いま・ここにある「食」の話 #8

自然とつながるお店を作る
RichSoil & Co. 共同代表
原川慎一郎さん

Photo 得丸成人 Text 多田真奈美

原川慎一郎 SHINICHIRO HARAKAWA
1978年、静岡生まれ。RichSoil & CO.共同代表。2012年に独立し、オーナーシェフとして目黒に「BEARD」をオープンさせた(2016年8月閉店)。現在は、「シェ・パニーズ」の総料理長だったジェローム・ワーグさんとともに新店のオープン準備中

今、原川さんが目指している 新しいお店の話

まずは「シェ・パニーズ」について簡単にご紹介すれば、そのレストランがあるのはアメリカ・カリフォルニア州のバークレー。1971年にアリス・ウォーターさんがオープンさせた、「ローカル、シーズナル、オーガニック」というコンセプトの下、いち早く〝地産地消〞を提唱してきたお店です。地元産のオーガニック食材を使用した料理は、その日ごとの食材を見てから何を作るか決めるためメニューはないそう。そして、シンプルかつオーガニックな「カリフォルニア料理」というジャンルを確立させ、今では世界中からお客さんが集まってくる、予約が取れない有名店です。

そんなお店で30年近く働き、総料理長まで務めていたジェローム・ワーグさんが昨年から東京に住み始め、原川慎一郎さんと一緒にRichSoil & CO.を立ち上げました。原川さんも自身の店「BEARD」をクローズし、今、2人で、シェ・パニーズにインスパイアされたお店を東京で始める準備中です。そして、目下、日本全国のオーガニックな生産者をめぐっているところだと言います。でも、日々、全国の生産者から食材を集めるなど、大変ではないでしょうか。

「単純に面積を見れば、カリフォルニア州と日本全国はほぼ同じくらいの大きさです。だから、僕たちは日本全土を1つのエリアという感覚で捉えていて、例えば、九州、北海道へも飛行機で1時間ちょっとで行けますし、そんなに遠くはありません。買い付けに行くのもできなくはないことだと思います。ただ、アメリカに比べると、1軒1軒の農家さんの農業の規模感が全然違うことの方が難しいですね。日本の農家さんは1人で、自分の見られる範囲で作っている人がほとんど。作物の量が限られてしまうので、『トウモロコシを20㎏ください』と言っても『そんなにない』と言われてしまう。もし20㎏をなんとか出してくれたとしても、もう次週の分は出し尽くしてなくなっている状況です。レストランではある程度の量が必要になってきますので、できるだけ多くの生産者さんとつながっていないとなりません。

それでも、東京で店をやる意味はあると感じています。従来のレストランは〝お客さんありき〞ですが、それを〝自然ありき〞にしたいのです。自然とともに生きる農家さんがおいしい野菜を作ってくれて、その野菜を預かった僕らは、今日はこの野菜を生かして何を作ろうか?と考えるような流れが本来あるべき姿だと思うのです。僕たちが東京で挑戦したいのは、都会に暮らす人たちでも、食を通じて、いかに自然へ思いを馳せてもらえる時間を作れるか、ということなんです」

そもそも原川さんが「シェ・パニーズ」やジェロームさんと交流が生まれたのは、約6年前。アメリカで、シェ・パニーズで働くシェフたちが行っている体験型イベント「OPEN」を、料理家の野村友里さんが東京で行なった「OPENharvest」を手伝ったことがきっかけ。以来、現地のシェ・パニーズまで通うようになったそう。「この時、初めてシェ・パニーズに触れ、自分の中の価値観が少し変わりました。ところで、OPENharvestで出会った仲間の中に真鍋くんという人がいて、最近、徳島の神山で新しい活動を始めたばかりですよ。ちょうど今週末に僕も行き、イベントで料理をしてきます」(原川さん)

2017.07.02.SUN
Food Hub Project 【地産地食の学校】
EAT&HINK 案内人:原川慎一郎
<農と食と旅と>
@徳島県・神山町
徳島県・神山町の「フードハブ・プロジェクト」が、学びの案内人として農業や食にまつわるつくり手を招く「地産地食の学校」。この7月2日は「農と食と旅と」をテーマに、昼は原川さんがスペシャルランチを提供、夕方は原川さんを囲み、幅広い活動について話を聞きました。

※こちらの記事は2017年7月20日発行『メトロミニッツ』No.177に掲載された情報です。

更新: 2017年10月14日

この記事が気に入ったら
「シェア」しよう

最後までお読みいただき、ありがとうございます

pagetop