TOKYO FOOD JOURNAL # 2

TOKYO FOOD JOURNAL
REPORTAGE
昔からある空間が
“シェア”と“コミュニケーション”
の概念でアップデート

Text:古澤健太郎(effect)Photo:花村謙太朗

例えば古民家を再生したカフェや、高架下の居酒屋、フードコートなど、以前から街の中にあった空間が、今改めて注目されています。人が集い、食事を囲む時間を共有し、つながりや出会いを生む、そんな新たな役割を担い生まれ変わった3つの空間を探っていきます。

古民家リノベーションの 最新系は長屋スタイル?

築年数の経った古民家をリノベーションしたカフェやレストランは、今では特別珍しくなくなった印象もあります。しかし、まずここでご紹介したいのが、表参道から一本入った裏路地に今年3月オープンの「裏参道ガーデン」(下段に掲載)。個人が所有していた古い一軒家を買い取り、リノベーションした施設です。ここの特徴は、古民家ならではの雰囲気を活かした1つの空間に、和をテーマにしたお店がいくつも並び、共有のテーブルがあったり、他の店のメニューを別の店の席で食べたりと自由に移動ができること。フードコート的、とも言えますが、1つの建物を店や訪れる人がシェアしている様は、昔ながらの長屋のようにも見えます。そこには自然と「店員とお客、お客同士などのコミュニケーションも生まれている」と、同施設管理人の霜鳥さんは言います。

NY仕込みの「フードホール」が次々と東京にもオープン

次に注目したいのが、「フードホール」。日本語に直訳すると「食堂」となるこの空間は、元々はヨーロッパにある食材店、専門性の高い飲食店などが集まった場所の総称。アメリカには元々似たような意味の「フードコート」があり、日本にもショッピングモールなどによく見られますが、カジュアルで安い、というイメージがあるのは日米共通。しかし2010年、ニューヨークに「Eataly(イータリー)」が登場し、「フードホール」はアメリカに一気に広がります。「Eataly」はイタリアの食材店やキッチン用品店、質の高い料理をカウンターから提供してくれるレストランなどの店舗が広大な空間をシェアし、利用者は好きな店から好きなものを頼んで食べることができます。ほとんどが非大量生産・非チェーンの地元に根付いた人気店ばかりで、「フードコート」とは一線を画すスタイルなのです。
そんな今のアメリカの食文化を反映した「フードホール」ですが、今年に入って「EBISU FOOD HALL」、「FOOD & TIME ISETAN」、など都内にも続々とオープンしています。どの施設もNYスタイルをお手本にしながらも、東京のフィルターを通した独自の提案しているのが特徴。中でも4月にオープンした「NEWoMan FOODHALL」は、朝7時から深夜4時まで営業しており、新宿で特別感のある朝食を食べたい人も、始発まで2次会、3次会の場として利用したい人も楽しめる空間になっています。これはヨーロッパやアメリカにも中々無い例だと言います。
このように、フードホールはその街に住む人に合わせて、気軽にクオリティの高い食を楽しめる場として、アメリカはもちろん、東京でもまだまだ進化していきそうな気配を感じさせてくれます。

木のぬくもりを感じる店内には、個性豊かな店舗が隣り合う。店内で購入した商品は、自由に組み合わせることも可能。思い思いのスペースで、お好みのフードをいただける。また、各店舗には全てカウンター席が用意されており、スタッフとの会話を楽しむ人も多い。

食やアートを切り口に 生まれ変わる東京の高架下

写真上「宇治園」の抹茶オーレ650円/写真下 「味甘CLUB」の人気メニュー天使の涙セット1,000円。

高架下、またはガード下とも言われる空間は、昭和的な居酒屋が集まる場所として親しまれたり、駐車場などに利用されることがほとんどでした。しかし都市における高架下は、街の中心地に位置している箇所も多く、立地の良さからその価値が最近見直されてきています。11月に開業した「中目黒高架下」は、駅に直結した約700m に渡る大規模な施設で話題を集め、他にも「下北沢ケージ」「サナギ新宿」などが今年オープン。これらの施設に共通するのが、魅力的な〝食〞を提供してくれること。そして〝アート〞や〝イベント〞がキーコンテンツになっていることがあります。中目黒高架下の「PAVILION」は現代アート作品を店内の至る所に設置した空間演出が大きな魅力の1つ。また、サナギ新宿は次世代のアーティストやクリエイターが自由に表現できるような場づくりを行っています。食事を楽しむ目的で集まった人が、知らなかったアート作品に出会ったり、アーティストとつながるきっかけを生む場所としての役割も、これからの高架下は担っていくのかもしれません。

12月13日ニューオープンの「Riz Labo Kitchen」のRiz Pancake1,100円。豆腐クリーム100円を添えて。 

路地裏に佇む温かな空間で、 人との繋がりや会話を楽しむ

話題のブランドショップや行列店が立ち並ぶ表参道の華やかな大通りを外れ、裏路地に足を踏み入れると民家が多く静かな住宅街が続きます。そんな落ち着いた路地の隅、2016年3月2日にオープンしたのが「裏参道ガーデン」です。昭和22年築の古民家をリノベーションして作られた施設内には、和をテーマにした店がいくつも並び、昔ながらの横丁や長屋のよう。施設内で購入したものであれば、どの店でいただいてもOKというのが特徴で、例えば、甘味処のお団子を、隣の店の抹茶オーレとあわせてみる、なんて楽しみ方も。この「ひとつ屋根の下」感覚を体験できるのも魅力です。
また、七輪を使い自分でみたらし団子を焼いたり、抹茶を点てたり、ビアアーティストからビールの美味しい注ぎ方を習得したりと、各店舗で遊び心がくすぐられる体験型メニューやワークショップイベントも沢山企画、開催されています。
「店内は広いわけではありません。でも、だからこそお客様との距離が近く、スタッフとの間やお客様同士で自然とコミュニケーションが生まれるんです。裏参道ガーデンを通じて、日本文化の素晴らしさや人と人の繋がりを感じてもらいたいですね」。そう語るのは管理人の霜鳥さん。人との繋がりや日本の良さを再発見できるのが、古民家リノベーションの最大の魅力と言えそうです。「裏参道」という名前のとおり、表参道のもつ華やかなイメージとは真逆の店構え。しかし気取っていないからこそ、店内には心地よく温かな空間が広がっているのです。

「うらさんどうガーデン 」路地裏のひっそりとした雰囲気を活かした和の空間が表参道の華やかさと良いコントラストに。茶坊主劇場では日本各地のクラフトビール(800円~)も味わえる 東京都渋谷区神宮前4・15・2 月定休。

※こちらの記事は、
2016年12月20日発行『メトロミニッツ』No.170掲載された情報です。

 

更新: 2017年12月20日

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