ビストロの現在地 #1

フランスの文化を味わう旅へ
パリのビストロ見聞録

Photo: shinji minegishi
Text: Megumi Komatsu

今、東京に“ビストロ”という店はたくさんありますが、中にはバルやバール、ワインバーなどに近いスタイルの店もあり、ビストロの真の魅力に気づきにくい状況があるかなと思うのです。本場パリでは、伝統的な店から“ビストロノミー”や“ネオビストロ”と呼ばれる現代的な店まで、昨今、多種多様なビストロが並んでいます。ただ、どの店も、ワインとフランスらしい料理とリラックスした空間を備えていること、人々の日常に寄り添った存在であることは共通。時代ごと、人々の価値観が変われば、ビストロも少し進化するような良好な関係値の中、育まれてきたのが「ビストロ」という文化です。しかし、東京にも、そんなフランスの豊かなビストロ文化を伝えながら、東京の日常に馴染みの良い、東京の人々に心地良い空間を独自の表現で作っているビストロがあります。もし、それらの店にフランスの「ビストロ」をきちんと知った上で行けば、もっと深く味わえるはずで。本特集は、まずパリを旅し、ビストロ文化を掘り下げていくところからスタートします。

※写真の店は、最近パリで人気の“ビストロノミー”の1つ「A. NOSTE」

大統領選を目前に控えた2017年4月26日、パリ市庁舎でビストロのシェフ100人を称える表彰式&パーティが行われました。最近パリの若いシェフたちは、独立するとミシュランガイドの星にこだわらず、普段使いできる店を開く傾向。そんな背景から、パリでは今、日常の食文化を支えるビストロにもスポットを当てようという動きが起こっているのです。近年、多様化するビストロは、パリを旅する理由にもなるほどスゴく面白い。そこで、表彰された中から、典型的なスタイルの店、最新のネオ・ビストロ、ちょっとエレガントな日本人シェフの店という三者三様なビストロをめぐってみることにしました。

パリのビストロシェフ100人の表彰式

ビストロはパリのアイコンです。伝統と現代性が共存し、様々な人々や文化を結びつける場所です。パリという街は大きなビストロだと言えましょう」。そんなアンヌ・イダルゴ市長のスピーチから始まった、パリのビストロシェフ100人の表彰式。引き続き、シェフたちへメダルの授与が行われました。

パリの人々にとってビストロはライフスタイルの一部。よって、この表彰式は、ビストロ文化の最大の貢献者であるシェフたちを盛大に表彰し、パリを美食の街として盛り上げようという趣旨のもとで開催されました。フランス料理界の巨匠アラン・デュカス氏をはじめとする審査員チームが彼らを選んだ基準は、「情熱」「他人と分かち合える寛大な精神」「ホスピタリティ」を持ち、「身近な産地の材料を使っていること」。

「『高品質ながらも手頃な料金で入りやすいこと』『アットホームな心地良さがあること』が全店共通の要素ですが、料理や雰囲気、ワインリストは店ごとに多種多様。パリの食文化の豊かさと多様性を代弁しています」(アラン・デュカス氏のスピーチより)。
式の後の立食パーティでは、カスレやパテ・ド・カンパーニュなどの伝統的なビストロ料理がビュッフェ台にずらり。各国のジャーナリストたちも和やかな表情で料理を堪能し、ネオ・ルネサンス様式の壮麗な市庁舎がひとときビストロのような温かな雰囲気に包まれました。

各国のジャーナリストに質問 「あなたの国のビストロ事情、教えてください」

ビストロシェフ100名の表彰式に招待されていた中には、世界20カ国以上のジャーナリストたちの姿も。会場で各国のジャーナリストに「地元のビストロ事情」を訊いてみました。

Italy
ロッコ・モリテルニさん


「イタリアにビストロはあるかって? 「トラットリア」ならあるけどね。

トラットリアとは、フランスのビストロに相当するイタリアの飲食店の業態。カジュアルなフランス料理を出すビストロは、日本には数多くありますが、イタリアにはほぼないようです

Belgium
ジョエル・ロシェットさん

 「ビストロはベルギーにもありますよ。ただ、昔はフランスと違って、ワインではなくビールを飲んでいました。」

ベルギーはフランス北東部と国境を接し文化的共通点も少なくありませんが、お酒に関してはビール文化圏。昔はビストロでもビールを飲むのが普通でしたが、実は最近はワインが好まれる傾向にあるとか

Germany
ミヒャエル・ハンバッカーさん

「フランスのビストロに相当する店と言えば、ドイツの場合、「ガストハウス」でしょうか。」

ガストハウスとはオーソドックスなドイツ料理とビールが楽しめる大衆酒場のこと。ドイツは比較的食には保守的で、人々は外食のトレンドを追うより食物の品質に関心を持つ傾向があるそう

Sweden
イヴォンヌ・グルさん

「スウェーデンにもビストロと名の付く店はたくさんありますが、フランスのビストロとはちょっと違います。」

スウェーデンにもビストロの看板を掲げる店はあるものの、その多くの実態はカフェやシーフードレストラン。フランス料理を出す店がビストロと呼ばれるわけではないようです

ビストロチェアを目撃!

モンマルトルを歩いていたら、新品のビストロチェアが運び込まれるところを目撃。軽くて頑丈な木製の椅子は、パリのビストロには欠かせない定番アイテムなのです

Photo shinji minegishi Text Megumi Komatsu

【取材協力】
フランス観光開発機構 http://jp.france.fr/
パリ観光・会議局 https://ja.parisinfo.com/

※こちらの記事は2017年5月20日発行『メトロミニッツ』No.175に掲載された情報です。

更新: 2017年5月20日

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