いま・ここにある「食」の話 #9

徳島県神山町
Food Hub Project
小さな町の生産と消費をつなぎ 農業の未来を創る食堂

Text 多田真奈美
Photo 得丸成人 

人口5,500人ほどの山あいの町・神山。ここでは、地域の農業を未来に繋げるため、「町で育てた農産物を、町の人が食べる」仕組みがあり、それを担う食堂があります。

神山の農業を食べて支える 食堂「かま屋」

写真は「かま屋」の調理スタッフの様子。スタッフは他県からの移住者が多い

去る7月2日、原川慎一郎さんは食堂「かま屋」(徳島県・神山町)のキッチンに立っていました。ここのランチは、カウンターに並んだ料理をお客さんが自分で皿に取るスタイル。「地元の食材をたっぷり使った料理を楽しんでください」と、原川さんが厨房からお客さんに軽く挨拶した後、いつもより少しだけ豪華なビュッフェランチが振る舞われました。今年3月にオープンしたこの食堂を運営するのは(株)フードハブ・プロジェクト。原川さんの友人である真鍋太一さんが支配人を務めます。

かま屋の一番の目的は、「神山の農業を食べて支える」こと。米や野菜はできるだけ地元産を使用し、最近は6~7割を地域の産物でまかなっています。

神山の農場従事者の平均年齢は71歳と高く、耕作放棄地が年々増加しています。フードハブ・プロジェクトは、少量生産と少量消費をつなぐシンプルな活動を軸に、山間地域が抱える農業の問題を解決し、地域の食文化と人を育てる試みです。かま屋はそのための基地。地域の人たちと加工品を開発・製造するテストキッチンや、食育活動の教室の役割も果たします。併設する「かまパン&ストア」は、「神山の食卓を楽しく」がテーマ。町外で外食や買物をしなくても、地元の食材を家で調理しておいしく食べられるよう、自家培養発酵種のパン、調味料、加工品を販売しています。

とは言え、山の緑に囲まれたかま屋は、町外の人にも魅力的。昔ながらのお惣菜と気さくな洋食メニューが混在するおかず、大きな竈で艶やかに炊き上げる米、しっかり焼けた、皮から小麦の香りが広がるパン。どれも「農」を近く感じる力強い味で、都会の人こそグッと惹きつけられそうです。かつて東京で働いていた真鍋さんは、「OPENharvest」や「Nomadic Kitchen」のような作る人と食べる人をつなぐ活動を、地方で日常に落とし込んで実践したいと考えるようになりました。出身地の四国を中心に、ふさわしい場所を探した末、神山に。「一緒に未来の農業を創りたい」と賛同してくれる人が、たくさんいたのが決め手です。

「10年で10人の専業農家を増やす」が目標のフードハブ・プロジェクトは、地産地食の日常を、静かに積み重ねています。

「かまパン&ストア」の、ヨモギたっぷりで濃い緑色のアンパン。あんこは近所の和菓子屋さんのもの

写真左/野菜のほとんどが地元の農家か自社農園で収穫したもの 写真右/メインは阿波美豚を韓国とうがらしでマリネして焼いたローストポーク。野菜もたっぷり

遠くから原川さんの料理を目当てに訪れた人も、地元の家族連れも楽しそうに過ごしていた店内。内装、テーブルやイス、割り箸などは町内の山の杉の木で製作

Food Hub Project  かま屋/かまパン&ストア

「かま屋」は、朝昼夕・ティータイムと、メニューと形式を変えて営業している。神山町は良質な温泉などもあるため、休日は地域外・県外から観光客の来店も多い。「かまパン&ストア」の、パン、調味料や加工食品などはおみやげとしても人気で、パンは昼過ぎには売り切れることも。原川さんを招くなど、食を楽しみ・考えるワークショップやイベントも頻繁に開催しています。

徳島県名西郡神山町神領字北190-1
月・火定休(祝日の月曜は営業)

かま屋
TEL 050-2024-2211(予約)
営業時間 8:00~10:00、11:00~17:00、18:00~21:30

かまパン&ストア
TEL 088-676-1077
営業時間 9:00~18:00

※こちらの記事は2017年7月20日発行『メトロミニッツ』No.177に掲載された情報です。

更新: 2017年10月14日

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