモンストレーションがベースですが、実際に手を動かしてわかることや浮かぶ疑問もあると思うので、食材を切ったり、ヘラで混ぜて水分量の変化を感じたり、途中段階で味見をしてもらったり。五感で感じてもらうようにしています。最終的な味の着地点を知ってもらえるのも料理教室ならではだと思うので、味付けは必ず私が行います」。最後は、テーブルセッティングを整えてから試食タイムへ。時には、カトラリーレストに葉っぱを使ったりするしつらえも。 1回の教室の参加者は10名ほど。和やかなムードで生徒さん同士も話が弾み、お茶とデザートの締めくくりまで、充実の2時間半プラスα。

料理教室名でもあり、ショップ名でもある「FOOD FOR THOUGHT」には、〝生きる 糧〞、〝よりよく生きるためのヒント〞という意味があり、この場所が暮らしを豊かにするきっかけになれたら、という想いが込められています。得るものは料理だけにあらず。きっと多くの発見を持ち帰れる時間になるはずです。

教室DATA|FOOD FOR THOUGHT

■開催日: 9月、10月 日にちは未定
(詳細はtumblr.にて告知)
■内容: 秋の食材を使った料理5品を調理、試食する予定
■料金: 10,000円+初回のみ事務手数料2,000円
■定員: 10名

ショップ FOOD FOR THOUGHT

料理教室のエッセンスが感じられる
セレクトショップ
「教室で使っているような器が欲しい」という生徒さんの声と、渡辺さんのこれまでの 集大成がお店という形となり、今年4月にオープン。漆喰のカウンターがメインのシックな空間は、インテリアデザイン事務所「ワンダーウォール」によるもの。渡辺さんが 料理教室やプライベートでも愛用している日本の作家ものやフランスの古い白磁を 中心に、カトラリーやリネン類が置かれている。オリジナルでは、自家製の瓶詰めやリネンのエプロン、こだわり派の渡辺さんが「菓子屋ここのつ」にお願いした、かぼちゃの種に薄荷と砂糖衣をまとわせたMintなども並ぶ。

季節の食材で作る、ピクルスやジャム などの瓶詰めは3本セットで4,450円。 鮮やかな色が美しい。

FOOD FOR THOUGHT

住所:
東京都 渋谷区上原2・33・4
TEL:
☎03・6416・8294   
営業時間:
11:00~19:00 月火定休

※こちらの記事は、
2017年8月20日発行『メトロミニッツ』No.178に掲載された情報です。

更新: 2017年12月30日

この記事が気に入ったら
「シェア」しよう

最後までお読みいただき、ありがとうございます

pagetop